先週末に大統領府で行われた文在寅(ムン・ジェイン)大統領と北朝鮮高官級代表団の昼食会で、北側が南北首脳会談を提案すると共に、文大統領を招請した。金正恩委員長の実妹の金与正(キム・ヨジョン)第1副部長が代表団に含まれた時から、北朝鮮最高指導者のメッセージを持って来るという推測は多かったが、いざふたを開けてみると、予想よりはるかに積極的かつスピーディに状況が進んでいる。様々な議論と憂慮があるが、朝鮮半島の緊張を緩和する決定的な契機になり得るという点で、北朝鮮の提案を歓迎する。首脳会談の実現に向けて韓国と北朝鮮、そして米国・中国をはじめとした周辺国の積極的な協力を期待する。
大統領府の発表によると、北側の提案に文大統領は「これで環境を整えて実現させて行こう」と答えたという。“条件付き受諾”と言える。文大統領のいう「環境」とは、国連の対北朝鮮制裁と「鼻血戦略」までを云々する米国の強硬一辺倒の政策の変化を意味するのだろう。南北首脳会談がこのような国際情勢を無視して開かれるのは考えにくい。そのような点で、文大統領の返答は慎重かつ現実的だ。その環境を整えていく努力を南北が共に傾けていくことが、今後の課題であろう。
韓国政府は、五輪を機にようやく迎えた解氷の機会をうまく生かすべき重い責任を背負うことになった。簡単ではないことだ。特に、マイク・ペンス米副大統領が訪韓期間中に見せた行動は失望と共に懸念を抱かせるものだった。北朝鮮が予想外の高官級代表団を送ったのは、機会があれば、米国と対話に乗り出せるというシグナルだったはずだ。しかし、ペンス副大統領は開会式レセプションで、北朝鮮代表団と挨拶も交わさず、5分後に席を立った。外交的非礼であるだけでなく、五輪を祝うために同盟国を訪問した人の行動としては無礼きわまりない。
文大統領が首脳会談に「環境を整える」という条件を付けたのは、誰が見ても米国を考慮した答えだ。韓国政府がこのように米国を配慮しながら北朝鮮と接触しているのに、米国が韓国政府と韓国国民の感情は眼中にないように行動するのは、同盟として取るべき態度ではない。文大統領が事実上、朝米関係の進展を北側に提示したから、今度は米国がその糸口をつかむ努力を見せてほしい。「非核化」は結局、朝米対話と交渉を通じて行わざるを得ないということを、トランプ政権は認めなければならない。
米国、ペンス副大統領の無礼な行動を振り返るべき
北朝鮮も米国との対話に向け、より積極的な態度を示す必要がある。平昌五輪が終われば、韓米合同軍事演習の再開問題が争点に浮上するだろう。その前に「非核化の約束」まではいかなくとも、「追加の核・ミサイル実験の中断」のような前向きな動きを見せてもらいたい。朝米関係の改善なしに、南北関係だけが前進することはあり得ないという現実を、北朝鮮当局は明確に認識すべきだ。
結局、米国と北朝鮮を一歩ずつ譲り合わせることで突破口を開く責任は文在寅政権にある。文大統領がしばしば話したように、今こそ韓国政府が朝鮮半島問題の運転席に座る時だ。平昌五輪で作られた和解の気流を、米朝対話につなげ、近いうちに南北首脳会談を開くことを期待する。それが朝鮮半島で軍事的危機を終息させ、滔々たる平和の道を開くことができる最も望ましい解決策だ。