サムスン電子のイ・ジェヨン副会長の控訴審裁判部(ソウル高裁刑事13部・裁判長チョン・ヒョンシク)が、チェ・スンシル氏の娘チョン・ユラ氏のためにサムスンが購入した20億ウォン(約2億円)の馬は賄賂でないとみなしたことも常識に逆らう判断という批判が高まっている。
サムスンがチョン氏のために巨額のグランプリ級馬を買い、サムスンはまだ該当の馬の所有主として記載さえしていなかった点から見て、賄賂であることが明らかだとの指摘が多い。しかも、裁判所が「サムスン所有」と判断した2億円馬は、サムスンが購買した直後からもっぱらチョン・ユラ氏のみが乗り、国政壟断事態に火が点いてから今までドイツ現地の馬房に放置されている。検察も最近チェ・スンシル氏の賄賂事件を審理中の裁判所に「馬は賄賂でない」とみなした控訴審判断に反論する意見書を出したことが8日確認された。
乗馬界と法曹界では、チョン氏がサムスンから最初に受け取った馬「サルシド」とその後に買った2億円馬「ビタナ」を区別して見るべきだという意見が多い。2015年10月に買ったサルシドは、パスポート(馬の所有主を記載した名札)にサムスン電子が所有主であると書かれており、その年の11月にチェ・スンシル氏はサルシドの所有権が自身に移転されていないとしてサムスンに抗議したという。パク・ウォノ元大韓乗馬協会専務は「イ・ジェヨンがVIP(朴前大統領)に会った時、馬を買ってやると言ったのであって、いつ貸してやると言ったのか」とし、チェ氏がパク・サンジン元サムスン電子社長がドイツに来ることを要求したと検察で述べた。実際、その年の11月15日、パク元社長はパク・ウォノ元専務を通じて「基本的にお望みどおりにして差し上げるということで、決まり次第支援する」という携帯メールを送った。
その結果、翌年チェ氏が受け取った2億円馬のビタナは、サルシドを買った時とは明白な違いが生じる。ビタナとラウシンのパスポートの所有主に関する記載は消えた。何よりもビタナなどの購入代金として支出された200万ユーロ(約2億7千万円)は、サムスンの資産管理台帳に有形資産として登載されていない。
実際、1審裁判所はこうした一連の過程を根拠に、馬匹運送のための車両購買代金のみを無罪と判断し、サルシド、ビタナ、ラウシンの馬匹購買代金など合計72億9千万ウォン(約7億円)を賄賂と判断した。だが控訴審は、1審裁判部が詳細に記録したこの部分をそっくり省略した。2審裁判部は、サルシドとビタナを買う過程で起こったこうした事情には全く言及せず、チェ・スンシル氏とパク・サンジン社長の主張を基に「馬そのものは賄賂でなく、使用利益のみが賄賂に該当する」と判断した。
サルシド、ビタナなどに一人で乗った「使用利益」に対する具体的金額を算定しなかったことも深刻な問題として挙げられる。馬の特殊性を意識的に無視したのではないかとの批判も出ている。ある法曹界関係者は「馬は車やブランドバッグとは異なり、『生きている生物』なので、誰もが使用できるものではない。当時チョン・ユラに最適化された馬を選んだだろうし、チョン氏が使わなければ誰が代わりに乗れるか」と話した。また、今が盛りの馬の「利用時期」も考慮しなければならない。正確な計算を試みるならば、使用利益自体も相当な金額になるはずだ。
2016年7月、チェ・スンシル氏の「国政壟断」報道が出た後、3頭の馬をすべてドイツの仲介業者であるアンドレアスに渡した過程も釈然としない。その年の8月、売買契約書を作成する過程でファン・ソンス元サムスン電子専務とアンドレアスの他にチェ氏のピデック側の人物が同席している。サムスンとアンドレアスの間の売買だったが、契約書の作成にチェ氏側が関与していたわけだ。さらに、アンドレアスは負傷が重いビタナを1億2000万ウォン(約1200万円)の“追加金(チップ)”を加えて買い取った。法曹界関係者は「結局この売買契約は形式的契約に過ぎないという強力なメルクマールだ」と指摘した。