検察が7日、サムスン電子のイ・ジェヨン副会長に執行猶予を言い渡したソウル高裁刑事13部(裁判長チョン・ヒョンシク)の判断について、「法理においても常識的にも、非常に間違った判決であり、必ず是正されるものと考えている」と強く批判した。令状審査や拘束適否審査など、捜査の過程ではなく、本案の判決に対する検察の公開的反発は極めて異例のことだ。
同日、ハン・ドンフン ソウル中央地検3次長検事は、ソウル中央地検の公式立場として、イ副会長の控訴審裁判所の判決を厳しく批判した。ハン次長は、まず裁判所が「アン・ジョンボム(元大統領府政策調整首席)の手帳」の証拠能力を認めなかったことに対する批判から砲門を開いた。彼は「控訴審の判決はキム・ジョン(元文化体育観光部2次官)やチャン・シホ(チェ・スンシル氏の姪)、ムン・ヒョンピョ(元国民年金公団理事長)など、他の「国政壟断」判決ではいずれも証拠能力と証拠価値を認めて判決に重要に反映してきた『アン・ジョンボムの手帳』の証拠能力を、他の裁判所とは異なり、合理的な根拠もなく無視した」と指摘した。彼はさらに、「アン・ジョンボムの手帳にはイ・ジェヨンと朴槿惠(パク・クネ)の面会で(経営権の)承継と関連した依頼内容やチェ・スンシルを通じた乗馬に関する事項が詳しく書かれている。この手帳の正確度は他の事件でも検証された」と強調した。
アン・ジョンボムの手帳は、イ副会長と朴槿恵前大統領の“闇の結託”を立証する重要証拠の一つに挙げられる。検察は今後予定された朴槿恵前大統領やチェ・スンシル氏の判決を控え、今回の裁判所の判断の問題点を明確に明らかにすることで、議論の可能性を事前に遮断しようとしたものと見られる。ハン次長は、特検が公訴維持を担当しているイ副会長の裁判を検察が批判した理由について、「イ副会長事件と検察が公訴を維持しているチェ・スンシル事件などは、コインの表裏のようなもの」だと話した。
検察はイ副会長の賄賂額を36億3000万ウォン(約3億6千万円)に縮小算定するなど、裁判所の“偏った”判断についても強く批判した。ハン次長は「判決文をみると、(イ副会長が)20億ウォン(約2億円)相当の(馬の)ビターナや、7億ウォン(約7千万円)相当のラオシンを(チェ・スンシル氏に)買ってあげたのは考慮に入れなかった」と指摘した。20億ウォンの馬にただで乗った「私用利益」を裁判部が計算しなかった点を指摘したのだ。彼はまた、「裁判部はイ・ジェヨンの(経営権)継承作業がなかったとしながらも、これまでも収監されているムン・ヒョンピョ元国民年金公団理事長、ホン・ワンソン基金運用本部長に対しては、判決文で言及すらしなかった」とし、「イ・ジェヨンに(様々な容疑について)無罪を言い渡すのに障害になるものは、言及そのものを避けた」と皮肉った。
ハン次長はまた、「百歩譲って、控訴審で認められた賄賂供与・横領額36億ウォン(3億6千万円)だけでも絶対に執行猶予が出る事案ではない」としたうえで、「国政壟断事件でチャン・シホ氏(チェ・スンシル氏の姪)には、2年6カ月の実刑が言い渡されており、チャ・ウンテク氏には21億ウォン(約2億1千万円)の横領で3年の実刑が言い渡された。チャン・シホやチャ・ウンテクよりイ・ジェヨン、チャン・チュンギの責任が軽いのか問いたい」と話した。公平性に欠けた控訴審判決の深刻な不当性を浮き彫りにしたのだ。
ハン次長は「今月13日に判決が予定されているチェ・スンシル氏の1審判決は、イ・ジェヨン副会長に賄賂を受け取った容疑に対する判決であり、イ副会長の賄賂供与の犯罪事実がそのまま含まれている」とし、「チェ・スンシル氏の収賄容疑に対し、有罪判決が出れば、イ副会長(控訴審)の判決が明らかに間違ったものであることを示すものだと思う。イ副会長の控訴審の誤った結論を指摘して正す機会であるため、残りの期間に最後まで最善を尽くす」と話した。