北朝鮮が平昌(ピョンチャン)冬季五輪の祝賀公演に乗り出す芸術団の訪韓経路として、「板門店(パンムンジョム)を通じた陸路」を提案し、注目を集めている。約140人の大規模の人員が、板門店を超えること自体が異例のことで、北の“意図”をめぐり様々な分析が示されている。
北側は、15日に開かれた平昌五輪への北側芸術団の派遣に向けた南北実務接触で、芸術団が板門店を通過してソウル~平昌まで陸路で移動する意思を明らかにし、南側に輸送手段など支援を要請した。政府は軍事境界線を管轄している国連軍司令部との協議を経て、陸路訪韓問題を最終確定する方針だ。
南北を行き来するルートは大きく分けて3つだ。2006年1月に開通した京義線(開城公団)と東海線(金剛山観光)の南北出入事務所を通る道と、板門店を直接通過する方法だ。空路や海路ではなく、陸上で南北を行き来するためには、軍事境界線を越えなければならない。したがって、これを管轄する国連軍司令部の許可が必要だ。
大規模な人員が、板門店を通過して南北を行き来した先例が、全くないわけではない。1985年9月、離散家族故郷訪問団と芸術団など、南北からそれぞれ151人が板門店を通じて陸路でそれぞれソウルと平壌(ピョンヤン)を訪問した。チョン・ジュヨン現代グループ名誉会長は1998年6月と10月の2回にわたり、牛1001頭をトラックに載せて板門店を通過して訪朝した。
これまで南北間交流と往来がある際、陸路移動を主張したのは南側だった。軍事境界線を越えて人が行き来すること自体が、南北の緊張緩和を象徴的に表すためだ。一方、北側は、道路事情と交通の利便性などを理由に挙げ、ほとんどの場合、これまで陸路移動に消極的な態度を示してきた。
キム・ヨンチョル仁済大学教授は「北側が、板門店を通じた陸路を提案したのは、平昌五輪への参加動機に関係があるだろう」と分析した。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長が新年の辞で明らかにしたように、平昌五輪を機に、朝鮮半島の危機局面を和らげ、平和的環境を整えていくための象徴的手段として、板門店通過を選んだということだ。ク・ガブ北韓大学院大学教授は「京義線も繋がってはいるものの、開城工団が閉鎖された状況では利用が難しく、(金剛山観光が中断された)東海線も事情は同じ」だとしたうえで、「今のところ、板門店を通じた陸路移動が最も便利な方法かもしれない」と話した。チョ・ソンニョル国家安保戦略研究院首席研究委員は「北朝鮮が京義線南北出入事務所を通過して訪韓すると提案したなら、開城工団の再稼働を圧迫しているように映った可能性もある」と話した。
一方、17日に開かれる南北高官級会談の後続実務会談の代表として、南側からは、チョン・ヘソン統一部次官を首席代表にし、アン・ムンヒョン首相室審議官とキム・ギホン平昌冬季五輪・パラリンピック組織委員会企画事務次長が出席する。北側は、今月9日の閣僚級会談代表団だったチョン・ジョンスの祖国平和統一委員会副委員長(団長)やウォン・ギルウ体育省部長がキム・ガングク(所属未確認)と共に出席すると通知した。南側は南北関係に、北側は平昌五輪に重きを置いている構成である。