在日同胞スパイ捏造事件の被害者の再審裁判で、「拷問しなかった」と証言した元国軍保安司令部(現機務司令部)の捜査官が、偽証罪で起訴された。過去事の再審事件で捜査官の偽証の責任を問い、検察が起訴したのは今回が初めてだ。
ソウル中央地検公安1部(部長イム・ヒョン)は今月13日、在日同胞スパイ捏造事件の被害者、ユン・チョンホンさん(64)の再審で偽証した容疑で、元保安司令部捜査官のK氏(78)を起訴したことが18日、確認された。K氏は2010年12月16日、ソウル中央地裁で開かれた再審裁判に検事側の証人として出席した。K氏は裁判で「証人(K)は被告人に暴行や脅迫などの行為をした事実がありませんね?」、「被告人に虚偽の自白を強要したり、誘導した事実はありませんね?」という検察官の質問に「はい、ありません」と答えた。原告側の弁護士が「被告人の服を脱がせ、鉄製の椅子に座らせて、体を紐で縛ってから棒で殴打しましたよね?」などと質問したが、K氏は「そのような事実はありません」と供述した。K氏の供述にもかかわらず、ユン氏は2011年、最高裁判所で拷問を受けた事実などが認められ、再審で無罪確定判決を受けた。これに先立ち、真実・和解に向けた過去事整理委員会(真実和解委)は、日本で生まれたユン氏が、高麗大学医科大学に留学していた1984年、保安司令部に不法連行され、45日間不法拘禁された状態で過酷な拷問を受けたと認めた。当時、真実和解委は「保安司が1970~80年代、大学キャンパスのデモを防ぐため、その背後として在日同胞留学生を名指しし『在日同胞の母国留学生偽装スパイ根源発掘計画』の一環として具体的な証拠もなく拷問を通じて事件を捏造した」と指摘した。
無罪を言い渡されたが、ユン氏は再審裁判で「拷問しなかった」と証言したK氏が許せなかった。K氏が自分の捜査を主導したため、顔もはっきり憶えていた。しかし、K氏は謝罪はおろか、ユン氏の主張を全く認めなかった。
ユン氏は、最高裁で再審無罪判決を受けた翌年の2012年10月、K氏を偽証・謀害偽証容疑でソウル中央地検に告訴した。検察捜査に進展が見られなかったことを受け、2014年には損害賠償訴訟を起こした。ソウル東部地裁は今月1月「保安司で拷問が行われた当時、K氏が直接加担したり、少なくとも捜査2係の捜査官たちにこのような行為(拷問)をするよう指示した事実が認められる」とし、ユン氏に3000万ウォン(約300万円)を支払うよう命じたが、検察は告訴状を提出してから5年が過ぎてもまともに動かなかった。偽証罪の公訴時効である7年(2017年12月15日)を2日控えた13日、やっとK氏の偽証の容疑だけを認めてK氏を起訴した。チャン・ギョンウク弁護士(法務法人常緑)は「拷問した人は公訴時効のため処罰できなかったが、再審でも謝罪せず、図々しく偽証した加害者を処罰できるようになった」としながらも、「検察が5年間何もしなかったのは職務遺棄と言える」と批判した。