李明博(イ・ミョンバク)元大統領を狙った検察のもう一つの捜査が始まった。市民団体の告発によるもので、捜査が進めば李元大統領に対する調査は避けられないものと予想される。
参与連帯と民主社会のための弁護士会(民弁)は7日、李元大統領が実所有者と疑われている自動車部品メーカーの(株)ダース秘密資金疑惑と関連して、同社の筆頭株主である李元大統領の兄のイ・サンウン代表取締役と「氏名不明の実所有者」をソウル中央地検に告発したと明らかにした。ここで氏名不明の実所有者は事実上、李元大統領を指す。
両団体は告発状でこの二人を特定経済犯罪加重処罰法の横領、犯罪収益隠匿規制および処罰などに関する法律違反、特定犯罪加重処罰法の脱税などの疑いで捜査してほしいと要請した。二人が共謀して2003~2008年、ダースの海外輸入原材料価格を水増しする手口で約120億ウォン(約12億円)の秘密資金を作った後、国税庁の追跡を避けるため、43の借名口座に入れて管理したと主張した。
これらの団体はまた、2007年の大統領選挙を控え李元大統領の実所有疑惑が提起されたいわゆる「BBK事件」の特別検事を務めたチョン・ホヨン弁護士も、特定犯罪加重処罰法の特殊職務遺棄の疑いで告発した。チョン弁護士が特検日当時、広範囲な資金追跡を通じて約120億ウォンに上る(株)ダースの秘密資金を確認したが、これを捜査せず握りつぶしたということだ。実際に検察がチョン弁護士を召喚調査する場合、特別検事が職務と関連して本格的な検察の捜査対象になる初めての事例になる見通しだ。
ソウル中央地検はこの日、事件を刑事1部(部長ホン・スンウク)に配当し、事実上捜査に着手した。検察関係者は「元大統領関連事件であるため、受け付けた直後に刑事1部に配当した」と話した。これに先立ち李元大統領と関連する告発事件を捜査中の先端捜査1部(部長シン・ボンス)ではなく、中央地検全体の首席部署に割り当てたのだ。これに対して検察関係者は「シン・ボンス先端捜査1部長がかつてBBK特別検事(特検)派遣検事だったため、不要な誤解や憶測を排除するため、他の部署に配当した」と説明した。
これで李元大統領を狙った検察捜査は、従来進行中だった国家情報院および国軍サイバー司令部の政治関与事件、海外にあったBBKと関連して140億ウォン(約14億円)を(株)ダースに不法送金した疑惑の告発事件(職権乱用)に続き、計3件になった。今回告発事件の場合、検察が受け付けと同時に捜査に着手したため、「終局決定」を下さなければならず、このためには捜査過程でいかなる形式であれ李元大統領に対する調査が避けられないものとみられる。
だが、検察が捜査のスピードを上げることはないと見られる。検察関係者は「この捜査は来年に先送りされるしかないだろう」とし、「現職から弾劾されて退いた朴槿恵(パク・クネ)前大統領と違い、任期を終えた元大統領であり、かつて盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の事件の反面教師もあるだけに、こうした捜査を追い込むような形で行ってはならない。中立的な立場で着実にしっかりと真実を究明していけば、よかれあしかれ結論が出るだろう」と話した。