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6万人の現場実習生「私はもう一人のイ君です」

登録:2017-11-27 05:32 修正:2017-11-27 06:59
長時間労働で危険にさらされ事故再発の可能性も 
会社「指針を全部守っては仕事にならない」 
学校「社会はそういうもの。それも我慢できないのか」と傍観 
「実効性のある調査のため、労組や市民団体が参加すべき」 
済州で現場実習に出た特性化高校の生徒イ・ミノ君が死亡した翌日の今月20日午後、ソウル光化門広場で特性化高校在学生と卒業生をはじめ、特性化高校生権利連合会のメンバーらが追悼ろうそく集会を開いている=イ・ジョンア記者//ハンギョレ新聞社

 京畿道のある物流会社で現場実習中の特性化高校3年生のH君(17)は、コンベアレール近くで働いている。品物を箱に入れてバーコードを撮った後、積載する「ピッキング」(picking)業務だ。箱を取る時、レールに手が挟まれそうになった危険な瞬間が少なくない。H君は「単純で反復的な業務をしているうちに集中力が落ちてしまうと、ぼうっとして頭が真っ白になる。そんなときに誤って機械に手が吸い込まれるかもしれないと思うと、怖くて堪らない」と話した。

 H君は出勤初日に14時間勤務してから、毎日11時間以上の単純作業を繰り返している。社員が全員帰った後、実習生だけが残って残業する日もある。会社と学校に「延長勤務はしたくない」と伝えたが、「人員の再配置が困難であるため、仕方ない」と言われたという。

 H君は、同じ学年のイ・ミノ君(18)が死亡したニュースを聞いて「いつか自分もそうなるかもしれないという気がした」と語った。ミノ君は、済州道西帰浦市(ソグィポシ)で現場実習をしているうちに、製品積載機プレスに押されて死亡した。H君は「私と似たような環境で働いていたみたいだ。今思うと、いつケガをしてもおかしくない」と話した。

 教育より労働が優先される現場実習は、ミノ君だけの問題ではない。2016年基準で産業体派遣型現場実習に参加する学生は約6万人に達する。専門家らは現場実習が生徒の学習機会ではなく、産業体の労働力確保の手段として利用されていると指摘する。

 特性化高校2年生のL君(17)は今年の夏、京畿道にある工具製造会社で現場実習を受けた。学校では手袋が機械に巻き込まれて手を傷つけることを防止するために、ドリルで穴を空けるときは素手で工具に触るよう教わった。しかし、現場の事情は違った。素手でドリルを握り、材料から飛び散った破片に手を切ることが多かった。手袋をつけることも、取ることもできない状況について、会社側は「(手袋をつけるかどうかは)自分で決めろ。(指針を)全部守っては仕事にならない」と答えた。

 ソウルのある特性化高校で会計を専攻するLさん(18)は、ある販促会社で経理業務を担当すると聞いて、現場実習に出た。しかし、3日間の業務関連教育を受けた後、2カ月の間、毎日10~11時間もUSBを400~500個ずつ包装する作業を繰り返している。Lさんは延長勤労手当てをもらったことがないという。

 学校は、学生たちの労働条件にはほぼ目を瞑っている。市民団体と青少年ユニオンが特性化高校在学生・卒業生202人を対象にアンケート調査を実施した結果、「現場実習中に不当な待遇を受けたにもかかわらず、解決を諦めた理由」(複数回答)として、91人が「学校で受ける不利益を恐れて」を挙げた。

 忠清北道のあるゴルフ場のレストランで、サービス産業現場実習を行っているLさん(18)は、顧客たちの理不尽な行動に耐え切れず、3カ月で実習をやめて学校に戻った。Lさんは実習中止申請書を持って就職担当教師や担任教師、教頭・校長を回らなければならなかった。決裁のハンコを押してもらう度に、「“社会生活”とはそういうものだ。君が我慢できなかっただけだ」と叱られた。「社会不適応者のための復学プログラム」と名づけられたプログラムにも参加させられた。

 政府は今月末から12月まで、全国の現場実習に参加している約3万社に対する実態点検を実施すると明らかにした。イ・サンヒョン特性化高校生権利連合会推進委員長は「被害を訴える人が後を絶たないのに、正確に被害規模がどれほどなのか誰も知らないというのが問題の核心だ。実効性のある実態調査のためには、政府だけでなく、市民団体や労組、産業界も参加するべきだ」と話した。

イ・ジヘ、コ・ハンソル記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/820782.html韓国語原文入力:2017-11-26 23:45
訳H.J

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