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死亡した現場実習生、“長時間労働”機械のように働いた

登録:2017-11-23 19:11 修正:2017-11-24 07:00
現場実習「1日7時間」の制限だが
1日最長14時間まで勤務
休日に9.5時間働いた記録も
「物量満たせなければ夜10時まで働いた」
現場実習に行って勤務中に事故に遭い、19日に亡くなった済州地域の特性化高校3年生、イ・ミノ君の焼香所=ホ・ホジュン記者//ハンギョレ新聞社

 19日、18回目の誕生日を4日後に控えて死亡したイ・ミノ君(18)は、事故当時安全装置のない危険な設備の前で一人で働いていた。現場実習生というよりは過重な業務に苦しむ長時間労働者に近かった。平日には工場の宿所で寝て、一日11~12時間働く日も頻繁だった。 一緒に働いていた正規職員が辞めた後、イ君は10メートル近いラインを一人で走り回って製品がちゃんと包装されているかをチェックしなければならなかった。 機械はしばしば止まったが、機械を直すのもイ君の仕事だった。 “現場実習生”を単に「一人の割安な人力」として扱った特性化高校の現場実習の現場が、イ君を死に追いやったという指摘が出ている。

 イ君は現場実習生と言うよりは長時間労働者に近かった。 イ君が会社側と結んだ「現場実習標準協約書」によれば、現場実習時間は1日7時間以内に制限されている。事業主が現場実習生の同意を得た場合には1日1時間に限り延長することができる。しかし「特性化高校の生徒の権利連合会」が入手したイ君の業務日誌を見れば、9月頃、午前8時30分から11~12時間を超える勤務をした形跡が見られる。10月13日には午前8時30分から午後10時30分まで働き、土曜日だった10月14日には午前8時30分から夕方7時まで働いた記録も残っている。

故イ・ミノ君の携帯電話に残っているカカオトークメッセージには、イ君が会社の関係者に対して機械がしばしば止まることを知らせる内容が見られる。 このメッセージを受取った会社側がどのような措置を取ったかは確認されていない//ハンギョレ新聞社

 一緒に現場実習に出ていたイ君の友人は「工場の物量を満たせなければ夜9時10時まで働いた。初めものすごく大変だった」と話す。

 イ君は会社を辞めた職員に代って機械一台を一人で担当もしたと、遺族と「特性化高校の生徒の権利連合会」は伝える。工場ラインのうち、包装・完成段階部分の担当者がイ君を教育した後会社を辞め、当該業務はイ君に任されたというのだ。 一緒に現場実習に出ていたイ君の友人も「ミノが機械一台を一人で担当した」と言った。

 「特性化高校の生徒の権利連合会」のイ・サンヒョン推進委員長は「ミノ君が肋骨を負傷して救急治療室にいた時も、会社の工場長が「コンプレッサー室の機械を作動させる方法を知ってるか」と尋ねるなど、機械をどう操作するのかをイ君に次々問い合わせていた」として「そのため、完全に治療が終わっていない状態で業務に復帰しなければならなかった」と説明した。

イ・ミノ君が事故に遭った製品積載機のプレス=イ・ミノ君の父親イ・サンヨン氏が提供//ハンギョレ新聞社

 実際9日のイ君の事故現場を捉えた閉回路テレビ(CCTV)を見れば、10メートルにわたる製品積載機のコンベヤーローラーの周辺をあちこち一人で見て回るイ君の姿が見られる。 午後1時49分頃、イ君が機械の誤作動を発見したように、事故地点に急いで走って行く姿も映っている。イ君の父親イ・サンヨン氏(55)は「画面を見れば、プレスがほんとうは下りていなければならないのに上がっている。『作動に問題があるな』と思ってその内部に入ったようだ。機械の問題を確認するために近くに行って見て戻る過程でプレスが下りてしまったものだ」と言った。

 イ君がプレスに圧せられても機械は止まらなかった。「製品積載状態に問題がある」という警告灯が緑から赤に変わっただけだった。事故現場には危険な設備に接近できないようにするための柵も設置されていなかった。また、他の現場実習生と作業者が同じ空間にいたが、イ君は見えない死角地帯で作業をしていた。光州地方雇用労働庁済州勤労改善指導センターの関係者は「該当する自動化設備には人が近付けば機械作動が止まるセンサーあるいは設備への接近を防ぐ柵が設置されていなかった。これは法的義務事項ではないが、作業現場の安全性のために事業者に設置を勧告している」と言った。

イ・ミノ君の9~10月の作業日誌。 チュソク(秋夕)の連休を除いてほとんど毎日、朝8時30分から夜10時30分まで一日13時間ほど働いていた。 赤い線は総超過労働時間=故イ・ミノ君の家族が提供//ハンギョレ新聞社

死亡事故の前、機械点検中に二度の事故
別の実習生、指切断されそうになったことも
実習生だが管理者なしで事故に無防備
人の接近時作動停止のセンサーもなく

 遺族はイ君が普段も「機械が故障した」とよく言っていたと伝えた。 イ君のカカオトークを見れば、10月27日、会社職員に「間紙の供給装置が間紙を空中でそのまま放ってしまって機械がしきりに止まってしまいます」と書き送っている。イ君の父親はイ君から「日に1、2回は機械にエラーが発生する」という話を聞いたことがあると明らかにした。

 こうした実情なので、事故もしばしば起こっていたようだ。9月頃、イ君は高い所に上って機械を点検していて転落するという事故を2回経験している。2回目の時は肋骨部分を負傷して病院の救急治療室に運ばれ、3日間病気休暇を取った。「特性化高校生徒の権利連合会」のイ・サンヒョン推進委員長は「会社から出勤するよう督促され、 完全に治療が終わっていない状態で業務に復帰しなければならなかった」と説明した。

現場実習に行っていた特性化高校3年のイ・ミノ君が死亡した翌日の20日夜、ソウル光化門広場で特性化高校の在校生と卒業生で構成された「特性化高校生徒の権利連合会」の在校生が「故イ・ミノ実習生の死は私たちの現実だ」というプラカードを持っている=イ・ジョンア記者//ハンギョレ新聞社

 大きな事故が発生する前に関連した兆候が発生するという「ハインリッヒの法則」のように、イ君はしばしば危険にさらされた挙句に惨事に遭ったわけだ。イ君の事故現場を調査した民主労総は、イ君の事故を最初に発見した別の現場実習生も最近指を切断されそうになったことがあったと伝えた。

 父親のイ氏は「高校生じゃないですか。実習生じゃないですか。熟練工の職員と一緒に勤務すべきでしょう。それが無理なら2人1組ででも勤務するようにすべきじゃないですか。高校生一人で、一般職員と同じくその危ない所で働かせるのが正しいんですか」と絶叫するように問い返した。「特性化高校生徒の権利連合会」のイ・サンヒョン推進委員長は「機械の故障の多い所に現場実習生を配置し、危険要素があったにも拘らず会社側は神経を使わなかった」と指摘した。これに対し会社は「イ君が停止ボタンを押してない状態で入ってはならない所に入った。もともと製品自動化設備の中には人は入ってはならない」としてイ君の過失であるという態度だ。

 イ君の学校も事故責任から自由でないという指摘が出ている。教育部が発刊した「特性化高校現場実習マニュアル」を見れば、担当教師が現場実習中の会社を直接訪問して生徒を“巡回指導”することになっている。 この学校のキム教頭は「担当教師が9月と10月の2回J社に巡回指導に行ったが、イ君からは『工場が夏暑かった』という不満を聞いただけだった」と説明した。イ君が設備から転落して肋骨を負傷し3日間病暇を取った事実も、学校は把握できていなかった。

 イ君が死亡した後も学校の存在感は非常に薄い。現在遺族は「イ君の過失の有無」を巡って労災と補償問題で会社側と葛藤中にあり、出棺を延期している状態だ。しかしキム教頭は「会社と保護者の間の合意は学校が介入する部分ではない」と述べた。

コ・ハンソル、イ・ジヘ、済州/ホ・ホジュン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)

韓国語原文入力: 2017-11-23 07:55

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/820311.html?_fr=mt1 訳A.K

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