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[ルポ]警察署で24時間寝ずの番6カ月…「太極旗集会」参加者の“純真な思い”

登録:2017-11-20 04:17 修正:2017-11-21 21:54
毎日午前零時、集会届出提出するために  
南大門警察署のロビーで“寝ずの番” 
「拘束も弾劾も阻止できなかったが  
朴槿恵政権の真実を伝える」
太極旗市民革命国民運動本部所属のメンバーが今月16日、ソウル南大門警察署の苦情相談室で「徹夜の当直」をしている。国民運動本部は毎週土曜、大漢門の前で集会を開くためこれまで6カ月の間24時間苦情室に留まり、最も早く集会届出を提出している=シン・ミンジョン記者//ハンギョレ新聞社

 ソウル中区南大門警察署1階の苦情相談室には、数カ月前から保守派団体活動家の足が絶えない。彼らは苦情相談室の片隅の古い椅子を頼りに寝ずの番を務める。主に50代以上の人たちだ。3人ほどが座れる大きさの長椅子に置かれた電気カーペットときちんと畳まれた毛布二枚が、晩秋の寒さを耐え抜く道具だ。

 「私たちは大漢門前(デハンムン)の太極旗集会を準備する者です。警察署が毎日午前零時に集会届出を受け付けるため、当番を決めて午前零時に集会届出書を提出します」。今月9日夜、南大門(ナムデムン)警察署の苦情相談室で時間を過ごしていたイ・ボヒさん(54)が話した。

 朴槿恵(パク・クネ)前大統領を弾劾するためのろうそく集会が1年を迎えたように、朴前大統領を守るために彼らが進めてきたいわゆる「太極旗集会」も、19日で1周年を迎える。昨年11月19日、朴槿恵を愛する会(朴サモ)、自由総連盟など80以上の保守団体がソウル駅前で太極旗を持って「親朴デモ」を行なって以来、このデモは今も規模を変えて続いている。昨年から大漢門の前は“保守の心臓”であり、太極旗集会の空間になってきた。彼らがなぜ1年間以上も集会を続けてきたのか、話を聞いてみた。

 「そこはちょっと座るだけでも背中が冷えてきます。あちらの椅子を持って来て、ここに座ってください」。9日午後8時に南大門警察署の苦情相談室に座っていた記者に、ウォン・ジョンレさん(64)が声をかけてくれた。警察署の外に繋がるガラスドアの前に突っ立っていた記者を自分たちの方へ呼んでくれた。「夕飯は食べましたか?」。ウォンさんは大きなかばんからチョコレートを取り出した。彼女は自分を太極旗市民革命国民運動本部の執行部だと紹介した。

 「朴槿恵大統領は結婚もせず国家と民族のため生きてきた方なのに、残念でたまりません。ユク・ヨンスさん(故朴正煕大統領の夫人)を尊敬するように、私は朴(槿恵)大統領も尊敬します。朴大統領に着せられた濡れ衣を晴らすためなら、私は命も捧げられます」

 朴前大統領が拘束されたとき、彼女はソウル拘置所に行ったという。彼らはソウル拘置所を「ソチョンデ」と呼ぶという。「ソウル拘置所内の大統領府」ということだ。「罪のない大統領を追い出したのだから、朴槿恵大統領の弾劾も認められないし、朴大統領のいるソウル拘置所が大統領府です」。ウォンさんが強調するかのように話した。

 国民運動本部は今年4月に結成され、毎週土曜日午後2時に大漢門で開かれる親朴集会を主導している。正確な集会の名称は「弾劾無効・釈放要求集会」だ。今月12日まで大漢門前で30回の集会を行ってきた。

 夕方8時から翌日の朝9時まで苦情相談室で待機するのはたやすいことではない。警察署のロビーには暖房器具がない。ウォンさんと共に苦情相談室の椅子に座ってから3時間ほど経つと、体に寒気が回り、足が少し震えてきた。

 彼らは「集会およびデモに関する法律」第6条1項の「屋外集会やデモを始める720時間前から48時間前に管轄警察署長に(届出書を)提出しなければならない」という条項に従い、1カ月後に開く集会を事前に届け出ている。1カ月前に集会届けを提出しなければ、他の団体が大漢門前の空間を先取りすることを防げないからだという。これまで6カ月間、太極旗市民革命国民運動本部は大漢門前の集会届出を独占してきた。南大門警察署は毎日午前零時に集会届出を受け付けている。

 この日、ウォンさんはイ・ボヒ国民運動本部代弁人と共に寝ずの番を務めた。イ・ボヒ代弁人(54)は昨年10月までは中小ゲーム会社の代表だったが、今は団体活動に集中するため、代表から退いたという。彼女は「左派の言う分配に同意できず、80年代に大学で先輩が提供する左派傾向の本を見て、彼らの論理の虚構性に気づいた」と自分の哲学を説明した。

 彼らは取材の間、「朴槿恵救出」、「市民革命」という言葉を繰り返した。「マスコミに糊塗された人たちに、朴槿恵政権の真実を知らせ、意識を覚醒することが市民革命」だと説明した。「朴前大統領の拘束も違法な手続きによるものであるため、(釈放ではなく)救出という表現を使う」とも付け加えた。

 説明を続けていたイ代弁人の声が高まった。「文化芸術界のブラックリストが間違ったことですか? 政府政策を施行する立場としては、政府に反対する人々を支援するわけにはいかないでしょう?」。イ代弁人の手には1979年に発刊された「リーダーズ・ダイジェスト」が握られていた。表紙には「仁川上陸の英雄、米国のシーザー、マッカーサー」というタイトルが大きな字で書かれていた。イ代弁人は若い頃に自分が読んだ本をもう一度読み直すのが趣味だという。彼らは先日、南大門警察署の苦情相談室に国民教育憲章の内容を張り付け、警察の制止を受けたこともあった。

 13日朝、南大門警察署の苦情相談室では、国民運動本部で「行進のとき星条旗を持つ係」だったというLさん(50)が場所を守っていた。Lさんは昨年12月初めから親朴集会に参加してきた。「米国が我々が危うくなるたびに手伝ってくれたから、星条旗を持って集会に出ています。今韓国は危ういです」

 彼はさらに、「ペク・ナムギ氏は放水銃に当たって死んだのではなく誰かが殺した」、「文在寅(ムン・ジェイン)は電子開票操作で当選した大統領」など、根拠のない説明を続けた。昨夜10時から南大門警察署の苦情相談室に留まり続けたLさんの目じりの小じわが、彼のつらい一日を代弁しているようだった。16日朝、イ・ボヒ代弁人と警察署で再会した。彼女はいつものように右の胸に太極旗のバッジをつけていた。今月8日に初めて会った時、「外出する時は必ず太極旗のバッジをつけていく」と言った彼女の言葉が思い浮かんだ。「大韓民国の国民が太極旗をつけることを恥じてはならない」と、イ代弁人は説明した。

 保守性向の高齢者たちによる集団社会参加の心理を研究した『爺の誕生』の著者チェ・ヒョンスク氏は、同書で「私たちは自分だけの考えと行動で日常的に歴史に協力し、加担して、関わっている」と書いた。自分たちの考える「市民革命」のために昨年から今月16日までの約4400時間を警察署で過ごした彼らの考えと行動は、歴史にどのように加担することになるだろうか。

 「私たちは朴前大統領の拘束も、弾劾も防げなかったが、長い期間がかかっても『市民革命』という方向性を持って行くつもりです。長くかかるかもしれないが、諦めません」。イ報道官が口を固く結んだ。

4月1日午後、ソウル中区徳寿宮の大漢門前で「大統領弾劾棄却のための国民総決起運動本部」が主催した第4回弾劾無効のための国民抵抗総決起国民大会//ハンギョレ新聞社
シン・ミンジョン記者(お問い合わせjapan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/819694.html韓国語原文入力:2017-11-19 20:54
訳H.J(3066字)

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