「日本が過去に犯した暴力に対して(謝罪する)勇気を出せずにいることは非常に残念なことです。今ここにいらっしゃる方々は(日本に対する)復讐心や憎悪心ではなく、日本が(誤った)歴史を認めて謝罪することを切実に望んでいるという事実を私は知っています」
過去を反省しない日本を繰り返し批判してきたゲルハルト・シュレーダー元ドイツ首相(73)が11日午後3時、日本軍「慰安婦」被害者が集まって暮らす京畿道広州市(クァンジュシ)退村面(テチョンミョン)の「ナムヌの家」を訪問した。外国の元・現職の国家元首級要人がナヌムの家を訪問したことは今回が初めてだ。シュレーダー元首相は1998年10月から2005年11月までドイツの首相を歴任した。
彼はこの日、記者たちに「本当に胸の痛む現場を訪問した。人々がこちらにいる方々を「慰安婦」と呼ぶことは誤りだ。「慰安」とは自発的意志に基づく行為だ。こちらの方は慰安ではなく、戦争の暴力に惨い犠牲になった女性たち」だと話した。彼は特に「戦争による残酷な暴力は復旧できない。日本の戦争暴力の犠牲者であるおばあさんたちがノーベル平和賞候補として推薦されることを積極的に支持し支援する」とも付け加えた。
シュレーダー元首相は、ナヌムの家の入り口に立つ少女像に触れ、すぐ隣の被害者の納骨墓と追悼碑を訪ねて献花し黙祷した。そして「日本軍慰安婦歴史館」を見学した彼は、パク・オクソン(94)、イ・ヨンス(90)、イ・オクソン(91)、ハ・ジョムヨン(96)さんに会い、痛みを共有し慰労した。
彼はその席で「おばあさんたちが経験した一人一人の犠牲と苦痛は、ホロコースト(第2次世界大戦中にナチスドイツが行ったユダヤ人虐殺)と同じだ。戦争で犠牲になった女性に対して、世界が知らなければならない。被害者は過去ではなく未来の歴史を書いている」と強調した。
これに対しイ・ヨンスさんは「遠い所からお越し下さりありがとうございます。死ぬ前に日本の謝罪を受けられるよう助けて下さい」とお願いした。イ・オクソンさんは、自身の手首に着けていた「(日本軍慰安婦被害者)記憶腕輪」を外してシュレーダー元首相の手首にはめもした。
シュレーダー元首相はこの日、ナチスドイツによって犠牲になったユダヤ人少女、アンネ・フランクの写真をおばあさんに贈り、1千万ウォン(約100万円)を女性の人権のために使って欲しいとして寄付した。ナヌムの家は答礼として、日本軍慰安婦被害者だった故キム・スンドクさんが描いた絵『連行』と少女像の模型を贈った。
シュレーダー元首相はナヌムの家芳名録に「このように大変な苦痛にあった方々を思い涙が流れます」と書いた。彼は午後4時頃、ナヌムの家を去る前に記者たちのインタビュー要請を受けたが「苦痛を分かち合う場で立っているだけでも辛い。ここは記者会見に似合わない場所のようだ。気が重くて話を交わすことはできない」として、丁重に了解を求めた。