文在寅(ムン・ジェイン)政権が南北軍事当局会談を開こうと提案した21日午後まで、北朝鮮は公式反応を示さなかった。政府が来月1日に開こうと提案した離散家族再会に向けた南北赤十字会談まで実現されないのではないかという懸念の声が上がっている。ムン・サンギュン国防部報道官は同日、立場表明を通じて、「北側が早期に私たちの提案に応じることを改めて求める」と述べた。
文大統領の「ベルリン構想」」の後続措置として、今月17日に政府が同時提案した軍事当局会談と赤十字会談は、北と南が望んでいるものを共に並べながらも、北朝鮮の望みを優先した形だった。しかし、北朝鮮は、党機関紙の「労働新聞」などを通じて南北関係に関する基本的な水準の論評を出す以外は、何の反応も示さなかった。専門家は、北朝鮮当局が直接的な反応を示さない理由を主に2つに分けて説明している。
第一に、南北関係の改善と関連し、まだ金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長の“決心”がついていないという指摘だ。新たに発足した文在寅政権が李明博(イ・ミョンバク)・朴槿惠(パク・クネ)政権と違うのは分かるが、何がどう異なるのかについて“確信”する段階には至っていないということだ。6・15共同宣言と10・4首脳宣言を通じて培われた南北間の信頼が、9年以上の空白期を経て、跡形もなく消えたからだ。
政府が韓米協力と北朝鮮の非核化を強調するのも、北朝鮮に“疑念”を抱かせているものとみられる。文在寅大統領の意図とは異なり、韓米首脳会談で出たいわゆる「正しい環境」や、「ベルリン構想」で言及した「北朝鮮が挑発を止め、非核化の意志を示してくれれば」などの表現を、北朝鮮と南北対話の前提条件として受け止めている可能性もある。
金正恩委員長体制の特性が影響を及ぼしたという分析もある。2回にわたり首脳会談を経験した金正日(キム・ジョンイル)総書記とは異なり、2011年12月就任以来、金正恩委員長は南北対話の経験が事実上皆無だ。金委員長に南北関係について助言すべき立場の核心参謀たちが“誤った選択”をした場合、責任を取らされるのを恐れて積極的に乗り出せないということだ。これらの事情から、南北対話の再開までは長い“探索戦”が続くものと見られる。
第二に、北朝鮮が南北関係の復元など、いわゆる「民族内部の問題」よりも、軍事・安保など、体制維持にかかわる「根本問題」に集中しているため、南側の対話提案に応じていないという指摘だ。金委員長は、これまで核能力と経済発展を同時に実現するという「核・経済の並進路線」を掲げてきた。すでに5回の核実験を通じて、核弾頭の小型化・軽量化・規格化に成功したと発表しており、今年4日大陸間弾道ミサイル(ICBM)級「火星14」型も成功裏に発射した。対米交渉力を最大限に引き上げた状況だからこそ、北朝鮮が南北関係の復元よりは対米交渉を優先視すると予想されている。
北朝鮮経済が安定化したことも、このような分析に説得力を持たせている。昨年だけで2回も国連安全保障理事会が強力な対北朝鮮制裁決議を通過させたが、北朝鮮の対外貿易規模は前年比4.7%増加したことが確認された。北朝鮮が人道的支援や経済協力など、南北関係の改善によって得られる利益にあまり魅力を感じないかもしれないということだ。
政府は、文大統領が軍事境界線における相互敵対行為の中止時点に挙げた今月27日(休戦協定締結日)まで、もう少し見守るという立場だ。国防部当局者は同日、「基本的に27日までは対話提案が有効である」と話した。統一部当局者も「北朝鮮が韓国の提案に対する修正提案をしてくる可能性もなくはない」と話した。
文大統領の大統領選挙キャンプの一員だった外交・安保専門家は「南北関係が断絶した9年間、北朝鮮も、朝鮮半島周辺情勢も大きく変わった」としたうえで、「私たちの“善意”を強調し、過去のアプローチに固執するのではなく、変化した情勢に合わせて北朝鮮を説得できる“文在寅流の解決策”を模索すべき時期」だと指摘した。