セウォル号の惨事当時、生徒たちの避難を助け船から抜け出せず亡くなった教師を「殉職軍警」として見なすべきだという裁判所の判断が出た。
仁川(インチョン)地裁行政1単独ソ・ビョンジン判事は、セウォル号の犠牲者である安山檀園高校の教師だったイ氏(当時32歳)の妻が仁川報勲支庁長を相手取って起こした国家有功者(殉職軍警)遺族登録拒否処分取消し請求訴訟で、原告勝訴の判決を言い渡したと23日明らかにした。ソ判事は「沈没するセウォル号から自分の命をかえりみず生徒たちを救助したイ氏は、特別な災難状況で軍人、警察・消防公務員が担当する危険な業務を行い死亡した」とし、「殉職軍警に該当するものと見ることができる」と明らかにした。「国家有功者等待遇および支援に関する法律」によると、殉職軍警は大半が顕忠院に安置される一方、殉職公務員は国立墓地法による別途の要件を充足しなければならない。また、殉職軍警の遺族は別途の補償金を受け取るなど、殉職公務員遺族より高い礼遇や支援を受ける。
イ氏は2014年4月16日、全羅南道珍島(チンド)沖でセウォル号が沈没した当時、4階の船室に海水が急激に入り込んで来ると、生徒たちを出入口に避難させ甲板の手すりにしがみついていた生徒10人余りに救命胴衣を配った。彼は自らセウォル号から脱出する機会があったが、再び船室の中に入って生徒たちを救助し、5月5日にセウォル号内4階の生徒用船室で、生徒らと共に死亡した状態で発見された。
イ氏の妻は6月、仁川報勲庁に夫の国家有功者登録を申請した後、翌年2月、自分を殉職軍警の遺族に登録してほしいと建議書も提出した。しかし、仁川報勲庁は教師のイ氏が殉職軍警ではなく殉職公務員にのみ該当するとし、イ氏の妻も殉職公務員遺族としてのみ登録した。
イ氏の妻はこれを不服として2015年10月、中央行政審判委員会に行政審判を請求したが、棄却されると裁判所に行政訴訟を起こした。争点は国家有功者法上殉職した軍人、警察・消防公務員などに主に認める「殉職軍警」に一般公務員の身分である高等学校教師も該当するかどうかであった。
ソ判事は判決文で「特別な災難状況で、軍警などの役割を事実上代わりに行って死亡した一般公務員に殉職軍警の礼遇と恩恵を与えるとしても、公平性に反していない」と判示した。2006~2013年、国家報勲処が軍人や警察・消防公務員でない一般公務員も殉職軍警と認めた事例10件も根拠に挙げた。ヘリを利用した山火事鎮火作業を行って死亡した山林庁の公務員や、ガス漏れ事故現場を目撃して人命救助をする途中に死亡した自治体公務員などが含まれる。