「米軍訓練場反対」の横断幕の波
60の団体が対策委組織し反対に乗り出す
国防部は2年前から推進したが
住民には 1月にようやく知らされ
「“生居鎮川”の自負心をもって暮らしてきたのに、米軍訓練場とはいったい何ですか。THAADの話まで出ている。いくら何でもこれは違うんじゃないか」
昔から「生居鎮川、死居龍仁(生きている間は鎮川(チンチョン)に、死んでは龍仁(ヨンイン)に)」と言われるほどに平野が広くて肥沃な地域、忠清北道の鎮川がざわめいている。30日、鎮川郡はいちめん横断幕の波であった。鎮川のどこに行っても色とりどりの「米軍訓練場反対」の横断幕が目に入ってくる。鎮川の町のすべての街灯には「米軍訓練場決死反対」と書かれた黄色い旗がひるがえる。 町の外郭のどの村にも横断幕がかかっている。 鎮川郡庁の前で会ったある市民は「おおよそ数千枚はあるでしょう。鎮川でこんなにたくさんの横断幕は初めてです」と言った。
鎮川が反対している米軍訓練場は米軍の読図法訓練場だ。読図法というのは、地図に表示された内容を見て目標地点までたどり着く技術である。 山岳訓練場とも言う。
国防部は 2年前から順を追って推進してきたが、鎮川郡は1月、国防部から非公開公文書を渡されて初めて事実を知った。 国防部が2015年に事業を確定し、去年韓米合同で鎮川郡鎮川邑文鳳里(ムンボンリ)、柏谷面(ペッコクミョン)沙松里(サソンリ)一帯 130万平方メートルに及ぶ事業用地を実査した上で韓国農漁村公社を押し立てて用地買入に出たことも、鎮川郡は全く知らなかった。鎮川郡のヨン・ジュフム安全建設課長は「いくら軍事施設だと言っても、通知もなしに事業を推進されて困り果てている。今も事業と関連してはほとんど何も聞いていない」と言った。ヨン課長は「先月鎮川を訪問した国防部関係者などに候補地選定理由や推進過程などを尋ねたが、国防部関係者は確答を避けた。近いうちにまた来て事業説明をすると言ったが、その後何の連絡もないのでもどかしい」と付け加えた。
鎮川地域の里長・統長協議会など 60余りの市民社会団体は「米軍訓練場阻止汎郡民対策委員会」(常任代表ユ・ジェユン)を立ち上げて反対に乗り出した。彼らは4月10日に郡民の3分の1以上(2万名余り)が参加する大規模反対集会まで開こうとしている。対策委は郡民反対署名運動、リレーハンストなどを展開しており、国防部への抗議訪問も推進している。大統領選の候補者に米軍訓練場設置関連政策質疑書を送って候補者の態度を問うことにし、回答によっては落選運動など有権者運動も実施する事にした。国会国防委員会のキム・ジョンデ正義党議員は29日、忠清北道を訪問し「国防部は鎮川米軍訓練場を推進しながら鎮川郡などと一度も協議していないと聞いている。民主的手続き上の正当性を無視したまま郡民に降伏を要求する格好だ。事業を公論化し、住民の同意と環境影響評価など公式手続きを経て推進しなければならない」と指摘した。
訓練場予定地、万雷山の麓
3キロ内に文化遺跡ずらり・シマドジョウが棲息
周辺住民は村の消滅を憂慮
米軍訓練場造成予定地は鎮川の主山である万頼山(マンレサン、海抜611メートル)の裾で、半径3キロメートル内には文化遺跡がずらりと並ぶ。住民等が米軍訓練場を反対する主な理由だ。予定地の南側には統一新羅の一等功臣の金庾信(キム・ユシン)将軍の胎室(史蹟 414号)、 胎靈山城、金庾信の生家などが点々と造成されている。鎮川蓮谷里石碑(宝物 404号) ・統一大宝塔などで知られている宝塔寺も近い。予定地の北1キロメートル余りの所には柏谷川と柏谷貯水池がある。ここは天然記念物 454号ミホチョンゲ(シマドジョウ)の棲息地だ。鎮川郡はこの一帯を文化・観光中心地として育成中だ。これまで公園・休養林造成などに600億ウォン(約60億円)以上を投資し、今後も投資を増やして行こうとしている。
訓練場予定地の目と鼻の先、柏谷面池九(チグ)村には 41世帯 60人余りが住んでいる。住民は米軍訓練場ができれば村が全く消えてしまうのではないかと心配している。この村のイ・ホヨル里長(60) は「多くの文化遺跡と“生居鎮川”の秀でた自然環境で食べて暮らしてきたし、これからもそうして生きていく村に、米軍訓練場を作ってはいけない。地下に眠っておられる金庾信将軍も多分訓練場に反対でしょう。どうか静かに暮らせるように、何もしないでほしい」と言った。
訓練場予定地から900メートル程の所にはカトリック施設である韓国殉教福者修道女会の「無我の家」もある。「汗の殉教者」と呼ばれるチェ・ヤンオプ神父の司牧地で、今はカトリック信者などが日常を離れて静かに祈ったり修練するリトリートの空間である。「無我の家」のある修道女は「ここは韓国カトリック伝播に大きな役割を果したベティ聖地の15の教友村の一つであるトンコルがあった所だ。清浄で安らかな修道女の祈祷の場所が鉄条網で囲まれるようなことを許してはならない」と明らかにした。
地形・規模が星州のTHAAD予定地と類似
レーダー実験まで実施し住民の懸念が増え
国防部側「訓練場に過ぎず …THAADと無関係」
鎮川の住民は米軍訓練場反対を表に掲げているが、内心、慶尚北道星州(ソンジュ)に次いで第2のTHAAD(高高度防衛ミサイル)の配備地域になるのではないかと心配している。国防部などが今は米軍訓練場だと言っているが、いつでもTHAAD候補地に替えることができるというわけだ。住民対策委の委員数人が最近星州のTHAAD配備地域に行って来もした。郡民対策委のイ・ヘジャ委員(女性農民会代表)は「米軍訓練場も許せないが、THAADは一層許せない。事業予定地はかつてゴルフ場建設が推進された所であり、低目な山と丘陵になっている上に訓練場規模(40万坪)もまた星州と非常に似ている。軍事的な知識はないが、だれが見ても合理的な疑いを持つことが可能な状況だ」と説明する。
住民等は周辺にミサイル部隊、レーダーなどが運用されている点にも注目している。郡民対策委のユ・ジェユン共同代表は「去年THAAD配備問題が持ち上がった時、国防部が記者たちを連れて来てレーダー電磁波実験をやった場所が、ほかでもないこの地域だ。非公開だったけれども、我々は生涯この村に住んでいるから記事を見てすぐにここだと分かった。星州に次いで 2~3個のTHAADがさらに必要だと言う中で、国防部が秘密裡に事業を推進し、また一部の土地(7000坪余り)は初めから米軍に譲与する計画だと言うのだから、THAADに対する疑いは深まらざるを得ない」と話す。
予備役大佐のH氏も住民たちの憂慮を裏付けた。彼は「読図法訓練場は道峰山(トボンサン)や智異山(チリサン)等にあるのだから、それを活用すればいいではないか、敢えて鎮川に新たに作る理由がない。山勢・地形もまた、読図法訓練には適当でない。むしろTHAADであれば、周辺部隊との連関性や平沢(ピョンテク)米軍基地との距離などから推して見ると可能性がある」と指摘する。
国防部側は、THAAD配備説はとんでもない話だと頭から否定した。米軍訓練場推進実務担当のパク・チュンヒ国防部教育政策課中佐は「米軍読図法訓練場を推進しているのは確かだが、絶対にTHAAD候補地ではない。何回も住民等に明らかにしたのに、どうしてTHAADの話が出てくるのか分からない。追加の住民説明会をするかどうかはまだ決まっていない。今後どうしていくかについてはまだ決まっておらず、また公式的な回答をする位置にない」と言った。
韓国語原文入力: 2017-03-31 11:43