「息子と死別して6年が過ぎたが、残った私たち家族は時間が止まったまま暮らしています。今でも誰かが息子の話をしたり、通りすがりに似た子を見れば、しばらくぼんやりしてしまいます」
50代後半の父親のJさんは、6年前に息子を失った。軍服務を終えて復学し卒業を控えていた息子は、遺書一枚を残して自ら命を絶った。突然の息子の死に、Jさんは酒に依存して一日一日を持ちこたえてきた。息子に名門大学へ入学するような親の欲を強要したのではないだろうか。タイムマシンに乗って帰りたい日々が頭に浮かんだ。彼は「父として息子を失うのは、歩く時も両足から力が抜けて、何のやる気も目標も持つことができなくなるような残酷な刑罰」だと話した。
Jさんの話は、保健福祉部と中央自殺予防センターが28日に発刊した自殺死別者(自殺で身近な人がこの世を去った人)のエッセイ集「どう暮らしていますか」に掲載された。エッセイ集には、昨年実施した自殺死別者のエッセイ公募展を通じて寄せられた文章のうち29篇が収録された。Jさんのように、先に息子を亡くした両親だけでなく、夫、妻、友達や恋人を失った悲しみと、その悲しみを回復していく過程が赤裸々に込められた。
韓国の自殺率は人口10万人当たり26.5人(2015年基準)で、経済協力開発機構(OECD)加盟国のうち最も高い水準だ。自殺者1人が発生する場合、家族など周辺の人5~10人が影響を受けると福祉部は説明する。これをもとに試算してみると、過去10年間で韓国の自殺死別者は70万人にのぼるということだ。チャ・チョンギョン福祉部精神健康政策課長は「自殺死別者は身近な人を突然失った悲しみだけでなく、罪悪感や憤り、社会的偏見、加重された役割負担などで複合的な困難を負うことになる。一般人に比べうつ病にかかるリスクは7倍、自殺リスクは8.3倍にのぼるという」と話した。福祉部傘下の中央心理剖検センターの調査(2015年)によると、韓国国民の31.8%に家族や親戚、友達、先輩・後輩など身の周りの人の自殺を経験したことがあり、このような経験をした人はそうでない場合より自殺を考えたことのある割合がより高いことが明らかになった。
福祉部と専門家らは、自殺死別者が痛みを克服するのに役立つ自助グループ体(共通の問題を持った人たちが集まり個々人が助けを得るための活動をするグループ)に参加するのがいいと勧める。現在、全国で241の精神健康増進センターが自殺遺族のためのカウンセリングと自助グループを支援している。
「どう暮していますか」は31日から教保文庫などを通じて2500部が無料で配布され、イエス24などオンライン書店で無料電子本(e-book)でも読むことができる。福祉部と中央自殺予防センターは、今回のエッセイ集の発刊を記念し、29日から来月3日まで明洞(ミョンドン)聖堂で本の展示会を開く予定だ。