先月22日夜、ソウル地下鉄1号線のソウル駅2番出口。近くの花壇で一人座り、時間をつぶしてきたあるホームレスが、他のホームレスが残して行ったマッコリの瓶を口に当て、はたいた。 そして数時間後、このホームレスは遺体で発見された。ポケットからはカザフスタンのパスポートと国際電話の受信記録だけが残った携帯電話が発見された。
このホームレスはカザフスタン国籍の高麗人3世ヨム氏(53)であることが確認された。 ソウル南大門(ナムデムン)警察署は19日、「解剖検査の結果、慢性アルコール中毒にともなう肝硬変で亡くなったと見られる」と明らかにした。 警察はカザフスタン領事館を通じてヨム氏の家族を探し回った。半月後の今月7日、ヨム氏の娘(29)が小さな遺骨箱を持って韓国の土を踏んだ。警察の要請を受けたホームレス支援団体ハンサラン共同体とホームレス行動、無縁故者の葬儀を代行する「ナヌムグァナヌム」(分かち合い)が10日に葬儀を手伝った。 強制移住列車に乗せられ中央アジアに暮らしを移した韓国人の子孫は、こうして先祖の地に寂しい別れを告げねばならなかった。
ヨム氏はなぜホームレスになったのか。ヨム氏の娘はナヌムグァナヌム側に「韓国語はほとんど話せない父は、カザフスタンで歴史教師として働いていた」と伝えた。 ヨム氏は2010年に5年間有効のビザを取得し韓国に入国した。 彼が外国人居所登録をした所はソウル・城東(ソンドン)区のあるモーテルだ。 医療機器製造会社で働いた彼は約2年前にカザフスタンに一時帰国し、交通事故に遭った。完治しないまま韓国に戻ったが、後遺症のせいでまともに仕事はできなかったものとみられる。
先月10日、ヨム氏はソウル・大方(テバン)洞で野宿をしていて警察に発見された。 当時ソウル駅の自立回復センターで相談を受けたが、ヨム氏はセンターが提供する医療・被覆支援などを拒否したという。 外国人ホームレス支援団体を紹介しようとしたが、ヨム氏はそれについても「結構です」と言ってセンターを出た。亡くなる5日前にヨム氏に会った社会福祉士が「ご飯は食べたか」と尋ねると、ヨム氏は「ご飯が喉を通らないので、ご飯の代わりにマッコリを飲む」と答えたという。
ソウル市は今年3月、外国人路上生活者に対する概略的実態調査を行った。把握された外国人路上生活者20人のうち、半分は中国の朝鮮族だった。 “白人”のホームレス3人の存在も確認された。 ソウル市はコミュニケーションが可能で容貌が韓国人と似ている場合、内国人ホームレスと一緒に一時保護施設などを利用できるようにした。 そうでない場合には“応急簡易宿泊所”等で寝起きできるよう支援している。当事者が希望する場合は、大使館等を通して出国手続きを支援する方針も立てた。
ホームレス・移住民支援団体は実際の外国人ホームレス数は調査結果よりはるかに多いと見ている。 街頭相談活動により把握できる対象は限定されているためだ。イ・ジョンマン自立回復センター室長は「外国人の場合、コミュニケーションの問題で相談が難しいのが実情だ。その上、把握された外国人ホームレスの90%程度は韓国に仕事をしに来たが身体上の問題で野宿することになったものと見られる」と話した。そのために支援団体は民間次元の助け以外に政府の関心も必要だと指摘する。