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「慰安婦問題は民族の痛み…南北間の連帯が必要」

登録:2017-01-05 02:09 修正:2017-01-05 08:10
2016統一人文学世界フォーラム‐痛みの連帯と共通の歴史
2016年一年間に亡くなった日本軍「慰安婦」被害者追慕祭及び第1263回日本軍「慰安婦」問題の解決に向けた定期水曜集会が昨年12月28日午前、ソウルの駐韓日本大使館前で開かれ、参列者たちが犠牲者に向けて献花している=キム・ボンギュ先任記者//ハンギョレ新聞社

 「2017年には従軍慰安婦問題に対する南北の連帯が必要だ」

 昨年12月17日、京都の立命館大学で行われた「2016統一人文学世界フォーラム‐痛みの連帯と共通の歴史」で、韓中日の学者たちはこのように強調した。昨年3回目を迎えた統一人文学世界フォーラムは、韓国の建国大学統一人文学研究団や日本の立命館大学コリア研究センター、中国の延辺大学民族学研究所が共同主催した。2014年に開かれた第1回の統一人文学世界フォーラムの時から共同主催者として参加してきた“北朝鮮と綿密な関係を持っている海外の大学”である朝鮮大学校(東京所在)は、 2016年に断絶した南北関係の影響で、今回は共同主催者として参加できなかった。代わりに朝鮮大学校は立命館大学の招請で公式行事前のラウンドテーブルに参加した。これによって“間接的な南北学術交流”という統一人文学世界フォーラムの重要な特性の一つが今年も維持された。

6・15宣言後、ハーグで 
南北の被害者ハルモ二たちが共同証言したが
2008年以降、冷え切った南北関係により
南北協力にも大きな進展見られず
朴槿恵政権の12・28合意は
「被害者治癒の精神を疎かにした」と批判
南北越えて被害国と連帯を求める声も

康成銀・朝鮮大学校教授//ハンギョレ新聞社

 「東アジア人の記憶から見た日本軍『慰安婦』問題」をテーマに行われたラウンドテーブルでは、統一人文学世界フォーラムが志向する「疎通・治癒・統合の人文学的問題意識」に基づいて、北東アジアの最も尖鋭な問題の一つである“日本軍従軍慰安婦問題”を見つめなおした。その結論は「深い傷を負った元慰安婦ハルモニ(おばあさん)たちを慰労し、慰安婦問題を解決するためには、東アジア各国の被害者連帯が必要であり、その中でも、韓国と北朝鮮の連帯が重要だ」ということだった。これは2015年末、朴槿恵(パク・クネ)政権と安倍政権の間で行われた「12・28合意」が被害者との連帯を疎かにした合意だったという批判でもある。

 ラウンドテーブルに参加した朝鮮大学校の康成銀教授(朝鮮問題研究センター長)は「ぺ・ボンギさんに対する記憶」という題名の報告を通じて、「南北の断絶が被害者の声を大きく弱体化させてきた」と指摘した。1914年9月忠清南道礼山郡(イェサングン)新礼院里(シンリェウォンリ)で生まれたにぺ・ボンギさんは、第2次世界大戦末の1944年11月から1945年3月頃まで沖縄の小さな島である渡嘉敷島に連行されて慰安婦としての生活を余儀なくされた。終戦後には沖縄に残ることになったぺさんは1975年、自分が慰安婦だったという“隠したかった真実”を明らかにしたが、大きな反響を呼ぶまでには至らなかった。何より「南北分断の政治的対立が初めての慰安婦証言だったぺさんの証言を黙殺」したからだ。康教授は、これについて「当時、朝鮮総連の活動家たちがぺさんを積極的に支援したことが大きな影響を与えた」と指摘した。南北対決意識が強い当時の状況では、「日本の植民地被害を明らかにする重要証言」という点よりも、「総連と関連しているから、無視しよう」という意識が強く働いたということだ。

金哲秀・朝鮮大学校教授//ハンギョレ新聞社

 1970年代にぺ・ボンギさんの痛ましい証言を葬らせた南北の敵対関係は、その後どのように変わったのだろうか。2000年6・15共同宣言以降、南北の慰安婦被害者たちが同年12月4日、オランダ・ハーグで開かれた「日本軍性奴隷制を裁く2000年女性国際戦犯法廷」に共に出廷し、日本の蛮行を一緒に証言したこともあった。しかし、2008年以降、再び南北関係が冷え切ってから、慰安婦問題と関連した南北の協力にも大きな進展は見られなかった。南北が別々に日本と慰安婦問題を協議している状況だ。このように被害者である南北の足並みが揃っていない状況では、加害者である日本が責任を回避する可能性は一段と高まらざるを得ない。

 北朝鮮も慰安婦被害が大きく、慰安婦被害ハルモニが多く存在する。朝鮮大学校の金哲秀教授(朝鮮問題研究センター付属在日朝鮮人関係資料室長)は「(北)朝鮮では1992年5月21日、『日本の朝鮮強制占領被害調査委員会』が発足し、日本軍の性奴隷犯罪事件の調査を始めており」、「その結果、1993年8月『日本が敢行した従軍慰安婦犯罪事件についての中間報告書』を発表した」という。これによって「2009年末現在219人の女性が被害事実を申告し、そのうち46人が公開証言に応じた」。しかし、北朝鮮も慰安婦被害者が高齢で死去したことにより、現在「生存者は10人未満」の状況だ。ところが、金教授は最近、日朝関係が“断絶”した状況で、「朝鮮の被害事例はよく知られず、関連論文も多くない」と指摘した。南北が連帯して活動すれば、韓国がこのような日本の被害事実を伝える“通路”になることで、日本の真の謝罪を導くのにさらに強い力を発揮できるはずだが、南北関係も最悪の状況で、このような努力もほとんど行われていない。

許明哲・中国延辺大学民俗学研究所長//ハンギョレ新聞社

 こうした状況で、朴槿恵政権が安倍政権と個別に「12・28合意」をしたことについて、参加者たちは軽率だったと指摘した。延辺大学民族学研究所の許明哲所長は「慰安婦被害問題は決して韓日間に限られた問題ではない」とし、「韓国は今後、慰安婦被害者の国際連帯決議案などが提出されたら、独りで棄権し続けるということなのか、理解に苦しむ」と話した。慰安婦被害国が南北だけでなく、中国、台湾、インドネシア、フィリピンなど日本が占領した15カ国に達する状況で、“被害者の連帯”にもっと努力せずに合意したのは、被害者の声を自ら殺してしまう大きな失策ということだ。

 立命館大学文学部の庵逧由香教授も「慰安婦問題は国際社会で関心が大きな事案だから、日本の右翼の攻撃も集中している」とし、「被害者が完全に不在な“12・28合意”が次期政権でどうなるか、興味深い」と話した。12・28合意が慰安婦問題の解決で最も重要な「被害者の治癒」精神を疎かにしたのではないかという指摘だ。

 だとしたら、これからどうするのか。「疎通・治癒・統合」という観点で連帯を強化していく必要があるというのが参加者たちの共通の指摘だ。許明哲所長は「慰安婦問題は、個人の痛みであるだけでなく、被害を受けた民族の痛み」として、被害国間の積極的な連帯を提案した。

庵逧由香・立命館大学教授//ハンギョレ新聞社

 そのカギとなるのは、やはり南北の連帯だ。康成銀教授はこれと関連し、慰安婦被害者ハルモニのキム・ボクトンさんが2014年6月3日、東京の朝鮮大学校を訪問して行ったある講演を主要な事例として提示した。当時、キムさんは同年5月31日、東京で開かれた「第12回日本軍『慰安婦』問題'アジア連帯会議」に出席した後、朝鮮大学校で講演した。当時、キムさんは、学生たちに「我々と同様の被害者を出さない、戦争のない世の中を作ってほしい」と訴えた。康教授は、これに対して、ある女子学生が「ハルモニの意思を受け継いで“同志”として戦い、いつか先代の恨みを晴らすことができればと思う」という感想を明らかにするなど、学生たちが「ハルモニを慰めようと思っていたことに、むしろ元気をもらった」ような雰囲気だったと伝えた。

 

 慰安婦被害者と関連した南北連帯は、このように被害者を慰めると共に、日本から真の謝罪を引き出す大きな力になると期待される。

キム・ボグン・ハンギョレ平和研究所長(お問い合わせ japan@hani.co.kr)

韓国語原文入力:2017-01-04 18:10

https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/777362.html 訳H.J

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