日本軍従軍慰安婦問題と関連して大きな議論を呼んでいる『帝国の慰安婦』(朴裕河著、根と葉出版)を「治癒」の観点から見るとすれば、どのような学問的評価を下せるだろうか。
昨年12月17日、京都の立命館大学で開かれた第3回統一人文学世界フォーラムのラウンドテーブル「東アジア人の記憶から見た日本軍『慰安婦』問題」では、慰安婦被害女性たちから「虚偽事実の流布による名誉毀損」の疑いで告訴された『帝国…』の歴史叙述について熱い討論が繰り広げられた。コミュニケーション・治癒・統合の観点から、分断トラウマを扱う統一人文学世界フォーラムの趣旨に合わせ「元慰安婦女性たちに対する治癒の観点」から『帝国…』の学問的問題を掘り下げたものである。
評価は否定的だ。建国大学統一人文学研究団のキム・ミョンヒ教授は『帝国…』を英国の社会学者スタンリー・コーエンが提起した「否定の政治学」という観点から批判した。『帝国…』は慰安婦問題の事件そのものを否定してはいないが、基本的な事実は部分的に認めつつもそこに適用される解釈を異にする「解釈的否定」、さらにこれを正当化・合理化する「含蓄的否定」の形式を取っていると主張する。たとえば『帝国…』で「いたるところで日本軍人と慰安婦の親密な日常を強調し、悪魔的な日本人軍人像は間違っていると指摘」していることなどが代表的な例だ。キム教授はまた「韓国と日本で被害生存者たちを支援した勢力を非難することによって、日本軍『慰安婦』運動が開いた連帯関係を解体」していることを『帝国…』の最も大きな危険として挙げた。性暴力と国家暴力のトラウマに対する最近の研究成果が示すように、「生存者は決して一人で話すことができないため、彼女らの語る過程には必ず支持者(防御者)の助けと同盟・相互連帯が必要だ」。したがって「生存者から支援者を分離させる行為は、究極的に生存者を『言えない』檻の中で再び孤立させること」だとキム教授は指摘した。
キム教授は続けて「『帝国…』が『学問的』に忘れているものがある」とし、「それは被害生存者たちの『苦痛』という自明な出発点」だと指摘した。キム教授はこれに関連し、2000年12月8~12日に東京で開かれた女性国際戦犯法廷で昭和天皇を「犯罪者」と規定したことに対し『帝国…』が「事態を悪化させただけ」と叙述したことを代表的な事例として挙げた。したがって歴史的事件が残した苦痛を歴史的責任と人権の問題として公論化してきた生存者たちの存在を認めるならば、『帝国…』をめぐる最近の論争は「学問の自由」より「学問の責任」に対する真摯な省察を私たちの時代の知識人に提起しているということだ。
続けて、立命館大学の池内靖子名誉教授は『帝国…』が「日本の右翼らの慰安婦否定発言などについては批判しない」など『帝国…』の10の問題点を指摘した。池内教授はまた、被害者と加害者の関係で一番重要なのは「被害者が(傷によって閉ざしいた心の扉を開いて)この世の中と再び共有できるかという問題」だと指摘した。やはり『帝国…』が「被害者の治癒の観点にきちんと立っているか」を問題提起している。