「ああ、チボム、チボム」
2人の姉はとうとう大声で泣いた。手で口を覆い静かにむせび泣いていた姉たちは、末の弟アン・チボムさん(28)が横たわった棺が霊安室から姿を現すと泣き崩れた。アンさんの母親のチョンさん(57)は泣く力すらないかのように夫(62)の腕にすがり、かろうじて持ちこたえた。アンさんの友人6人が、霊安室から霊柩車まで友の棺を移している間、葬儀場は嘆きと嗚咽に満ちた。
「チャイムの勇士」アンさんの告別式が22日午後1時、ソウル瑞草(ソチョ)区ソウル聖母病院の葬儀場で執り行われた。アンさんは9日未明、自分が住んでいたソウル市麻浦(マポ)区西橋(ソギョ)洞のあるワンルームマンションに火事が起こると、先に避難して119に通報した。しかしすぐに炎の中に再び飛び込んで、眠っていた人々を起こし避難させる間に倒れ、20日に息を引き取った。
告別式は家族と親戚を中心にささやかに行われた。しかし、アンさんの仁義ある行動を悼むために告別式直前まで弔問客らの行列が続いた。ソウル市の朴元淳(パク・ウォンスン)市長も告別式に先立ち弔問に訪れ、アンさんを追悼した。生前のアンさんの夢が声優だったことを聞き、声優のベ・ハンソン氏も声優協会のイ・グンウク理事長とともに弔問に訪れた。ベ氏は「私ならば、声優なので喉を心配して煙の中に再び戻ることなどできなかっただろう。『私は28歳のときに何をしただろうか』、そんな気持ちで故人の熱望した職業の先輩でもあり訪ねた」と話した。ファン・ギョアン首相とセヌリ党のイ・ジョンヒョン代表など政官界の要人も前日弔問に訪れた。
政府とセヌリ党は、アンさんを義死者に指定する案を推進することにした。イ・ジョンヒョン代表はこの日午前、国会で開かれた最高委員会議で「政府関係者に義死者指定を提案しており、審査委員会への上程を約束された」と伝えた。義死者は職務外の領域で他人の生命や身体、または財産の緊迫した危機を救済しようとして亡くなった人を言い、保健福祉部傘下の義死傷者審査委員会の審議を経て決定する。
アンさんは普段から障害者施設などでボランティア活動をしてきたという。母親のチョンさんは「テレビを見ていて危ない状況が出てきたとき『ああなったらあなたは生きなさい』と話したところ、チボムはむしろ『助けなきゃ。そんなふうに生きてはだめだ』と言ったことがある」と、息子を回想した。もともと家族と一緒に住んでいたアンさんは、最近声優の試験勉強のために専門学校周辺のワンルームで一人暮らしをし、事故に遭った。故人の葬地は京畿道安城(アンソン)のユートピア追悼館に置かれる。