大宇(デウ)造船海洋から取材の便宜の提供を受け「超豪華外遊」をしたと疑われている朝鮮日報のソン・ヒヨン主筆が29日に辞意を表明したが、朝鮮日報内部は立場表明を極度に自制し、事態の展開を注視する雰囲気になった。メディア団体などは、マスコミの不道徳な逸脱を象徴的に物語るマスコミ史上初の事態だと批判の声を高めた。しかし、今回の事件が大統領府のウ・ビョンウ民政首席の不正疑惑を隠すための陰謀から始まっているのではないかとの疑惑についても警戒心を示した。
朝鮮日報はこの日午後、インターネット版で「ソン主筆は『最近検察による’大宇造船海洋の捜査過程で、自身に関連するさまざまな疑惑が提起されており、朝鮮日報の主筆職を正常に行うことができないと判断し主筆職を辞任する』と表明した」と報道した。ソン主筆は接待疑惑が提起された先週、次長級以上の会議を招集し、「根拠のない話であり、振り回されることなく真剣に記事を書くように」と説明し、後輩たちから「頑張ってください」と拍手を受けた。だが、セヌリ党のキム・ジンテ議員による追加暴露が出されると、これ以上はしのぎ難かったものと見られる。朝鮮日報経営企画室も、26日にはソン主筆の立場を比較的詳しく外部に知らせたのとは異なり、この日はソン主筆の辞意表明と会社側の役職解任の事実のみを短く言及するにとどまった。
これまでメディア団体などでは、取材コストや食事代を政府や企業が提供する不適切な取材慣行に対する批判が強かった。このような不適切な取材慣行が、市民のためのニュースよりも政府や企業など費用を提供する取材源側に立ったニュースの生産につながる悪循環を見せてきた。民主メディア市民連合のキム・オンギョン事務局長は「映画のような事が実際に起こった。権力と不適切な関係を結び接待を受けて記事にし、力を見せつけるのは主筆だけの問題ではなく、報道機関全体の不道徳性を示すもの」と批判した。
権力を監視し牽制すべきマスコミが、もう一つの権力となって国民からの信頼を失うことになれば、マスコミはもはやジャーナリズムの役割を果たすことは難しいという指摘が出ている。仁済大学のキム・チャンリョン教授は「朝鮮日報は権力と通じて政府寄りの論調を示してきた。そのために報道機関ではなくもう一つの権力集団になった。想像を超える金額の接待を受けたことに対して、メディアの倫理以前の問題だ。単なる論説主筆の辞意だけでなく、報道機関としてのお詫びと対策を出すべき」と主張した。
親朴槿惠(パククネ)派のキム・ジンテ議員が暴露したことについて、ウ・ビョンウ民政首席の不正疑惑を隠すための政治権力のマスコミ戦略という見方がある。これまで朝鮮日報は権力側に立って記事を書いてきたが、政権任期末に政治権力と衝突したことについて、大統領府のマスコミ飼い慣らしではないかという見解が出ており、キム議員のニュースソースについても正確に調査しなければならないという指摘もある。しかし、この問題は別件として扱うべきだという声も少なくない。韓国外国語大学のキム・チュンシク教授は「慣行の不適切性と事実の正確性は分けて評価しなければならない」とし、「マスコミが朝鮮日報の事態と関連した両成敗論から抜け出し、不適切な取材慣行を自省しなければならない。そうしなければ、民心に頓着しない統治行為への批判というジャーナリズムの実践が評価されなくなる」と指摘した。
一方、今回の事態をきっかけに、9月28日に施行予定のキム・ヨンラン法(不正請託禁止法)にさらに拍車がかかるものとみられる。
ムン・ヒョンスク先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
韓国語原文入力:2016-08-29 21:29