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格差生むエリート校優先の韓国の大学入試に求められる改善策

登録:2016-04-01 09:27 修正:2016-04-01 10:47

ハンギョレが2013~2016学年度のソウル大学合格者を分析した結果、特別目的高校(特目高)や自律型私立高校(自私高)の出身の比重が、2013学年度の42.0%から2016学年度に49.1%へと大幅に増えていたことが分かった。このような特定の階層への偏った現象の背景には、李明博(イミョンバク)政権時期から急激に増え始めた「随時募集」(大学修学能力試験を通した「定時募集」でなく各大学が実施する入学選考)と朴槿恵(パククネ)政権の「学校生活記録簿(学生簿=成績簿)総合選考」があるとの批判が高まっている。「学生簿中心の入試」の本来の導入趣旨である「公教育正常化」を達成するため解決しなければならない課題を、専門家、教師、入試関係者などの意見を集めて整理した。

■私教育の主犯、非教科

非教科を縮小し教科授業を中心に評価すべき

「私教育1番地」と呼ばれるソウル江南区大峙洞の塾街。中間層は稼ぎの相当額を教育費に使う。子供が中間層であり続けることを望むためだ=ユン・ウンシク記者//ハンギョレ新聞社

 学生簿総合選考(学総)の主要な2要素は、教科活動と小論文作成(R&E)・奉仕活動・サークル活動などの非教科活動だ。専門家の多くは、非教科活動の教育的必要性は認めながら、学校の現場で現在行われている非教科活動は、親の社会経済的条件や出身学校、私教育などで左右される危険があり、生徒と父兄の入試負担を高める“主犯”と目されているため、入試での比重を縮小するなどの改善が必要だと提案した。

 「私教育の心配のない世の中・政策代案研究所」のアン・サンジン副所長は、「学総によって発生している父兄の苦痛はあまりにも深刻だ」、「学総への疲労感が高まっている今こそ改善のための転換点にすべき」と語る。韓国開発研究院(KDI)に所属していた頃から入試制度と階層格差の問題を研究してきたキム・ヒサム光州科学技術院教授(基礎教育学部)は、「教科だけで測定困難な知識を非教科に反映するのは教育的に望ましい」という考えを示した上で、「親のネットワークや経済的費用が要求される可能性がある非教科活動を入試に反映させると、階層の固定化を煽ることになりかねない」、「非教科活動は学校の授業と連携させ、水平評価や放課後教室を中心にさせるのが望ましい」と指摘した。

 ソウル大学でも最近、学総の非教科の比重を縮小する方向を明らかにしている。ソウル大学入学本部が2月に発行した報告書「学生簿情報の再構造化」は、学総に向けた提言の一つとして「学内での受賞実績と創意的な体験活動の比重縮小」を提示した。創意的な体験活動は、サークル、奉仕、リーダーシップ、進路活動などを記録する「非教科スペック」と呼ばれる領域だ。ソウル大学入学本部関係者は「学校の現場は忙しく、あれこれやっている余裕はない。いくら優れた制度であっても指図するやり方は高校の教育現場でうまくいかない」と話した。

 専門家は、非教科活動を縮小し、学生簿記録の方向も教科授業を中心に転換すべきと指摘する。京畿道教育庁のキム・ソンチョン政策企画官室奨学士は「高校の授業をチームプロジェクトで運営し、討論で質問する能力や協業する能力などを教師が評価して学生簿に記録すれば、親や私教育が関与する余地がなくなるだろう」と指摘した。アン副所長も「現在の学生簿の教科項目は、点数や細部の能力・特技を書くだけだ。教科の成績を教師が解説できる余地を与えなければならない」と話した。

 ソウル大学入学本部関係者は「非教科スペックの場合、特別目的高校の生徒たちは塾に通って準備できるが、一般高校の大半は、最上位圏の生徒1人か2人に集中させるくらいで、きちんとした準備をしてあげられない」、「それでも授業はどの学校でもする。授業を通じて1位から最下位まできちんと情報が記録されるなら、大学としても、最下位の生徒を選ぶことだってできる」と話した。 そして「1位から最下位まで均等に学校の教育の機会が進むようにする方法の一つが、大学が高校の授業を重要視すること」と話した。

■高校序列化の弊害生む自立型私立高校

高校の教育格差拡大…非平準化も障害

4日、大邱で開かれた入試会社の特目高と自私高の入試説明会に出席した保護者がスクリーンに示された入試情報を携帯電話のカメラで撮っている=大邱/ジン・ミョンソン記者//ハンギョレ新聞社

 専門家たちは、学総の施行において、一般高校が教育課程を多様化することより、少数の最上位圏の生徒にスペックを集中させ、入試実績にこだわる退行的な姿勢を見せているのは、自律型私立高校や非平準化高校のような「高校序列化体制」のためと診断した。

 ソン・ヨルグァン慶熙大教授(教育学)は「外国語高校に通うと費用がかかることになるが、入学の時点でお金がないから差別するわけではない」とし「一方、授業料が一般高校の3倍に設定された自私高は、経済的に恵まれない生徒の機会を一切遮断しているのが問題」と指摘した。

 経済的に同質の生徒を集める教育環境自体が、将来の力量を育てるのに相応しくないモデルだとする批判もある。経済協力開発機構(OECD)は、将来の中心的な力量として「様々な道具を相互に活用する能力」「自律的な行動能力」とともに「社会的に異質な集団での相互作用能力」を挙げている。ソン教授は「自私高ができてから、親の経済的地位や生徒が通う高校の種類が統計的に一致する傾向性が現れている」、「社会統合、社会的連帯に向けた市民教育が難しくなりかねない」と指摘した。

 2009年に李明博政権が自私高の導入を強行した当時、自私高選定を希望する全国の学校を調査し、今も自私高の運営評価のため毎年全国の自私高を訪問しているキム・ギョングン高麗大教授(教育学)は、「2009年の調査当時、新しい教育的な試みなど自私高になるべき理由があった学校は3~4校に過ぎず、大多数は入試名門校になるのが目的だった」と話す。キム教授はさらに、「自私高の教師ですら、自私高が子供たちの教育面であまり効果がない誤った制度といった話をしているのが実情」とし、「今後、最も稀で貴重な価値となるのは、人格と共感能力になるのだろうが、そうした面から自私高は特別な強みを持たず、ある時期になれば驚くほど速いスピードで没落する」と指摘した。

 自私高よりさらにはっきりした序列化構造を持つ非平準化体制が、一部地域で依然として維持されている点も、学総の定着を阻止する足かせになると指摘された。全国232の市郡区のうち、非平準化地域に残っているのが135カ所にもなる。市道のうち、非平準化を採択している市郡区が1カ所もないのは、ソウル、大田、光州だけだ。

 京畿道教育研究院のペク・ビョンブ研究委員は「高校の体制が序列化される中で一般高が生存するためには、勉強ができる生徒にスペックを集中させる傾向が起きてくる可能性が高い」、「しかも内申成績が優秀な生徒は、社会経済的環境が相対的に良好なため、結局、随時試験を拡大したにもかかわらず教育格差が維持されたり、拡大される側面がある」と話した。ペク研究委員は「自私高や非平準化問題が解消されていない状態で、一般高校でのスペック集中を批判するのは、傾いた運動場で試合するのが不利であるのを知らぬふりする不当な要求」と話した。

名門大学のソウル大(左から)、延世大、高麗大のロゴ//ハンギョレ新聞社

■一流大学に集まる高所得層

疎外階層の入学拡大のため階層割当制の導入を

 学生簿の総合選考を中心にする現在の随時募集に対する否定的な社会的認識を解消させ、大学教育が実際に階層格差の緩和に寄与するためには、大学入試で疎外階層に入学機会を拡大する「階層割当制」の導入を検討しなければならないとの指摘もある。

 光州科学技術院のキム・ヒサム教授(基礎教育学)は、随時募集には二つの否定的な認識があると指摘する。特目高の生徒を青田売りするために随時募集の割合を増やすという認識、そして複雑な選考により情報を十分に備えられなかった生徒と保護者が不利になるという認識だ。キム教授は「優れた潜在力を持つ生徒が、環境のため学生簿を体系的に管理できなかったり、私教育に対応できずに大学入学試験で失敗するのは、国家や社会的に大きな損失」とし、「私教育などで勉強を叩きこまれた生徒を受け入れるより、不利な環境にいても潜在力を持つ生徒を見つけ出すのが社会の発展に寄与する道という認識を大学は持つべきだ」と強調した。

 入試制度の改善では、高所得層への偏った現象は防げないという点で、一定比率以上の教育を不利な環境にある階層に割り当てる「階層割当制」を導入すべきだという意見もある。高等教育法施行令は「高等教育を受ける機会を均等に提供するため、所得・地域などの違いを考慮」し、募集定員の11%まで島嶼・僻地の生徒、基礎生活受給権者や次上位階層(最低生活費を少し上回る所得の潜在的貧困層)などを選抜できるよう規定している。しかし、2016学年度基準で、ソウル大学(5.2%)、高麗(コリョ)大学(7.2%)、延世(ヨンセ)大学(5.9%)などほとんどの大学で11%を満たしていない。

 ソン・ヨルグァン慶熙大教授(教育学)は「米国の州立大学の中には、親が高卒以下の生徒の家庭で最初に大学に進学した場合、選考で有利に評価する場合もある」、「現在のソウル大学の地域均衡選抜選考は、結局、全国で最も優秀な生徒を選ぶ選考に転じているが、米国ではどの高校からも、その学校で一番成績が良い生徒を無条件に合格させる州立大学もある」と話した。

 大学の入試結果を階層別にもう少し細分化し、透明に公開することが必要だという意見も提示された。2013年に「大学入試選考簡素化案」を研究したカン・テジュン中央大教授(教育学)は「米国の大学が入試結果に黒人生徒の比率などを公開するように、大学別に不利な環境にある生徒の比率が何%程度になるのか、その比率はどう変わっているのか公開するよう要求することはできる」、「これまでは地域別の均衡くらいしかないが、経済的均衡指標を作り、義務公開する案を検討しなければならない」と話した。

ジン・ミョンソン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-03-31 23:28

https://www.hani.co.kr/arti/society/schooling/737833.html 訳Y.B

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