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[コラム]日本の検定教科書から見た韓国の国定教科書

登録:2016-03-24 23:45 修正:2016-03-25 07:21

 5年前の2010年は日本が韓国を強制併合してから100年の節目になる年だった。 日本は民主党政権だった時期でもあり、韓国と日本が協力して平和な東アジアを作り出そうという論議が両国双方で盛んだった。

 その年の三一節に何か意味ある企画をしてみようと考えた末、韓中日の中学校の歴史教科書を比較分析してみることにした。 分析には韓国の教科書運動市民団体「アジア平和と歴史教育連帯」に所属する専門家の助けを得なければならなかったが、担当記者としての欲もあり、各国の教科書を自分の目で読破してみようと決心した。

 分析対象にした教科書は、韓国は教育科学技術部の『国史』(国定)、日本は市場占有率が50%に達する東京書籍の『新しい社会-歴史』、中国は『義務教育課程標準実験教科書』(人民教育出版社)の中から7・8学年用の『中国歴史』と9学年用の『世界歴史』だった。 日本の教科書はこれまで勉強してきた独学の日本語で、中国の教科書は延辺自治州で使われている韓国語教科書を参照した。

 この分析を通じて、3カ国の教科書はすべて相手の歴史について無知、または不親切だという印象を受けた。 それでもあえて順位をつけるならば、東京書籍の教科書が種々物足りないところはあっても、過去の植民支配と侵略についてそれなりに客観的な記述をしている感じを受け、中国の教科書は6・25(朝鮮戦争)など朝鮮半島を巡る近現代史に対する歴史認識が大きく異なっているので、どう評価すべきか難しかった。 韓国の教科書は19~20世紀の東アジア国際秩序再編に決定的影響を与えた日清戦争をほとんど扱っておらず、南京虐殺に対する記述もなかった。 日本の教科書が日本の戦後補償問題を詳しく扱っているのに対し、韓国の教科書にはこれに対する言及がほとんどない点も私としては理解し難かった。 今は改善されていると信じるが、教科書の水準を較べてみれば依然として「日本>韓国≒中国」の順ではないかと思う。

 今月18日、日本の高等学校1~2年用教科書の検定結果が発表されると、韓国では改めて日本を批判する声が強まった。 韓国人に深い傷を与える独島(日本名、竹島)関連記述や、日本軍「慰安婦」制度の強制性を薄めるような日本の教科書の一部の記述に韓国側が反発するのは当然と見る。 しかし、全体的に韓国の教科書の記述が日本の教科書に比べて「自己の客観性」を確保していたのか。 考えてみるべき点が多い。

 朴槿恵(パククネ)政権は昨年末、市民社会の反対を押し切って歴史教科書の国定化を押し通した。 安倍政権も朴大統領同様、これだけは教科書で決して容認できないという内容があっただろう。 しかし、基本的に検定制を維持し日本政府が提示した執筆基準を満足させさえすれば、出版社がそれなりの自律性を発揮する余地がある。 そこで昨年、学び舎という出版社は中学校教科書に慰安婦記述を復活させ、実教出版は『日本史A』で何と6カ所にわたり慰安婦関連記述を入れることに成功した。

 「日本は戦時中の慰安婦問題の糾明と被害回復措置について(国際人権機関から是正)勧告を受けている」(清水書院)、「慰安婦問題、歴史教科書問題についてアジアの数々の国家から強い批判がなされた」(実教出版)、「従軍慰安婦問題や南京大虐殺など自国に不利な内容を教科書に入れるなという意見がある。(中略)遺憾なことだ」(東京書籍)。

キル・ユンヒョン東京特派員 //ハンギョレ新聞社

 韓国の国定教科書にはこのような自己省察的な記述が含まれているだろうか。韓国教育部は日本に向けた鋭い批判精神で、教科書国定化とは何か、また検定制とは何か、もう一度深く省察しなければならない。

キル・ユンヒョン東京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/736694.html 韓国語原文入力:2016-03-24 19:37
訳J.S(1696字)

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