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[寄稿]「慰安婦合意」という国際的な逸脱行為

登録:2016-01-12 03:52 修正:2016-01-12 05:14

 旧ユーゴ戦犯裁判所で裁判研究官として勤務し、大学で国際刑事法を講義している筆者からすると、最近の韓日政府の慰安婦関連の合意内容には「国際犯罪」という側面を排除する非常に深刻な問題があるが、この部分については、あまり議論が行われていない。

 韓国、ドイツ、日本は「国際刑事裁判所の設立に関するローマ規程」に加盟している。3カ国とも罪刑法定主義を刑法の原則としているため、ローマ規定を履行する国内法を制定しなければならなかった。ドイツ、日本が第二次世界大戦の加害者であることを考慮すると、ローマ規定の履行立法において同じ立場を取り、韓国は2カ国とは異なる態度を示す方が、自然と言えるだろう。しかし、実際には、韓国とドイツは国際犯罪を処罰するための詳細な特別刑法を制定した。一方、日本は、国際刑事裁判所に対する協力法を制定したが、国際犯罪を処罰する履行立法は行わなかった。

 国際刑事裁判所に対する協力法には、国際犯罪の内容が含まれていない。性奴隷、強制労働、国家元首の免責否定、指揮官の責任のように、過去の国際犯罪、特に日本が聖域とする天皇の刑事責任に関する議論が実体法の立法過程を通じて議論されることを恐れたのだ。ローマ規定には、国際犯罪に責任がある者は、国家元首でも免責されないというニュルンベルク原則と、国家元首も部下の犯罪について指揮官としての責任を負うという指揮官の責任が規定されている。日本は、立法においてもドイツと異なり、過去から目をそむけたのだ。

 韓日両国の発表文は、慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを強調した。最終的かつ不可逆という言葉は、今後、両国政府が合意した内容を超える一切の積極的な行動を取らないというものだ。発表文の内容は、主に国の責任に関するものであることを考慮すると、これは国の責任とは別の形の国際法上の責任、すなわち国際犯罪に対する個人の刑事責任を追及しないということだ。

 国際刑事法は国の責任を追及するのではなく、国際犯罪を犯した個人に対する刑事責任を取り上げている。国連人権(小)委員会に提出された報告書も、慰安婦に関連する犯罪者の処罰を提案している。両国政府はこれから、国際刑事法的アプローチに対するこれまでの無関心を超えて、今後これに関する政府としての議論さえしないという約束を正式に交わしたことになる。国家刑罰権の発動は、政府の意思にかかっている。慰安婦問題について、韓国政府が国際刑事法的アプローチを最終的かつ不可逆的に放棄すると、日本は国連や人権機構で韓国政府が慰安婦問題についての国際犯罪だと主張するかもしれないと、怯える必要がなくなる。

イ・ユンジェ亜洲大学法学部教授//ハンギョレ新聞社

 国際犯罪は被害者に深刻な精神的苦痛を残し、これは、被害者の年齢、性、脆弱性に応じてさらに深刻化する。国が正義の執行を拒否し、加害者に免罪符を与えることで、被害者の苦痛はよりひどくなる。約20万人の韓国女性が性奴隷になって言葉では言い表せない苦痛を経験しており、そのうちの少数だけが生きて帰ってきた。刑事処罰が現実的に困難であっても、刑罰権の放棄は政府が単独で交渉できるような事案ではない。

 国家刑罰権は主権の最も代表的な働きである。このような重要な問題に関する国家間の条約は、政府単独で決定できないように憲法で定められている。つまり、韓日交渉は主権の制約に関する条約の締結・批准に対する国会の同意権(憲法第60条1項)の侵害だ。また、国際刑事法は、個々の国が国際犯罪に対する処罰を放棄することを禁じている。国際犯罪に対する刑事責任には時効が適用されず、赦免も不可能だ。したがって、(今回の韓日間の慰安婦合意は)国際法的には国際刑事法違反となる。

イ・ユンジェ亜洲大学法学部教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: 2016-01-11 18:36

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/725655.html 訳H.J

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