本文に移動

[コラム]米同時多発テロとパリのテロ、そして朝鮮半島危機

ドナルド・グレッグ元駐韓米国大使回顧録『歴史の破片』//ハンギョレ新聞社

 「2000年11月にジョージ・ブッシュがアメリカ合衆国の新しい大統領に当選した。北朝鮮に対する彼の理念的で誤って導かれた接近方法は、韓米が共同して北朝鮮との新たな関係のため用意した平壌(ピョンヤン)南北首脳会談という意味深い発展を、悲劇的で不当に中断させてしまった」

 新聞社の後輩が送ってくれたドナルド・グレッグ元駐韓米国大使の回顧録『歴史の破片』を読了した。本の末尾でグレッグ元大使が金大中(キム・デジュン)大統領の2000年6月の平壌訪問を回想する一節が頭から離れない。

 ブッシュ大統領はなぜ、ああした決定を下したのだろうか。グレッグ元大使はキム・ゲグァンなど北朝鮮の外交当局者らと交わした対話を通じ、当時の米国の事情を間接的に説明している。「北朝鮮の民間航空機が平壌の主体思想塔に突っ込み崩れ落ちる姿を見たら、どんな気持ちになるだろうか。米国人は9・11の時にニューヨークでそんな体験をした」。その後の展開は誰もが知る通り。ブッシュ大統領は2002年1月、北朝鮮をイラン、イラクとともに「悪の枢軸」と名指しした。以来、ジェームズ・ケリー国務省東アジア太平洋担当次官補が2002年10月に平壌を訪問して高濃縮ウラン方式による核開発疑惑を提起し、朝米の「ジュネーブ合意」に事実上の死刑宣告を下した。これにより金大中大統領の6・15南北共同宣言と、朝日関係正常化の偉大な第一歩になり得た小泉純一郎日本首相の平壌宣言がゴミくずと化してしまった。

 その後、北朝鮮は3回の核実験を強行し、「銀河3号」を打ち上げて相当なレベルの大陸間弾道弾(ICBM)の技術を確保した事実を見せつける。その間、朝鮮半島では悲劇が続いた。天安(チョナン)艦沈没、延坪島(ヨンピョンド)砲撃、地雷爆発などの苦痛を味わい、この悲劇による悲しみと憎しみの中で今も暮らしている。9・11テロという韓国と全く関係ない世界史的悲劇が様々な“バタフライ効果”を経て、韓国人に耐え難い傷痕を残すことになったのだ。

 あれから15年が過ぎ、ヨーロッパの中心で米同時テロに匹敵するほどの深刻なテロが発生した。今回の事件はどういう形で朝鮮半島情勢に影響を及ぼすだろうか。簡単には予測できないが、最悪の場合を考えてみたい。

 テロの直接のターゲットになったフランスは今後、イスラム国(ISIS)を相手に本格的な武力行使を始めるだろう。フランソワ・オランド大統領は24日にワシントン、26日にモスクワを訪問しテロとの戦争で米ロ両国の協力を要請するものと見られる。この戦争に米国が本格的に乗り出すことになれば、集団的自衛権を行使できることになった日本、そして韓国も様々な形での協力を求められるほかない。

 そしてこの戦争は、9月に日本の安保法制・改正によりグローバルの同盟に地位が引き上げられた米日同盟の本格的なデビューの舞台になりえる。安倍晋三首相が強行通過させた安保関連法は、まさにこうした時に米軍を後方支援させるために作った法律だ。韓国もこの戦争に協力を求められる過程で、米日両国はもちろん世界から自衛隊との軍事協力を強化させる圧力を受けるものと思われる。こうして成立した韓米日三角同盟の標的は北朝鮮に、そして明言はされないが明らかに中国に拡張されるだろう。このため東アジアの軍事緊張は高まり、韓国は以前よりさらに不安な世界で暮らすことになるだろう。

 9・11テロが2000年代初めにわずかに芽生え始めた朝鮮半島の冷戦解体の芽を無残に掘り起こしてしまったとすれば、パリのテロはこの流れを固定させる決定的な契機になる可能性が高い。不安だが、はっきりした出口はどこにも見えない。

キル・ユンヒョン東京特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-11-19 19:06

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/718196.html?_fr=mt0 訳Y.B

関連記事