米国のピート・ヘグセス国防長官が5月31日(現地時間)、アジア安全保障会議(シャングリラ対話)に出席し、「米国人の繁栄と安全はインド太平洋と一つにつながっている」とし、「我々はこの地域にとどまる」と述べた。ドナルド・トランプ政権がこのような意思を示したのは幸いなことだが、懸念される点は一つや二つではない。米国は、中国に対抗するためには韓国などがより多くの国防費を使って自分たちと積極的に協力しなければならないとする一方、過酷な「高率の関税」を通じて同盟国の経済的基盤を破壊している。同盟国につじつまの合わない二つの要求を同時に突き付けているのだ。このままでは、米国の国際的リーダーシップは、近いうちに回復できない打撃を受けるだろう。
ヘグセス長官の同日の演説は、世界の注目を集めた。今年2月の北大西洋条約機構(NATO)会議で「欧州は自らの安全保障に対する責任を負わなければならない」という立場を明らかにした米国の国防長官が、インド太平洋地域に対する立場を明らかにする場だったためだ。ヘグセス長官は「習主席が2027年までに台湾侵攻のための準備を整えなければならないと指示したのはよく知られている」とし、中国の脅威に対抗するため、韓国、日本、オーストラリアなど同盟が団結すべきだと訴えた。
しかし、各論では同盟に一方的な犠牲を求める内容が大半だった。ヘグセス長官は「多くの国が中国と経済的に協力し、米国とは安全保障上で協力するという考えに惑わされている」とし、「(それは)中国共産党が目指す罠にかかることを意味する。中国に経済的に依存すれば、有害な影響を受けることになり、緊張の時期に我々の防衛的決定が複雑になる」と述べた。いわゆる「安米経中(安保は米国、経済は中国)」を止めるよう求めたのだ。さらに「NATO加盟国が国内総生産(GDP)の5%を国防費に使うと誓約」しているのに、「北朝鮮などで恐るべき脅威にさらされているアジアの主要同盟国が(NATO加盟国よりも)防衛にお金を使わないのは、あり得ない話だ」と述べた。
ヘグセス長官がこのように話す間、ドナルド・トランプ大統領は鉄鋼に対して賦課してきた25%の関税を4日から50%に引き上げると発表した。4月初めに賦課された相互関税は米国の裁判所の判断が覆され、混乱だけが拡大しているにもかかわらず、鉄鋼と自動車(25%)に続き、半導体・医薬品に対する関税措置も行われる見通しだ。韓国の安保に多大な影響を及ぼす在韓米軍の「戦略的柔軟性」論議も、まもなく始まる見通しだ。米国は一体、同盟に何を求めているのか。