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韓国の実質定年は53歳…年金受領遅らせれば老後は一層貧困

登録:2015-10-18 23:48 修正:2015-10-19 06:28
高齢基準を70歳以上に引き上げ推進

「2017年までに社会的合意形成へ」
基礎年金・老人福祉も
年齢基準によって繰り下げ
所得減り老後生活悪化を憂慮

韓国政府は18日に発表した「第3次少子化・高齢社会基本計画」試案で、高齢者年齢基準を現行の65歳から70歳に上げる方案を公論化することにした。3月、ソウル鍾路区の円覚寺無料給食所で高齢者が集まって昼食をとっている =タク・キヒョン先任記者//ハンギョレ新聞社

 今後の韓国で高齢者は何歳からと見るべきなのか。政府が18日に発表した第3次少子化・高齢社会基本計画(試案)により、現在65歳である老人基準を引き上げるための議論が本格化する展望だ。 だが、事実上50代で職場を辞めなければならない現実を放置しておき、高齢者の基準だけを高めれば高齢者の生活の質がさらに悪くなるという憂慮が出ている。

 保健福祉部はこの日、「来年、高齢基準を変えるためのロードマップを用意し、2017年から社会的合意の形成を推進する」と明らかにした。 福祉部はこのために保健社会研究院に委託研究を任せている。キム・ホンジュ福祉部人口児童政策官は「もはや60歳あるいは65歳を高齢者と見ることはできないという共感が広がっている」と説明した。 昨年の高齢者実態調査結果(65歳以上の1万451人対象)でも、全体の80.3%が高齢者を70歳以上と考えているということだ。

 現在、韓国で多くの高齢者関連政策恩恵や福祉サービスを受けられる年齢は65歳だ。 その年齢から基礎年金を受給でき、地下鉄や国公立施設も無料で利用できる。 国民年金は61歳から受給でき段階的に65歳に繰り下げられる。

 政府が高齢基準を引き上げようとする背景には、高齢化によって仕事をする人は減り福祉支出が増えるという憂慮がある。 今年基準で65歳以上の高齢者は全人口の13.1%(662万4000人)だ。 2026年には20%(1084万人)を上回ると推計される。 福祉部は7月の高齢社会対策討論会で「今直ちに高齢基準を70歳に引き上げれば、基礎年金1兆9000億ウォン(約1900億円)を含め年間2兆3000億ウォン(約2300億円)の財政を節減できる」と明らかにした。

 このような背景から、政府は高齢基準を70歳以上に引き上げることを念頭に置き、下準備をしてきた。 企画財政部は2012年9月、「中長期適正人口管理方案」を発表し、高齢基準の上方修正を推進すると明らかにしたことがある。 当時の政府担当者は「100年前に平均寿命が49歳に過ぎなかったドイツで老齢年金の支給基準と定めた65歳を、現在の高齢基準として適用することは不合理だ」という論理を展開した。 今年5月には現政権の政策に友好的な市民団体である大韓老人会が高齢基準の引き上げ方案を決議した。

 だが、専門家らは高い自殺率・貧困率などが示すように、韓国の高齢者の生活の質が他国に比べて大幅に低い状況を考慮しなければなければならないと指摘している。 韓国の高齢者の相対的貧困率(中位所得の50%未満である階層が全体に占める比率)は49.6%で、経済協力開発機構(OECD)平均(12.6%)よりはるかに高い水準だ。

 OECD統計(2007~2012年平均)によれば、韓国人(男性基準)の公式退職年齢は60歳(来年から施行)だが、実際に労働市場から完全に引退する年齢は71.1歳だ。 OECD平均はそれぞれ64.8歳と64.1歳だ。 特に韓国の場合、主な働き口から追い出される時期は53~55歳であり大幅に早い。 加えて現在国民年金の受給比率は60歳以上高齢層人口の30%に過ぎない。

 ペ・キュシク韓国労働研究院先任研究委員は「韓国人は50代初めに主要働き口から押し出されるが、公的年金は不十分で70歳を超えるまで低賃金の働き口を転々として生活しているケースが多い」と話した。 このような状況で高齢者年齢基準を引き上げ、65歳から支給される基礎年金需給年齢や各種福祉恩恵開始年齢が繰り下げられれば、老後の所得が一層不安になるという話だ。

 政府は今回、定年と国民年金受給開始年齢間の差を一致させるための方案も用意すると明らかにした。 来年から定年60歳が適用されても、国民年金受給開始年齢(61歳)とは1年の乖離が発生する。 この乖離は2018年からは2年に広がる。 したがって、定年をさらに延長するなどの方案を検討するという趣旨だ。 だが、政府はこれを2018年以後の中長期課題に設定していて、法的に保障された定年を満たし国民年金受給資格要件を備えていても所得空白期間の発生は避けられないように見える。

 一方、政府は来年から離婚の歳に国民年金だけに認められている年金分割請求権(婚姻期間に該当する年金受領額の50%を分割受給できる権利)を、公務員年金や私学年金にも拡大することにした。 また、経歴断絶女性に対して適用除外された期間の国民年金追加納付を許容し、日雇い・特殊雇用職労働者に対する国民年金加入拡大を推進していく計画だ。

ファン・ボヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/rights/713343.html 韓国語原文入力:2015-10-18 22:19
訳J.S(2235字)

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