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【社説】ディープシークの衝撃、韓国も「速い追撃者」のチャンスを生かすべき

登録:2025-02-01 07:05 修正:2025-02-01 07:27
最近、低コストで高性能のAI推論モデル「R1」を公開し、世界を驚かせた中国のスタートアップ「ディープシーク」のアプリ/ロイター・聯合ニュース

 中国のスタートアップ「ディープシーク(DeepSeek)」が米国企業オープンAIのChatGPTよりはるかに少ないコストで似たようなレベルの性能を持つ人工知能(AI)モデルを開発し、世界を驚かせている。特に中国の新生企業が数年間続いた米国の厳格な半導体・AI輸出統制の中で、このような優れたイノベーションを成し遂げた点で、米国政府を当惑させている。中国が伝統的な製造業ですでに韓国に追いついたのに続き、先端産業でも韓国を追い抜いているという点で、韓国にも大きな警鐘を鳴らす出来事として受け止めなければならない。

 ディープシークが最近公開したAIモデルは2種類。一つは昨年末に発売した大規模言語モデル(LLM)の「V3」、もう一つは20日に発売した推論モデルの「R1」。R1モデルは数学や科学、コーディングなど高度な推論能力が求められる分野で、米国のビッグテックの最上位モデルと肩を並べるレベルと評価される。ところが、開発コストは米国のモデルに比べて10分の1に過ぎない。また、米国のビッグテックが技術的優位を維持しようとAI技術に対する閉鎖性を維持しているのに対し、ディープシークは開発過程に関する内容をオープンソースとして開放している点も驚くべきことだ。中国が世界のAIの中心に立とうとする野心が感じられる。

 これまでAI開発は大規模な資本とインフラ、高級技術人材が揃ってこそ世界市場で競争できるという認識が根付いていた。実際にAI学習・推論に必要なグラフィック処理装置(GPU)は、NVIDIA(エヌビディア)の高仕様チップである「H100」基準で1個当たり約4千万ウォンに達する。米国のビッグテックはこのような高仕様GPUを1社当たり数万〜数十万個保有し、開発競争でリードしている。特に米国はオープンAIが2022年にChatGPTを初めて公開して以来、独歩的な優位を占めていると認識されてきた。米国では1957年に旧ソ連が先に人工衛星(スプートニク)を打ち上げた衝撃になぞらえて、AI分野における「スプートニクの瞬間」と呼ばれているという。設立から2年あまりの社員180人の中国の新生企業が、米国の高強度制裁の中で成果を成し遂げたのだから、十分衝撃を受けるに値する。ディープシークは、米政府がNVIDIAの高仕様チップ(H100)の輸出を禁止したため、低仕様チップ(H800)を使用したという。

 地政学的波紋も大きい。AIは、産業的側面だけでなく、軍事技術の分野でもパラダイムを転換させるレベルの潜在力を持っている技術だ。米中がAI技術で先頭に立つために死活をかけた競争を繰り広げてきた理由もここにある。米国政府と業界は、直ちにディープシークが米企業のデータを無断収集して使用した疑いがあると主張した。ドナルド・トランプ政権は中国に対する半導体・AIの輸出統制をさらに強化する可能性もある。これに対応し、中国はロシアをはじめとすBRICS諸国と協力しながら、米国の鋭鋒を避け、市場の拡大を目指すだろう。

 韓国にとってはリスクとチャンスの両面が存在する。中国は鉄鋼や化学、造船、自動車など伝統的な主力産業で韓国に追いついたのに続き、最近は半導体分野まで脅かしている。今後、AI技術が産業に実際に適用される段階に入れば、中国にほぼすべての産業で追い越される可能性も少なくない。そのような点で、ディープシークは韓国にとっても「スプートニクの瞬間」かもしれない。一方で、ディープシークは少ない資本と人材でもAI技術における追いつきが可能性あることを示した点にも注目しなければならない。 韓国でも2022〜2023年にAI開発が話題になったが、資本力と人材における劣勢で最近はAI先導国競争から押し出されたという認識が広がっていた。実際、韓国は国家全体でも高仕様GPU(H100)が1万個程度に過ぎないと知られている。ディープシークの成功事例は、韓国のような後発国にも依然として機会の窓が開かれていることを示している。韓国はこれまでほぼすべての産業で「速い追撃者(Fast Follower)」として成功した経験を持っている。政府は基礎科学とインフラ投資、人材育成、ベンチャーをめぐる環境の活性化などに力を注ぎ、企業は未来産業の構図を変えるAIへの投資に攻勢的に乗り出すべきだ。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/1180249.html韓国語原文入力:2025-01-31 19:31
訳H.J

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