米国政府に門前払い扱いされる間、事業協力者のロッキードマーティンは韓国側のKF-X事業共同参加の提案に様々な理由を挙げて参加を避けた。米国政府の技術輸出承認が拒否され、ロッキードのKF-X事業参加決定もされない状態で、防事庁は米国とF-35Aの40機購入意向書(LoA)を締結し、米国に追加要求し得る交渉の余地まで放棄してしまう。防事庁は「購入意向書に米国は360人の技術人材とF-16最新技術資料を支援し、21種の核心技術移転を支援する」と保障したので「技術移転には問題がない」という言葉だけを報道機関と国会でオウムのように繰り返した。ここに開発費の20%を負担する条件でインドネシアが共同開発者として参加する事業協力協定(PA:Project Agreement)を締結するさらなる無理を重ねる。核心技術移転が不明瞭で米国業者の参加が不確かな状況ではPAなど何の意味も持たない。
結局、防事庁と空軍は、米国から技術移転が事実上難しいということを知りながら、昨年9月にF-35Aの40機購入契約を米国と締結する。だがこの契約でさえ、戦闘機価格、導入時期、技術移転義務条項に対する拘束力ある規範ではなく、一種の仮契約に過ぎない。実際の本契約は、F-35Aの開発が遅れているため現在では締結さえ不可能な状況にある。契約自体が不可能な実体がないF-35A導入に加え、KF-X事業の危険も手が付けられないほど増幅されている今の状況は、空軍創設以来最大の危機と言っても過言ではない。空軍出身のイ・ヒウ予備役准将は「今の空軍には津波のような危機が押し寄せている」と診断する。
こうしている間、国防部にはKF-X事業を専門に担当する事業団さえ存在せず、防事庁にすべての事業管理責任を押し付けてきた。防事庁は購入意向書と契約を締結しただけで技術移転問題は「業者が処理する事案」としてKF-X主事業者である韓国航空宇宙産業に責任を押し付けた。開発に8兆ウォン(約8000億円)、量産に10兆ウォン(約1兆円)必要とされる戦闘機開発事業は、誰が主体なのかも分からない有様だ。大統領府は、そのすべての過程をまったく知らなかったと言わんばかり、技術移転が不可能だという事実が今年の国政監査で提起されると、その時になって真相把握に乗り出すという局面にある。
■ 「戦闘機のない空軍」になる災難
問うことも問題視することもせず、米国の未完成の戦闘機導入を決めて事業管理に不良が累積する中、2025年までの次期戦闘機導入と韓国型戦闘機生産はいずれも不確かな一つのギャンブルに転落してしまった。さらに理解に苦しむのは、防事庁が既存の事業計画を守る中で、必要な核心技術をヨーロッパなど第3国から導入するという奇想天外な代案を提示しだしていることだ。
根本から再検討すべき戦闘機導入事業を放置しておいて、枝切りだけするような発想だ。米国の支援で作られた韓国型高等訓練機(T-50)を基本プラットホームにして発展させる戦闘機に、ヨーロッパの技術を適用するというのは前例のないもう一つの不確かなギャンブルになる。どれほど予算がかかるかも全く分からない。1999年に金大中(キム・デジュン)大統領が明らかにした戦闘機開発事業が16年後に座礁してしまう危機に直面しているのだ。
F-XとKF-Xの開発がぐらつき、適正な時期に戦闘機が供給されなければ、2020年代中盤に空軍の戦闘機保有数は現在430機から半分の水準に落ちる。“戦闘機のない空軍”は韓国安保の根幹を揺さぶる大型災難となるに違いない。今からでも既存の戦闘機事業を全面的に再検討し、新しい代案事業を出しても不十分な時であるというのに、既存の事業に対する既得権にこだわり共倒れとなる死の行進を続けている。この災難は一昨年8月末から9月中旬間に進行された釈然としない事業否決から始まった。このような悲劇的状況が果たしてどんな結果を招くのか気がかりでならない。
韓国語原文入力:2015-10-02 21:56