最大限多くの地域におこぼれが行くように
雇用を名分に地域出身議員と密着
軍・産複合を越えて、軍・産・議会複合体
韓国F-35購入は戦作権問題と連結
韓国の次期主力戦闘機に選定されたF-35戦闘機の生産工場は立地からして他社とは違っていた。米国の最大手防衛産業ロッキードマーティン社のF-35生産工場は、米国南部のテキサス州フォートワース市から車で30分ほどのところにある。だが、ロッキードマーティンの関係者が案内したのは、一般的な工場地帯ではなく米空軍の基地だった。「米空軍第4工場」という看板のある出入り口を通過すると、巨大な工場や滑走路、各種の附帯施設などが目に入ってきた。その規模は307万平方メートルにおよぶ。
案内者は「ここの人たちはF-35の組立工場を『1マイル(1 mile-long)工場』と呼ぶ」と言った。工場の長さが1マイル(約1.6キロ)にもなるために付けられた名前で、案内者はおそらく世界最長だろうと紹介した。工場の内部は戦闘機の前方・中央・後方・翼部門に分かれ、5万5000あまりの部品を自動化システムによって組み立てていた。
この敷地は米国政府の所有だが、運営はロッキードマーティンが担当している。 滑走路や付帯施設はロッキードマーティン社と米空軍が共同で使用しているという。ここに勤務する人員は約1万5000人で、米国の一体化された“軍(軍隊)・産(産業)複合体”の姿を象徴的に見せているようだった。第2次大戦中の1942年に設立された同工場は、これまでB-24、F-16、F-22等、米国を代表する爆撃機・戦闘機の産室として定着した。
F-35はここで現在までに100機以上が生産されたが、今も試練が続いている。この戦闘機は、米国史上最も多くの金が投じられた武器だ。開発・生産・購買に3900億ドルが投入され、今後の維持・運営費用まで含めれば1兆5000億ドルを超える予算が投入される。韓国の年間国内総生産(GDP)に匹敵する規模だ。2001年に米国防総省から承認を受けたこのプロジェクトは、2008年の経済危機以降、国防予算削減の圧迫が強まった上に、エンジントラブルなど部品の欠陥問題が相次ぎ、絶えず批判の矢面に立たされながらも、びくともせずに突っ張っている。
米国の多くの専門家とマスコミは、F-35が生き延びている最も大きな理由として、ロッキードマーティン社とF-35の協力会社らが持っている米政界に対する強力なロビーの力を挙げている。
核心ロビー対象は議会だ。米国は韓国と異なり議会が予算承認権だけでなく編成権まで持っていて、事実上F-35の運命は議会の決定にかかっていると言っても過言でない。 F-35の主事業者であるロッキードマーティンやノースロップグラマン、BAEシステムズ、ユナイテッドテクノロジーズの4社が、最近3年間に議員たちに提供した選挙後援金は1110万ドルに上る。 後援金を受け取った議員らは、主に上院・下院の軍事委と歳出委傘下の軍事小委員会所属の議員だった。
議員たちの支持を得るためのF-35メーカーの戦略は非常に緻密だ。潜在的敵国の兵器を圧倒する先端兵器生産という国家安保次元の戦略もあるが、F-35をできるだけ多くの議員の地方選挙区と関連付けることがその核心だ。 生産工場と部品調達先、試験飛行と訓練場所などをできるだけ多くの州に分散配置するのがその方法だ。ロッキードマーティン側は「F-35プログラムは46州と関連をもっており、12万5000の雇用を創出している」と主張する。
生産工場と主要部品調達先がある地域出身の議員で構成された議会内の会も作られている。「ジョイント・ストライク・ファイター(JSF・統合打撃戦闘機)コーカス」というこの会は、2011年に国防予算削減圧力の中でF-35の事業規模を縮小すべきだという世論が起こると、これを防御するため同年11月に創設された。現在、共和・民主党議員39人が参加しているが、主にF-35と関連のある地方区の議員たちだ。 地方区(テキサス州フォートワース)にF-35の生産工場があるケイ・グレンジャー下院議員(共和党)とエンジン工場があるコネチカット州のジョン・ラースン下院議員(民主党)が共同議長を務めている。39人の議員のうちテキサス州出身者が12人に上る。
F-35に批判的なジョン・マケイン上院議員は、このような構造を「軍・産・議会複合体」と規定する。マケイン議員は7月、エンジン事故を起こしたF-35に離陸禁止令が下された直後、「大きすぎて潰せない大失敗だ。私たちは何年もコスト超過や部品の欠陥と戦闘を行っている」として「軍・産・議会複合体の典型的事例だ」と指摘した。彼は1961年、ドワイト・アイゼンハワー米大統領が退任演説で“軍・産複合体”の危険を警告したことを想起させながら、今はそこに議会を付け加えなければならないと何年も前から力説している。 アイゼンハワー大統領は当時、「私たちは軍産複合体が不当な影響力を獲得する事態を警戒しなければならない。不適切な権力が災いのように成長する潜在力が現存しており、今後も存続するだろう」と警告している。
F-35は開発・生産の遅れで費用が急騰し、購買単価が大幅に上昇した。1機当たりの価格は2007年の予想より2倍も高騰し、完全生産が可能な時期は2019年と、6年も遅延された。これにより、ロッキードマーティン社と米国防総省は、購買価格の上昇を統制しようと対外販売に力を入れている。しかし、当初購買すると予想されていたカナダなど多くの国が購買保留や縮小を決定している。
今年行われた韓国のF-35 40機の購入決定は、その点でF-35の生産メーカーや米国防部、議会など支援勢力にとっては朗報だった。これは韓国政府のF-35購入決定が、米議会が戦時作戦統制権返還再延期に肯定的反応を示す背景として作用した理由でもある。
F-35とは
米国の軍需会社ロッキードマーティンが開発したF-35戦闘機は、マッハ1.6の速度で飛べるステルス戦闘機である。 F-35は世界最強という評価を受けるF-22ステルス機の普及型だ。米国はF-22戦闘機を戦略兵器に分類し海外販売を禁止する代わりに、友好国向け販売用などの目的で、二つのエンジンを一つに減らすなど、性能を落としたF-35を開発した。韓国は2021年までにF-35を40機購入する計画であり、イスラエルやカナダ、日本などもそれぞれ40~75機を購入する予定とされている。