教科書国定化に対する歴史学界の反発が激しい。今月に入って、ソウル大学の歴史関連5学科の教授34人や全国歴史教師会所属の教師2255人、歴史・歴史教育研究者1167人に加え、ついに教育部の委託で韓国史教科書執筆基準を開発する研究者たちまでもが11日、国定化に反対する意見を公表した。それでも政府とセヌリ党が耳を貸さないことについて、元老歴史学者のイ・マンヨル淑明女子大学名誉教授(77、前国史編纂委員会委員長)は「侮辱された気持ちだ」と話した。「教科書国定化は教科書制度の後退だけでなく、国の品格を著しく落とす行為であり、かなり大きな傷となる」と付け加えた。
自虐史観は安倍首相や日本の極右勢力が使った言葉
金武星セヌリ党代表は
なぜそのような言葉で歴史研究を冒涜するのか
単一教科書は教育の画一化をもたらす
ニューライト性向の歴史観も学界の検証を受けるべき
- 歴史学者の大多数が反対しているのに、政府とセヌリ党側は国定化を主張している。
「学界の研究を無視して、歴史に無知な結果だ。この際、歴史教育は、当代の歴史学の発展した学術的土台の上で、歴史学界の公論に任せるという社会的合意も必要だ。周りにも国定化を支持する学者たちはほとんどいない。歴史研究は、これまで大きく発展した。かつては親日派や独立運動史の研究が歴史学界のタブーだった。1987年6月革命以後の民主化により、独立運動史と近現代史の研究が急速に発展した。にもかかわらず、金武星(キム・ムソン)セヌリ党代表は、歴史学の発展を知らずに、現行の検定教科書が『左寄り』で『自虐史観』に立脚していると叫ぶ」
- 歴史学界がほとんど「自虐史観」を持っているという声もある。
「『自虐史観』というのは、1990年代半ばに、安倍晋三現首相と日本の極右勢力が使った言葉だ。当時、村山政権が日本の植民地支配を反省する最も進展した談話を発表した際に、極右がそれを批判した言葉だ。そんな極右側の意図が2001年の扶桑社版教科書をめぐる議論につながった。なぜよりによってそのような言葉で私たち(韓国)の歴史と歴史研究、私たちの教科書を冒涜するのか」
- 単一の歴史教科書が必要だと言われているが。
「国定教科書には国の目標が色濃く表れるため、教える側も学ぶ側も自由が制限される。民主主義国家では、歴史を見る視点に多様性がなければならない。一つの事実をめぐり歴史的解釈はいくらでも出てくる。単一教科書は、教育の画一化をもたらして、創造性を抹殺する」
- 多様性を強調するなら、ニューライトの史観も認めるべきだはないか?
「もちろん、ニューライト性向の史観も歴史学界の検証をきちんと受けるなら、拒絶する理由がない。教科書として基本的な要件とレベルを備えていない教学社の韓国史教科書を教育部が無理やり擁護しようして、うまく行かなかったため、国定化を持ち出したという評価もある。自分を除く残りを“左派”と攻撃するのは、理念論と変わらない。もはや教育部自ら主導して検定した教科書を全部左寄りだという。深刻な自己矛盾に陥っている」
- 結局、近現代史が論争の中心のようだ。
「李承晩(イ・スンマン)政権は臨時政府の正統の継承に消極的だった。憲法前文に3・1運動で建立された大韓民国臨時政府の法統と不義に抗拒した4・19民主理念を継承するとされているが、教科書や政策にはまだこれがきちんと反映されていない。解放70周年なのに、国内に臨時政府記念館すらない。政権与党、韓国の保守勢力は、民主化運動の歴史も認めようとしない。これは非常に重要な歴史観の問題だ。結局、歴史を導いていく勢力は民であり、世界史を導いた主体は民衆なのに、与党と保守勢力は、支配層が歴史を導いてきたというような歴史観を持っている。『東学農民運動』を『東学乱』とするようなものだ。韓国近現代史の主体を、独立運動と民主化運動勢力から親日派と独裁政権勢力などに変えようとするのではないかという疑念を抱かせる」
- 国定化ではなくても、政府が基準をより強化することはできる。
「今でも執筆ガイドラインが細かすぎる。学界の正当な意見を受け入れず、より厳密に基準を作るということは、事実上の国定化だ。この際に、より良い自律、不必要なガイドラインを取り除き、自律化した方がいい。世界的にも教科書は国定制から検認定制へ、それから自由発行制へと発展する傾向にある。最終的には自律発行制にするべきだが、その前に基準を緩和した自律化にすべきだ」
- 正しい歴史教育とは何か?
「歴史の発展とは主体的に判断して行動する人間が量的に増加することを言うと考えている。昔は王や諸侯、将相だけにそれが許された。民主国家では、すべての人が自分の問題だけでなく、社会問題についても主体的に判断して行動できなければならない。『歴史は、現在と過去の対話』(E・H・カー)というように、歴史教育は今の立場で、過去の意味を解釈して批判し、その教訓を滋養分にして明日へのエネルギーを作るところまで進まなければならない」
韓国語原文入力:2015-09-15 20:03