慰安婦被害者パク・スギさんをインタビューした作品
過去の苦痛と現在に続く辛い人生に照明
「結婚することも、子供を生むこともできず」
約200席の所々から涙
「とっても赤ちゃんをほしかった。でも持てれわけないじゃない。34歳の時だったかなあ、孤児院から赤ちゃんを3人連れてきて育てました」
慶尚南道の南海(ナムヘ)に住む慰安婦被害者のパク・スギさん(94)は淡々と自分の過去の話をしているのに、客席ではあちこちから涙ぐむ声が聞こえてきた。
15日午後(現地時間)、米国のワシントン市内にある米海軍記念劇場には、日本軍慰安婦を素材とする映画『最後の涙(The Last Tear)』を観るため約200人の観客が集まった。最後の涙は、在米同胞のクリストファー・リ監督(51)と米ジョーンズホプキンス大学国際関係大学院の韓米研究所が共同製作したもので、この日、ワシントンの他、日本の東京、中国の南京と上海で同時に上映された。
1時間のドキュメンタリー映画は日本軍慰安婦に関する紹介から始まり、主にパク・スギさんとのインタビューを通じて慰安婦ハルモニ(お婆さん)の過去の苦痛と現在の辛い人生に光を当てた。
パクさんは16歳の時、南海郡古縣(コヒョン)面の海辺に貝を採りに行った時、日本軍に連れられ、中国の満州で7年間の地獄のような慰安婦の生活を強いられた。光復(解放)を迎えるとすぐに釜山(プサン)を経て故郷に戻ったものの、歓迎してくれる人はいなかった。結婚もできなかったし、子供も生めなかった。映画は日本政府を直接批判することはなかったが、こんな苦痛を強いられたお婆さんに対し「日本の謝罪は充分なのか」と厳しく問いかけている。
パクさんが「近頃は誰もが犬を飼うようになったけど、国が力を持つには人が多くなくちゃ。犬が代りに戦争でもするというのか。近頃は“ケ(犬)パン”(メチャクチャの意)だ」と語ると観客席から笑いが出た。映画は犬を愛するアメリカ人を意識したかのように、この場面で「お婆さんの記憶は70年前に留まっている」という説明がされた。
映画はパクさんのインタビューの所々に慰安婦ハルモニの苦痛を、踊りやナレーションで表現することもあった。踊りの演技は、私たちと同じように二回の植民支配を体験したラトビア出身の舞踊家が担った。特に、軍慰安所での経験については画面全体をしばらく黒く処理して、ハルモニたちが当時感じた苦痛や恐れを伝えた。
会社員のギャンブル・ペイドゥンさんは映画を観た後、「とても感動的だった。韓日間に葛藤があるという話は知っていたが、慰安婦問題については今回の映画を観て初めて知った」として「映画で話されていたように、慰安婦問題は韓国だけの問題でなく世界的な問題だと思う」と語った。
クリストファー・リ監督は「安倍首相が(今回の談話で)謝罪をするとは期待もしていなかった」と語り、「だからこそ市民の力が重要だ。この映画を通じて慰安婦問題に対する歴史的真実を知らせていきたい」と強調した。リ監督は米国でも韓国でも、上映要請があればどこでも無料で映画を提供すると付け加えた。
この映画は12日にロサンゼルスで初めて封切られ、韓国では17日に大邱(テグ)で初めて上映される。
韓国語原文入力:2015-08-16 21:45