韓中自由貿易協定(FTA)の最大被害業種に挙げられる農林水産業の雇用が、10年間でわずか160人の減少に留まるだろうか?
政府が国会に提出した「韓中自由貿易協定影響評価」が、成長効果は過度に脹らませ、農林水産業被害などは縮小したという批判が出ている。 政府は通商手続法によって国会に批准同意案を出す時、影響評価結果と被害産業補完対策を一緒に提出しなければならない。 これに対して国会が今後徹底的に検証しなければならないという声が大きくなっている。
17日、国会で開かれた「韓中FTA検証総合シンポジウム」でキム・ジェナム議員(正義党)は「政府が協定締結により10年間で実質国内総生産(GDP)が0.96%成長すると主張しているが、根拠が不十分であり、農林水産業での雇用減少が10年間で160人にしかならないという主張はコメディみたいなものだ」と指摘した。 今回のシンポジウムは正義党と「民主社会のための弁護士会」(民弁)、 国際通商研究所が主催した。
先ず協定により実質GDPが0.96%成長するという政府の主張に対して、イ・ヘヨン韓国神大教授(国際関係学)は「調査方法により0.31%とか0.24%の成長という結果が出ている程度なのに、政府の提示した1%成長に近い数値は脹らませたものに近い」として「韓米FTAの時6%の成長効果を掲げたのに比べれば今回の方が良くはあるが、相変らず過度なバラ色の展望だ」と指摘した。
政府は影響評価書において、今後10年間に製造業とサービス業での雇用が5万3964人増加する一方、被害が予想される農林水産業では雇用減少はわずか160人に止まると展望した。 また農林水産業の生産額は20年間に年平均181億ウォン減少すると見た。
「0.96%成長」について影響評価を研究した国策研究所である対外経済政策研究院関係者は、「中国の急速な成長が分析に反映された。現時点で比べるのと、今後5年後10年後に中国経済が大きくなった時を勘案して分析するのとでは差がある」と述べた。 「農林水産業160人減少」については「中国産農水産物の輸入が増加する時、他国から輸入される分が中国産に代替される貿易転換効果があり、製造業が成長して農水産業食品が加工食品材料に入って行くとか、サービス産業が成長して農水産食品の需要が増える産業関連効果がプラス要素として反映された結果だ」と説明した。
これに対してイ・ヘヨン教授は「中国の成長率は急速に鈍化しており、中国発チャイナリスクが頭をもたげているのに、好況期の中国モデルを想定して将来の青写真を描ことは妥当性を欠く」と反駁した。
中国産食品の安全性に関する指摘も出た。 民弁国際通商委員会のノ・ジュヒ弁護士は、「中国産食品の安全性を担保する装置も確保されていない。中国とニュージーランドのFTAには、中国産食品の安全性に対するニュージーランド側の憂慮を反映して、高い水準の衛生検疫内容が含まれたが、韓国ではそうできなかった」と指摘した。 この他に、チェ・スンファン慶煕大教授(法学専門大学院)はサービス貿易規定について「小商工人保護のための大型流通店営業活動規制のように、国家政策的目標を果たすためにサービスの供給を規制する権利を認める規定がない」として「今後の第2段階交渉で韓国の留保リストに明示しなければならない」と明らかにした。
国会は9月の定期国会で批准同意の可否を本格的に論議する予定であり、野党は韓中FTA特委の構成をセヌリ党に提案した状態だ。