中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスに感染した患者を診療した経験があるサウジアラビアの医療陣が「(韓国は)今後MERSウイルスの変異の可能性に備えなければならない」と明らかにした。また「MERSのような感染症は、小さな情報でも社会が共有するリスクコミュニケーションが強化されなければ克服できない」と助言した。
予防医学会と韓国疫学学会は16日、ソウル鍾路(チョンノ)区蓮建(ヨンゴン)洞にあるソウル大学病院生命研究院で、サウジアラビアの医療陳3人を招聘し、「MERS感染の疫学的、臨床的様相と管理」というテーマの特別講演を開いた。サウジアラビアの医療陳はMERSウイルスのゲノムが、今後変異する可能性があると強調した。ジョンズ・ホプキンス・アラムコ病院の感染症専門家であるジャパール・タウピク博士は「現在韓国で発見されたMERSウイルスは、サウジアラビアで発見されたものとあまり変わらないことが分かったが、今後変異の可能性があるので、引き続き遺伝子配列を観察しながら、備えなければならない」と説明した。
これと関連し注目すべき点は、サウジアラビアにおけるMERS患者の致死率の変化だ。タウピク博士が提供した資料によると、2014年4月に報告されたMERS患者23人の致死率は65%だったが、1年後の2015年の調査では、402人の患者の致死率が28.3%に低下した。これに対してファン・スンシク仁荷大学医学部予防医学教室教授は、「初期には症状が重い患者を中心に発見され、致死率も高かったが、1年後には症状が軽い患者が多くなる代わりに、致死率は低くなったということであり、これはMERSウイルスが健康な若年層にまで拡散するほど、変異が行われたものと見られる」と分析した。
今月7日、中央MERS管理対策本部は「(韓国で流行した)MERSウイルスは、現在までに変異していないことが分かった」と明らかにした。
タウピク博士はまた、まだMERS治療剤の開発のための臨床結果が十分ではないため、もっと多くの臨床事例を確保することが重要であると説明した。この日の講演に参加した製薬会社の関係者は、「MERSの治療に使われる抗ウイルス剤『リバビリン』に興味を持っており、特別公演に参加した。中東の研究状況を聞いて、今後長い道のりになることを実感した」と述べた。
サウジアラビアの医療陳はまた、MERSを克服するために迅速な対応とともに「リスクコミュニケーション」の重要性を強調した。アリ・バラク・サウジアラビア疾病管理本部長は「リスクコミュニケーションとは、小さな情報でも地域社会が一緒に共有し、不必要な不安と恐怖感を和らげることだ。危険をついて正確に定義し、双方向に伝え合わなければ、(MERSを)克服できない」と述べた。
この日の講演では、医療関係者や製薬業界関係者など100人が参加し、MERSに対する高い関心を裏付けた。特別講演に参加したイ・ドングァン東国大学医学部予防医学教室教授は、「サウジアラビアの状況は韓国と大きく変わらないようだ。中東の医療陣が経験した数年間の研究と治療の経験が役に立った」と述べた。
韓国語原文入力: 2015-06-16 18:42