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FTA被害補償金削減し、保育予算は地方に押し付け

登録:2015-06-03 22:05 修正:2015-06-04 09:31
野党・新政治民主連合が挙げた上位法違反は14事例
新政治民主連合のカン・ギジョン政策委議長(中央)が1日午後、国会で先月29日に与野党が合意処理した国会法改正案の行政立法修正要求条項と関連し、政府の国会立法権侵害事例を発表している=イ・ジョンウ先任記者//ハンギョレ新聞社

 昨年4月、自由貿易協定(FTA)被害補填直払金(直払金)の算定に不服を申し立て、行政訴訟を提起した全国韓牛協会は現在、行政訴訟を再度提起することを検討中だ。「FTA締結による農漁業人等の支援に関する特別法」(特別法)によって支給される直払金の規模を、農林畜産食品部が2013年から大幅に減らしたからである。 当時の特別法に基づいて推算すれば韓牛1頭当たり約5万5000ウォン支給される被害補填直払金が、行政立法である“告示”によって1万3000ウォンに削減されたのだ。 直払金制度はFTAによる輸入農産物の増加のために国産農畜産物の価格が下がれば、その差額の約90%を補填する制度だが、政府の“圧力”で4分の1に減ったわけだ。

 新政治民主連合は1日、国会が作った法律を政府が行政立法により無力化した代表的ケースの一つとして、これを取り上げた。 韓牛1頭当たりに支給される直払金が削られたのは、2013年に農林畜産食品部が直払金算定基準を作り、特別法にはなかった「輸入寄与度」(直払金を計算する際に価格下落原因のうち輸入による被害比重を適用する)という概念を導入したからだ。 農林畜産食品部は 2013年4月「農業人等支援委員会」の審議を経て輸入寄与度という算定基準を行政立法の長官告示で強行した。同連合のキム・ヨンノク議員の推算によれば、2013年2000億ウォンの予算が300億ウォンに大幅削減された。 昨年までキム議員らが国会農林畜産食品海洋水産委員会で「法律解釈の結果、輸入寄与度を反映させることは現行法令上不可能だ」と何度も指摘したが、農林畜産食品部は今度はこれを明文化する立法も検討中だ。

 同連合はこの日、施行令・施行規則などの行政立法がこのように上位法に違反、ないしは問題の素地を有する14件の事例を公開した。同連合のカン・ギジョン政策委員会議長は、政府の行政立法に対する国会の修正権限を強化した国会法改正論難を意識して、「法と衝突するものを修正するということだ。野党の気に入らない施行令を修正するということではない」と強調した。

 同連合がこの日公開したケースは、政府が国会の同意が得にくく相当な論議が予想される政策を、行政立法を通して強行したもの、あるいは現在それを検討中のものなどである。 政府が朴槿惠(パク・クネ)大統領の大統領選挙公約と異なり、幼稚園・保育園の「ヌリ課程」(満3~5才の無償教育)予算を市道教育庁に負担させるために施行令改正を最近推進中であることが、その代表例だ。 教育文化体育観光委員会の野党幹事であるキム・テニョン議員は「地方教育財政交付金法第1条は交付金支援対象を明確に規定しているが、保育施設である保育園は支援対象ではない」として「明白な上位法違反」と指摘した。李明博(イ・ミョンバク)政権が22兆ウォンをかけて推進した4大河川事業も、政府の施行令濫用の典型的事例として指摘される。 政府が昨年、医療機関の付帯事業(営利事業)の範囲を拡大する内容の医療法施行規則改正案を公布したのも「医療営利化政策」という野党と市民社会の反発を意識して“迂回路”を採ったケースに挙げられる。 当時国会立法調査処と大韓弁護士協会は「医療法の委任立法の範囲を逸脱したもの」と指摘した。

 また新政治民主連合は、学校の前にホテルを作れるようにした学校保健法長官訓令制定、賃金ピーク制を会社側が一方的に推進できるようにする雇用労働部の就業規則変更推進も、「施行令共和国」の一断面だと指摘した。

  同連合のイ・ジョンゴル院内代表はこの日国会で開かれた党務委員・国会議員連席会議で、「セウォル号特別法施行令は、父親のいない施行令のようなものだった」と強く批判し「法律の息子格である施行令は、父親の意思を十分に尊重しなければならない」と述べた。

イ・スンジュン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/693780.html 韓国語原文入力:2015-06-02 00:35
訳A.K(1936字)

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