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訪韓したベトナム戦虐殺被害者の参加行事が参戦者団体の圧力で中止

登録:2015-04-07 07:38 修正:2015-04-07 07:44
枯れ葉剤戦友会「行事を完全封鎖」と警告
6日午後、国会正論館でベトナム虐殺被害者であるウンウイェントルロン氏(男性・64)とウンウイェンティタン氏(55)、ホーチミン市戦争証跡博物館長のフイヌンオクポン氏(53)が記者会見を開き当時の状況などを説明している。キム・ギョンホ先任記者//ハンギョレ新聞社

 曹渓宗は安全上の理由でレセプション取り消し
 「歴史歪曲の二重定規」と批判相次ぐ

 「私たちがベトナム戦問題を解決できなければ日本との過去の歴史も解決されない」
 専門家は参戦軍人団体に苦言「感情的対応は問題解決の助けにならない」
 「合理的な考えの人たちが組織文化を変えねば」

 ベトナム戦当時の韓国軍駐屯地域で発生した民間人虐殺被害者が参加する行事が、参戦軍人団体などの激しい反発で会場の予約が取り消されるなど、異常な事態となっている。参戦軍人団体は「歴史を歪曲する不純勢力の反民族的行為」と主張し、行事を大規模集会で「完全に封鎖」すると警告した。歴史と領土を歪曲した日本の中学校教科書検定結果をめぐり韓国社会が騒然とした6日、その韓国社会の一部の二重の歴史認識が露わになったとも指摘される。

 平和博物館は7日午後7時、ソウル堅志(キョンジ)洞の曹渓寺内にある韓国仏教歴史文化記念館国際会議場でベトナム戦を扱ったイ・ジェガプ写真展「一つの戦争、二つの記憶」のレセプション行事を行う予定だった。先月6日に手続きを終えていたが、曹渓宗財務部は3日になり突然、申請を取り消すと平和博物館に通知した。曹渓宗はハンギョレとの通話で「理念葛藤と安全上の問題で行事を取り消すことにした」と明らかにした。

 レセプションには、4日にベトナム戦終戦40年目にして初めて韓国の土を踏んだベトナム戦民間人虐殺被害者ウンウイェントルロン氏(64)とウンウイェンティタン氏(55)が参加する予定だった。曹渓宗が突如行事を取り消したのは「大韓民国ベトナム戦参戦者会」や「大韓民国枯れ葉剤戦友会」などのベトナム戦参戦軍人団体の反発を憂慮したためだ。ベトナム戦参戦者会は2日、曹渓宗に行事手続きの取り消しを求める公文書を送り付けた。シン・ホチョル ベトナム戦参戦者会事務総長は「捏造された(内容の)行事なので開催してはならない。座視しない」と主張した。ベトナム戦参戦者会は会員たちに「左傾化した反国家的な一部勢力が民間人虐殺被害者の証言という、根拠も証拠もない演劇を行おうとしている。命を縮める覚悟で彼らの陰謀を粉砕する」と公示した。

 キム・ソンウク枯れ葉剤戦友会事務総長は「(私たちの)名誉にかかわる行為だ。行事を完全に封鎖するため7日に1000人が曹渓寺前に集まることにした」と話した。キム事務総長は「過去にもハンギョレが書いた虚偽記事で集会をした。今回もなにが起きるかわからない」とした。枯れ葉剤戦友会はベトナム戦民間人虐殺を最初に報道した時事週刊誌ハンギョレ21の記事に抗議し2000年6月、ソウル麻浦(マポ)区 孔徳(コンドク)洞のハンギョレ本社に乱入して防火を試み、印刷施設、自動車、コンピュータなどを壊した。関連者が拘束されると枯れ葉剤戦友会役員がハンギョレを訪ねて謝罪している。

 鍾路(チョンノ)警察署は「衝突の恐れがあり曹渓宗側に枯れ葉剤戦友会の集会事実を知らせた。その後、曹渓宗で判断し手続きを取り消したと理解している」と話した。ファン・チュンギ曹渓宗財務チーム長は「ベトナム戦関連団体の抗議などで施設破損および正常業務に重大な支障が予想されるため、やむをえず申請を取り消した」と説明した。

 平和博物館は6日、警察にベトナム訪問団などに対する「身辺保護要請」をした。これでレセプション行事の開催も不透明になった。ソク・ミファ平和博物館事務局長は「民間人虐殺被害者は5日に京畿道広州(クァンジュ)のナムヌの家の慰安婦歴史館を訪問している。彼らの訪問目的は戦争被害者である韓国とベトナムが共感できることを探そうとするもの」と語った。平和博物館側は「民間人虐殺被害者の初めての韓国訪問は、日本軍慰安婦被害者の初めての日本訪問と同じ意味を持つ」と招請趣旨を説明したことがある。

 パク・テギュン ソウル大国際大学院教授は「私たちがベトナム戦問題を解決できなければ、日本との過去の歴史問題も解決できない。ベトナムの被害者の話を聞くのは参戦軍人の犠牲を否定するものではない。彼らも犠牲者と認められるよう国家の謝罪を要求する」と述べた。パク教授は「韓国政府が民間人虐殺に対して謝罪をする瞬間、参戦軍人も加害者でない国家動員被害者になるという点を認識しなければならない。感情的対応は問題解決に役立たない」と指摘した。

 キム・ドンチュン聖公会大社会学科教授は「参戦を名誉と考える人にとり民間人虐殺があったという事実は、自分の存在の否定になることなのかもしれない。だとしても合理的な考えの人たちが参戦軍人団体の組織文化を変えていく必要がある」とした。

 ベトナム戦当時、韓国軍に家族を奪われ本人も負傷したウンウイェントルロン氏とウンウイェンティタン氏は、この日、国会正論館で記者会見を開き訪韓の趣旨を明らかにした。彼らは「誤った歴史と戦争を記憶しなければならない理由は、再びそんなことを繰り返させないためだ。韓国独立70周年、韓国軍ベトナム派兵50年になる今年、韓国とベトナムが相互平和と協力の道に進むことを祈る。その道を行くには何より歴史に対する正しい省察が先になされなければならない。私たちの訪問が韓国社会にベトナム戦に対する深みある議論につながることを期待する」と話した。

キム・ソンファン、キム・キュナム記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-04-07 01:25

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/685782.html 訳Y.B

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