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「時給1万ウォン」から「凍結」まで…最低賃金めぐり韓国で百家争鳴

登録:2015-03-13 01:20 修正:2015-03-13 16:06
最低賃金引き上げで政労使で意見に隔たり
ハン・サンギュン民主労総委員長(左)が12日午後、ソウル中区の民主労総大会議室で開かれた「民主労総最低賃金の要求発表記者会見」で最低賃金1時間に1万ウォンと月209万ウォンを要求する会見文を読んでいる。イ・ジョングン記者//ハンギョレ新聞社

 民主労総「1万ウォン」1月当たり必要生活費208万ウォンから逆算
 経総「凍結」企業にはすでに大きな負担と主張
 セヌリ「......」最低賃金委員会の決定を尊重
 新政治連合 「6360ウォン」労働者 「平均賃金」の50%に
 正義党 「8019ウォン」市中労賃単価適用増やす

 最低賃金引き上げの議論が例年よりも早く加熱し始めたことで、来年の最低賃金をどの水準で決めるかをめぐる主導権争いが激しくなっている。民主労総は12日、来年の最低賃金を今年より79.2%引き上げた1万ウォン(約1080円)にしようと主張した。新政治民主連合は、労働者の平均賃金の50%以上に定めようという案を策定した。労働界の一部では、政府が公共機関用役労働者の賃金支給の基準とする市中労賃単価水準(約8000ウォン、約860円)を最低賃金の土台にしようという意見も出ている。最低賃金は、労使代表と公益委員が参加する最低賃金委員会が6月頃までに決めて通知すると、雇用労働部長官が8月5日までに決定して告示しなければならない。

最低賃金の引き上げ幅に対する労使政の見解。//ハンギョレ新聞社

■ 民主労総「最低賃金1万ウォン」

 民主労総はこの日、来年の値の最低賃金を1万ウォンでしようという主張を出した。大胆な提案だ。民主労総は「象徴的な要求ではない」とした。都市勤労者世帯の消費支出と世帯当たり2.5人を適用して計算すると、約208万ウォン(約22万4400円)が必要だが、これを1カ月労働時間(209時間)で割ると、時間当たり9995ウォンになるということだ。韓国は経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で全日制労働者の賃金の平均値に比べ最低賃金の割合(35%)が29カ国のうち20位にとどまっており、中位値(全体を一列に並べたてた場合の中間値)を基準にすると、43%に過ぎず、28カ国のうち21位だ。このような格差を可能な限り早く解消するためには、大幅な引き上げが避けられないという論理だ。しかし、80%近い引き上げは非現実的だという指摘が多い。

 このため、労働界の一部からは、市中労賃単価を公共部門の最低賃金に設定し、これを徐々に民間に広げていこうと提案している。市中労賃単価とは中小企業中央会が毎年2回、製造部門の普通の労働者の賃金を調査し発表するもので、今年の上半期には時間当たり8019ウォン(約865円)だ。シム・サンジョン正義党院内代表は最近のラジオ番組に出て「今すぐ1万ウォンは難しいため、公共部門の最低賃金基準といえる市中労賃単価を公共部門から適用し、民間に段階的に拡大していこう」と述べた。

 政府は、2013年から市中労賃単価を中央政府と地方自治団体はもちろん、公共機関や公私立大学等が清掃・警備等の用役労働者を雇用するときに支給しなければならない賃金の基準点として定めた。現在は勧告にとどまっているが、法を改正してこれを義務化しようというものである。キム・ユソン韓国労働社会研究所専任研究委員は、「中小企業中央会が調査し発表するものなので、企業としては抵抗感が少ないし、これは労働界が主張してきた5人以上事業所の平均賃金の50%ともほぼ一致する」と述べた。

■ 新政治民主連合「労働者の平均賃金の半分にはならないと」 

 新政治民主連合は、最低賃金の下限を労働者「定額給与」平均の50%に法制化した後、徐々に労働者の「平均賃金」の50%以上に引き上げしようという立場を示している。税引き前の所得を意味する平均賃金は、基本給の中心の定額給与から各種手当や社会保険料を引く前の金額なので、規模が大きい。 2014年基準でそれぞれ7600ウォン(約820円)、6360ウォン(約686円)水準だ。新政治連合の関係者は、「定額賃金の50%から始めて、平均賃金の50%以上で段階的に引き上げていくが、引き上げ幅と速度は与野党が合意して決めようということだ」と述べた。

 文在寅(ムン・ジェイン)同連合代表はこの日午前、中小企業中央会を訪問してから記者たちと会って、「最低賃金の引き上げが零細な中小企業に負担を与えるのは事実なので、支援策を並行して議論しなければならない」と述べた。同連合は、補助金の支給や減税などの中小企業支援策とともに、最低賃金の引き上げ分が納品単価に反映されるようにする案など、10種類以上の補完対策を議論していることが分かった。

 一方、セヌリ党は、最低賃金引き上げの必要性については共感しながらも、最低賃金を決定する雇用労働部傘下の最低賃金委員会の議論に、政界が直接ガイドラインを提示することに対しては否定的だ。セヌリ党院内主要関係者はこの日、ハンギョレとの通話で「最低賃金を引き上げなければならないという社会的雰囲気が作られたことについて、党指導部も共感しているが、野党が主張するように、最低賃金の議論のために与野党と政府が会合したり、最低賃金を法制化して強制する方法については考えていない」とし「政労使の調整と合意の精神が反映される最低賃金委員会の決定を尊重する必要がある」と述べた。

■ 財界は「引き上げよりも安定化」

 財界は、最低賃金が過去14年間(2000〜2013年)年平均8%に達するほど持続的に上がっており、「労働者の最低生計保障」という政策目標はすでに達成されたと主張している。企業の最低賃金負担が過度に増え、これからは引き上げではなく、「安定化」しなければならないという主張だ。

 経営界はまだ今年の最低賃金引き上げ案を具体的な数値として出していない。ただし、韓国経営者総協会(経総)は5日、全国の会員社に送った「2015年経営界賃金調整勧告」で、今年適正賃金上昇率を1.6%(名目ベース)で提示した。最低賃金安定論と賃金調整勧告からして、今年も最低賃金「凍結」を打ち出す公算が大きい。

 経総は「現行の最低賃金の相対的な水準」を測る基準として労働界が掲げる「5人以上事業所の常用労働者の平均賃金」という指標は、便宜的な物差しに過ぎないと主張する。その代わりに財界が最低賃金の議論・決定の基礎とする相対的な基準は、「1人以上の事業所全体労働者の中位所得値」だ。これに基づいて計算すれば、現行の最低賃金はすでに中位所得値以上の水準に達したというのが財界の論理だ。キム・ドンウク経営者総協会企画広報本部長は「国際労働機関(ILO)が提示する最低賃金の客観的基準はない。労働界が『平均賃金』を恣意的基準として提示したことに対し、経済人総連は消極的で『中位賃金』を掲げているだけだ」と述べた。

 経総は労働界の市販労賃単価適用の主張に対して、「企業に別の負担を負わせること」だとし、議論の対象となること自体に反対している。

チョン・ジョンフィ、イ・セヨン、キム・ギョンウク、チョ・ギェワン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: 2015.03.12 20:02

https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/682038.html 訳H.J

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