ボイラーなど発電用設備を生産する中堅企業であるK社は、今年に入り予期しない資金難に直面した。昨年10月にある大手建設会社が受注したアルジェリア火力発電所2機にボイラーを納品する契約を結んで、材料の購入などに200億ウォン(約21億1640万円,1円=約9ウォン)を先に費やしていた。しかし、大企業が支給期限の昨年末までに前金130億ウォン(約14億556万円)を支給せず、1カ月以上延期したことで困難に陥った。
その大企業は、「K社とアルジェリア政府との間の合弁企業設立が遅れており、工事に支障をきたす危険性があるからだ」と主張した。K社は昨年4月にアルジェリア政府とボイラー関連の合弁会社を設立し、技術移転、従業員教育などを行うことで同意した。その代り、アルジェリア政府が発注する発電所に入るボイラーを3年間独占供給することにした。K社は「契約書には合弁企業の関連事項が一言も書かれていない。契約書にない内容を理由に前金を支給しないのは不公正行為」だと抗弁した。さらに、大企業は既に発注者であるアルジェリアからは前金をも受け取った状態だった。最近その大企業はやっと前金を支払ったが、40日以上の遅延利息は支給しなかった。
浦項(ポハン)で鉄鋼製品包装材を生産する中小企業であるN社は昨年夏以降とんでもない出来事を経験した。ポスコ系列会社で主な取引先のポスコエムテックが、N社の大株主であるキム氏に会社の経営権を渡すように要求したのである。キム氏は数カ月間抵抗したが、結局昨年エムテック側の要求を受け入れた。エムテックに睨まれたら、どうせ事業運営も難しいからだ。エムテックの横暴は今年も続いた。昨年2月に結んだ「5年間の長期供給契約」を解除しようという圧迫が始まった。N社が難色を示すとエムテックは取引停止、単価引き下げなどで脅した。
エムテックは、これに対して「契約破棄を要求したのではなく、単価と数量の調整交渉中である。経営権の要求は事実無根だ」と釈明した。しかし、長期供給契約書には、5年間の総供給額が1442億ウォン(約156億円)であり、月3回以上納期遅れなどの理由以外で契約の解除ができなくなっている。また、昨年末エムテックの要求に応じてN社の大株主とエムテックの元幹部の間ではすでに「経営権引き継ぎのための合意覚書」が締結された事実も確認された。ポスコの元幹部は「オーナーもおらず、国民の企業と呼ばれるポスコの系列会社でさえ『甲(強者)の横暴』を振るったら、中小企業の立場がないのではないか」と述べた。
契約書にもない内容を理由に
前金130億支給せず
いきなり経営権要求
「甲の横暴」に止まらないが
不公正下請け3倍損害賠償制など
制度だけ導入、執行支援には後手
新しい制度10個のうち3個だけ実績
甲の横暴から乙(弱者)を保護するための公正な取引秩序の確立は経済民主化の核心だ。公正取引委員会の今年の大統領業務報告でも大企業と中小企業間の不公正な取引慣行の改善を最優先課題として提示された。大企業もこれまで先を争って相互協力を強調してきた。しかし、上の事例が示しているように、いくつかの改善の兆しはあるものの、まだ道のりは長いとの指摘が多い。これは、公正取引委員会が最近発表した現場の実態点検でも表れている。中小企業1416カ所のうち、昨年不当な単価引き下げなどの4大不公正下請け行為を経験した企業が114箇所(8%)に達する。大企業の報復を恐れ申告もできない現実を考えると、実際の経験率は数倍多いと予想される。
このように甲の横暴が後を絶たないのは、中小企業との共存と公正な取引の秩序遵守が大企業の経営哲学で確固に根付いていないことも大きいが、朴槿恵(パク・クネ)政権が経済活性化を理由に大統領選挙公約である経済民主化を後回しにしてしまったのが決定的な要因として挙げられる。朴大統領は、大統領選挙以前までは経済を活性化するためにも、経済民主化を推進しなければならないと力説した。 「成長の果実が一部の階層に集中され、二極化が深刻になっており、成長の潜在力を損なわれている。経済の持続的な発展のためにも経済民主化に向けて経済を建て直さなければならない」(2012年7月の大統領選挙出馬宣言)。しかし、発足6カ月にもならないうちに公約を放棄した。経済改革研究所のカン・ジョンミン研究員は「朴大統領は2013年11月以降のスピーチでは一度も経済民主化という言葉を使わなかった」と指摘した。
経済民主化の主務省庁である公正取引委員会が自らの役割をあまり果たしていないと言われるのも、このような状況と無関係でないという指摘もある。政府は、過去2年間、経済民主化関連諸制度を導入した。財閥総帥一家の不当利得提供禁止や新規循環出資禁止、不当下請け行為に対する3倍損害賠償制拡大などが代表的な例だ。公正取引委員会は、業務量の増加に合わせて、少なくとも2〜3課の組織拡大を要請したが、最終的に失敗に終わった。公正取引委員会の幹部は、「業務が大幅に増えたにもかかわらず、人員を凍結したことは、事実上、法執行意志がないから」だと話した。実際、2013年の年末以降、大企業と中小企業間の不公正取引の改善のために新たに導入された10個の制度の中で、制裁の実績がある分野は3つにすぎない。
朴大統領は、昨年の年頭記者会見で「経済革新3カ年計画」が実現すれば、3年後に潜在成長率4%、1人当たりの国民所得4万ドル時代を目の前にし、雇用率70%を達成すると豪語した。しかし、経済民主化の失踪とともに「乙の涙」は続いており、経済の活性化も「空念仏」になっている。
韓国語原文入力: 2015.02.25 19:57