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李明博回顧録の「北朝鮮100億ドル要求」、首脳会談の条件ではなかった

登録:2015-02-03 01:05 修正:2015-02-03 07:45
対北消息筋「国家開発銀行の設立に
国際的な投資誘致に協力してほしいという意味」

「回顧録」の主張に反論
李前大統領側の主張「北朝鮮への無理解」のせいかも

李明博前大統領の回顧録『大統領の時間』。 RHコリア提供 //ハンギョレ新聞社

 李明博(イ・ミョンバク)前大統領の回顧録『大統領の時間』で南北関係と外交秘話が詳細に公開されたことに対する批判の高まりを受け、李前大統領側が弁明する過程で歪曲に近い一方的な主張を展開している。

 李前大統領の回顧録の執筆を総括したキム・ドゥウ前大統領府広報首席秘書官は、2日KBS(韓国放送)ラジオに出演し、南北首脳会談をなぜ行わなかったかという質問に、「(首脳会談の条件に北朝鮮が)100億ドルという巨額を要求しており、不渡りが出たら、そのまま国民の税金で埋め合わせしなければならないが、もしそうだったら今頃聴聞会に出席したり、特検を受けなければならかっただろう」と主張した。回顧録には、2009年秋、北朝鮮が首脳会談の条件に国家開発銀行設立資本金100億ドルを要求したというふうに書かれている。キム前首席が言及したのもこの部分だと思われる。

 しかし、キム前首席の主張や李前大統領の回顧録は、(この内容を)前後の文脈なしで伝えることで、歪曲に近いものだと専門家たちは指摘する。当時の交渉過程を熟知しているある対北消息筋は2日、ハンギョレとの通話で「北朝鮮は当時、韓国の産業銀行と似たような『国家開発銀行の設立に協力してほしい』と言った。しかし、首脳会談の前提条件ではなかった」と言い切った。この消息筋は「(大規模の資本金が必要な)銀行設立は、米国の助けなしでは(支援が)難しかったので、首脳会談が実現すると、国際的に(投資誘致に)協力するというふうに話がまとまった」とし「北朝鮮がそうような無理な要求を続けた場合、2011年まで首脳会談の議論が続けられなかっただろう」と述べた。

 2009年10月にシンガポールで対北朝鮮水面下の接触に参加したイム・テヒ元労働部長官も昨年2月に行った月刊誌とのインタビューで、当時噂されていた首脳会談への見返り説についての質問に、「北朝鮮がそのような要求をした場合(李明博前)大統領が交渉を許可するはずがないし、実際にキム・ヤンゴン(統一戦線)部長もそのような要求をしたことがない」と強く否定している。

 キム前首席の言葉や回顧録の内容は、北朝鮮交渉戦略に対する無知のためだという指摘もある。対北朝鮮交渉に深く関与した政府関係者は、「北朝鮮は、初期の議題の交渉過程では要求のレベルを最大値に高めてから大幅に譲歩する戦略を駆使するのに比べ、韓国側は目標達成に対する世論の負担のため、最初から適正値をやや上回るレベルで要求する方」だと述べた。北朝鮮が初期に出した最大値の要求レベルをありのままに交渉案として理解したこと自体が、李明博政権の北朝鮮に対する無理解を示しているということだ。

 それと共に、北朝鮮が支援を要請したトウモロコシ10万トン、コメ40万トン、肥料30万トンなども、韓国側の要求事項である拉致被害者や国軍捕虜の故郷への訪問など「交換条件」として議論されたものだと消息筋は強調した。したがって、北朝鮮の要求は、首脳会談の前提条件というよりは、首脳会談の議題調整過程の一環だったというのが彼らの説明だ。

 また、回顧録では、2011年5月、金正日(キム・ジョンイル)国防委員長の訪中を「金正恩(キム・ジョンウン、現労働党第1書記)単独訪中」と勘違いしていたが、中国外交部に知らせてもらってやっと分かったことや、同年12月に金正日元国防委員長の死亡を51時間30分の間全く把握できなかったことなど、李明博政権の対北朝鮮情報能力の乏しさに関する部分は抜けている。

 このため、李明博政権の関係者たちが自分たちの恥部は隠したまま、北朝鮮の無理な要求だけ浮き彫りにさせたのは、南北関係の改善を模索している朴槿恵政権の足を引っ張るためのものではないかという解釈まで出ている。

イ・ヨンイン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015.02.02 20:21

https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/676517.html  訳H.J

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