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李明博前大統領回顧録に公務上秘密漏洩の疑い

登録:2015-02-02 10:43 修正:2015-02-02 10:57
回顧録執筆時に大統領記録物を複数閲覧
回顧録『大統領の時間』を刊行し大きな波紋を呼んだ李明博前大統領がサイパン旅行を終え30日夕、仁川空港を通して帰国し車両に乗り込もうとしている。仁川/キム・ソングァン記者 //ハンギョレ新聞社

元大統領府広報首席の発言から明らかに
外交当事者の発言引用など記録物法違反の可能性

 李明博(イ・ミョンバク)前大統領と参謀が回顧録『大統領の時間』を執筆する過程で、大統領記録館に保管される大統領記録物を閲覧し利用したと李前大統領の参謀が明らかにした。李前大統領側はこの行為に違法性はないと言うが、刑法の公務上秘密漏洩と大統領記録物管理法違反に当たる可能性がある。

 李前大統領の回顧録執筆を総括したキム・ドゥウ元大統領府広報首席は1日、ハンギョレとの通話で「(回顧録執筆過程で)大統領が委任した人物が大統領記録館に行き大統領記録物を数回閲覧したと理解している」と明らかにした。キム元首席は「基本的には大統領と参謀の記憶やメモもある」と説明するなかでこう話した。回顧録に出る数値が詳細であるうえ、外国首脳や北側関係者の発言が直接引用されたという指摘に対しキム元首席は、「参謀の記憶や当時同席した人たちの話を総合して書かれたが、正確な内容は大統領記録館に行って問い合わせたと理解している」と付け加えた。

 キム元首席の発言は主な部分が大統領記録物に基づき書かれたことを示唆しており、内容公開の不適切性と共に不法性の問題も呼び起こすものと思われる。李前大統領側は正確にどの部分を執筆に利用したのか、引用した部分が大統領指定記録物に分類された資料であるかは明らかにしなかった。

 だが、大統領記録物関連の専門家の間では、李前大統領側が非公開対象である大統領指定記録物から内容の相当部分を引用した可能性が高いと見ている。大統領記録物管理法は「軍事、外交、統一に関する秘密記録物を公開する場合、国家安全保障に重大な危険を招くことになる記録物」などを大統領指定記録物として分類し、長い場合は15~30年の保護期間を設け非公開にさせることができる。ただし、この法律は前大統領または代理人には内容を閲覧できるようにした。その場合にも原則的に内容の漏洩を禁止するが、その内容が秘密でない場合に限り公開できるようにしている。これを違反すれば3年以下の懲役や禁固または7年以下の資格停止に処することができる。

■外交・南北関係など当事者発言の引用は秘密漏洩罪に抵触

 李前大統領は外交・南北関係など敏感な分野の当事者発言を直接引用して書いた。著書の第13章「韓中関係の質的変化」には、2012年1月に中国の釣魚台で行われた当時の温家宝首相との会談場面が出てくる。李前大統領が温家宝に「金正恩(キム・ジョンウン)も金正日(キム・ジョンイル)のように死ぬまで執権するというのに私たちに耐え忍ぶ時間があるのか」と問うと、温家宝は「歴史の道理としてそうなるでしょうか」と答えたと書いた。

30年後に公開するのが正常
大統領の職遂上で得た秘密
本に書けば刑法違反の可能性

李明博前大統領の回顧録『大統領の時間』の一部内容が28日公開された。この本は2月2日出版される。 RHコリア提供 //ハンギョレ新聞社

 「北朝鮮の首脳会談提案と天安(チョナン)艦・延坪島(ヨンピョンド)挑発」という題の15章では、2009年8月の金大中(キム・デジュン)元大統領弔問のため韓国に来て大統領府を訪問したキム・ギナム北朝鮮労働党書記などが南北関係や核問題でした発言を直接引用した。 南北首脳会談を何度も要求した北朝鮮が、その前提に要請したという米、肥料、とうもろこしの物量など、外交・南北関係当事者の発言が多数登場する。

 専門家の間では、「軍事、外交、統一」に関する秘密を理由に大統領指定記録物に分類された内容が本にそのまま載せられたとすれば、政治的責任だけでなく法的責任問題に飛び火すると考えられている。李前大統領が委任した人に大統領記録物を閲覧させたことも、大統領指定記録物に関する前職大統領の閲覧規定のためである可能性がある。

 透明社会のための情報公開センターのチョン・ジンハン所長は「李前大統領の委任を受け閲覧した人が大統領令である保安業務規定が定める秘密取り扱い認可権者であるのかも確認しなければならない」とした。 チョン所長は「李前大統領は秘密記録物をすべて指定記録物に指定しているが、大統領指定記録物には秘密記録物と秘密でない記録物が混ざっているため、指定記録物を閲覧する人も秘密取り扱い認可権者でなければならない」と付け加えた。また「退任して2年しかならない前職大統領が秘密に該当すると見られる懸案をあちこちで直接引用して書いたのは非常に不適切だ」とした。敏感な事案を素材にした首脳間の非公開対話などは合意の下で公開したり、秘密にして30年後に公開する場合が多いためだ。

 こうした内容は当時公開の場で確認され広く知られた内容でもないため、公務上秘密漏洩に当たるという指摘もある。ある検察関係者は「事案が発生した当時の議事録や談話などを通して公開された事実を除き知らされなかった内容は、当時も退任した今も公務上秘密に該当する。これを回顧録に書いた行為は公務上秘密漏洩」と話した。参与政府(盧武鉉政権)で大統領府記録管理を担当したイ・ヨンナム韓神大学教授も「大統領の職務上で得た秘密を本に書けば刑法の公務上秘密漏洩罪の他、大統領記録物管理法違反や公共記録物管理法の秘密漏洩に該当することもある」とした。

 今回の事案が捜査対象になる場合、回顧録内容に大統領記録物が具体的にどう反映されたのか、そうした内容が別途の秘密記録物と指定されたり事実上の秘密とみなすことができるのかが争点になるものと思われる。キム・ドゥウ元首席はこの重大な課題に対し「法違反事項がないよう執筆作業をしたと考える」と話した。

キム・キュナム記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015.02.02 00:59

https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/676368.html?_fr=mt1 訳Y.B

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