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韓国政府が公共部門雇用を「1年契約」に、非正規問題へ悪影響

登録:2015-02-02 22:40 修正:2015-02-03 07:51
英語講師・訪問看護師など
常時継続業務なのに
解雇の危機繰り返す状況を放置
民主労総関係者が昨年12月29日、ソウル世宗路の政府ソウル庁舎前の非正規雇用の使用期間の延長などに反対する記者会見を開いている。キム・ギョンホ先任記者 //ハンギョレ新聞社

 政府が国民利便性のため教育や福祉などの公共サービスを拡大する過程で、地方自治体の市・道教育庁などが非正規労働者を大量雇用するよう促しておきながら、彼らに対する雇用責任には知らぬ顔をしたことにより、大量解雇の危機が繰り返されている。公共サービスの拡大に先立ち、政府はその業務を任される労働者の安定的な雇用対策を考えるべきだとする指摘がされている。

 全羅北道地域の小・中学校で正規の授業時間に英会話を教えるイ氏など、英語担当講師(英語講師)4人は先月30日、「雇用不安を解消してほしい」と全北教育庁の屋上に上がってまる一日“高空籠城”をした。この高空籠城は、今年の1学期からは1週間に15時間以上の授業時間を確保できない英語講師は採用しないように、教育庁が学校に指示したことに対する抗議だった。彼らは1年単位の契約なのに、教育委員会の指示が施行されれば、現在約140人の全北地域の英語講師のうち110人ほど(80%)が職を失うことになるとし、座り込みを行った。

 彼らの所属する民主労総公共運輸労組全国教育公務職本部は2日、「『雇用不安がないようにする』という全北教育庁からの確約を得て座り込みを解除した」とし「全国的に今年の1学期に解雇される英語専門講師の数が最小126名から最大397名に達すると予想される」と明らかにした。

 政府は2009年から彼らのような英語講師を学校現場に投入した。 2008年の初め、李明博(イ・ミョンバク)政権発足を控えて構成された大統領職引継ぎ委員会のイ・ギョンスク委員長が「アリンズィ(オレンジのネイティブ式の発音)」と発音させる問題が議論を呼ぶ中で英語没入教育などを唱え、読み取り・書き込み中心の学校教育英語学習を、聞く・話す中心へと転換して英語公教育の実用性を向上させることで、一般家庭の過度の私教育費を削減するという政策目標に沿ったものである。

 政府の説明通りなら、英語講師は学校現場で常時的に持続すべき業務なのに、政府は通常の教師定員などの問題を理由に1年間の短期契約で労働者を採用して今まで維持してきた。英語担当講師は全国的に5400人に達する。

 このように政府が常時継続的な公共サービスの拡大を掲げて、非正規労働者を大量に採用してから、その労働者の雇用安定には目そらとする問題は、福祉の分野でも行われている。全国の保健所に所属し、一人暮らしの高齢者や低所得層家庭を訪問し、医療・健康相談や、簡単な診療を行いながらも1年の短期契約職で働いてきた約2500人の訪問看護師も昨年末、各自治体が無期契約職化する代わりに、「時間制任期制公務員」などの変形された形態の非正規労働者として雇用する方針を決めたことで、解雇大乱の危機に追い込まれている。訪問看護師は全国的に5000人にのぼる。

 保健福祉部は、訪問看護師事業を開始した2007年3月末に出したプレスリリースで、「(「訪問保健所」事業で)国は国民体感度が高い保健医療サービスを提供することになるだろう」とし「医療の死角地帯に置かれた国民を積極的に発掘し、体系的に管理することにより、脳卒中、認知症などの慢性疾患の合併症を早期に予防し、国民の健康レベルを向上させるだけでなく、国民医療費を削減するために寄与するだろう」と大々的に宣伝していた。

 このような政策には共通点がいくつかある。まず、政府が2年以上雇用する期間制(契約)の労働者は正社員に転換するようにした「期間制および短時間勤労者保護などに関する法律」(期間制法)の期間制限の例外条項を設け、公共サービス労働者の雇用不安を長期化している部分である(表参照)。訪問看護師は、事業が5年8カ月ほど続いた2012年の末までには法律上期間制限の例外規定である「政府の福祉政策・失業対策などにより仕事を提供している場合」に見なし、毎年1年単位で契約を更新できるようにしていたが、途中で常時継続業務であることを認めて再び期間制限の適用対象になった。英語講師の場合も似ている。政府は2009年にこの事業を始めたときから、小中教育法施行令を変え、英語講師の場合は最大4年までの契約の更新できるようにした。

中央政府は、彼らを無期契約職化するという約束を守っていない。昨年末、各自治体が雇用してから2年になった訪問看護師たちを大挙解雇した後、新規採用を行った際にも、「彼らの雇用主体は自治体長」と手をこまねいて見ているだけだった。英語講師も2009年、市・道教育監が求人を出す時は、「定年62歳」などを掲げ、まるで無期契約職になれるかのように採用しておいて、これまで央政府や教育長の両方とも知らん顔をしている状況である。

 より大きな問題は、中央政府が違法の疑いがある状況を放置したり、事実上助長している側面である。訪問看護師の中には事業初年度から同じ保健所で1年間の契約を8回更新し、英語講師にも同じ学校で勤務を続け労働契約を6回更新して働いてきた労働者が相当数にのぼる。英語講師と訪問看護師の両方とも2013年1月以前から2年以上働いてきた多くの労働者は、期間制法を適用してすでに同じ機関に正社員として雇用されたもの(雇用擬制)と看做されなければならないのに、政府が不法を放置しているわけだ。労働委員会と裁判所は一貫して、期間制労働者が雇用契約期間中にたとえ新規採用手続きを踏んだとしても、同じ事業所で長期間中断せずに働いていた場合には、期間制限2年を適用して少なくとも無期契約職などに転換しなければならないという判断を示している。

 政府が彼らの公共サービス労働者の雇用責任を自治体長や教育長に擦り付けてはならない理由は、過去の約束だけではない。何よりもこれらの事業には政府予算が投入されている。訪問看護師は中央政府と地方自治体が半分ずつ人件費を負担し、英語講師は全体の30%を中央政府が負担するだけでなく、自治体の予算のかなりの部分も、中央政府が与える地方財政交付金から出てくる。

 イ・ナムシン韓国非正規労働センター所長は、「公共部門全般に良い働き口を提供すべき政府が、公的サービスという名で悪い働き口を作って責任も負わず、民間部門に好ましくない信号を送っている」とし「政府が今でも公共部門が直接雇用する正社員化と予算配分などを考え直さなければならない」と指摘した。

チョン・ジョンフィ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015.02.02 20:31

https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/676523.html  訳H.J

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