「韓米同盟は、安全保障と経済、先端技術を包括する真の未来型戦略的包括同盟へと発展し、深化することになりました。韓米両国が共にウィンウィンとなる韓米同盟のルネサンスの扉が大きく開きました」。11月14日、李在明(イ・ジェミョン)大統領が韓米ファクトシート関連発表で示した立場だ。一部批判はあるが、日本やサウジアラビアなどの対米交渉と比較すると、李在明政権が関税および投資、安全保障、そして原子力分野で善戦したことは否定できないだろう。それだけ交渉環境が厳しかったという意味だ。
しかし、今回の交渉過程と結果を見守りながら、苦々しくも弱小国の悲哀を覚えざるを得なかった。韓国の安全保障と繁栄は米国の恩恵があったからこそ可能だったものであり、今度は豊かになった韓国が恩返しをする番だ、というドナルド・トランプ大統領の長年の所信が今回の交渉でそのまま表れていた。トランプ大統領の「遡及型取引主義」の発想に公正と共生の配慮など存在せず、互恵の仮面をかぶった「略奪的一方主義」が幅を利かせているという評価もある。これは、今回の交渉の主役の一人だったキム・ジョングァン産業通商部長官の自嘲的な嘆きによく表れている。「ここ(了解覚書)の内容のうち、公正な内容がどこにあるのか。米国は一銭も払わないのに5対5の収益配分というのが話になるか」。公正で慈愛に満ちた後見国である米国のイメージは見当たらない。
問題は安全保障における米国への過度な依存にある。これは韓国に限ったことではない。日本、サウジアラビア、さらには欧州諸国までも、米国の安全保障の傘のもとにいる構造的脆弱性から自由ではない。このような理由から、これまでタブー視されてきた「米国抜きの朝鮮半島」について語る人もいる。そのような構想が現実的に可能だろうか。
「米国抜きの朝鮮半島」は基本的に韓米同盟の破棄と在韓米軍の撤退を前提にする。これは、米国が朝鮮半島、ひいては東アジアで軍事的影響力行使を撤回することを意味する。国力に限界を感じた米国がMAGA勢力の主張どおり、「新モンロー主義」の旗印の下で南北米という西半球に対する地域覇権を集中的に構築する孤立政策を展開する時に可能な話だ。これは、米国が朝鮮半島と東アジアを中国の勢力圏に編入することを認めるという仮定に基づいている。南北間の敵対関係が解消され、朝鮮半島の平和が構築されて、南北が中立化路線を標榜する場合も、韓米同盟の終息と在韓米軍の撤退の可能性が見えてくるかもしれない。しかし、現実的にこの二つの可能性はいずれも極めて低いとみられる。米国の極端な孤立主義への旋回や、短期間に在韓米軍の撤退を正当化するほど、朝鮮半島平和体制の構築が容易ではなさそうだからだ。そのうえ、米中戦略競争の激化も否定的要因として働くだろう。
また、米国がオフショア・バランサー(offshore balancer)へと転じ、在韓米軍の撤退または大規模削減を模索し、対中けん制、バランシングなどの地域防衛の役割を韓国に一任する可能性もある。この場合、韓国の防衛は韓国が主導的に、地域の防衛は韓日のような米国の地域同盟が共同で担当し、米国はこれらに対する核の傘を含む拡大抑止と補完戦力を提供する構図だ。ジョン・ミアシャイマー教授など米国の主流の現実主義政治・外交学者たちが主張する見解だ。これまた、韓国に不安な安全保障構図をもたらす恐れがある。
最悪なのは、現在のような不安な現状維持だ。米国が韓米同盟と在韓米軍を維持する一方、過度な見返りを求めた場合、「米国抜きの朝鮮半島」や「オフショア・バランサー」への転換よりもさらに懸念すべき安全保障ジレンマを招きかねない。防衛費分担をきちんとしなければ在韓米軍を削減・撤退すると脅しをかけたり、韓国が望まない地域紛争に対する関与のリスクを高めるケースだ。韓国政府と事前に適切な協議もなく在韓米軍の役割を任意に調整したり、兵力と装備を恣意的に移動させたりする戦略的柔軟させ、韓国にとっては負担が大きくならざるを得ない。対米投資の履行が十分ではないとの理由で高関税を課す場合も、韓米同盟の根幹が大きく揺れることになるだろう。
「米国ありきの朝鮮半島」から来る戦略的不確実性に注目しなければならない理由がここにある。どう対応すべきだろうか。自主国防と戦略的自律性を高め、同盟の不確実性に備えなければならない。米国との同盟を基盤とする集団防衛体制を越える新たな多国間安保協力の地域秩序を積極的に模索しなければならない。また、開かれた地域主義と多国間貿易秩序を活性化させ、米国の経済的圧力を避ける現実的代案も用意しなければならない。究極的には、南北の敵対関係を解消し、陣営論理から抜け出したウィンウィンの地域共生秩序を作っていくのに、韓国政府が主導的な役割を果たさなければならない。