「身分証明書ちょっと見せていただけますか?」
先月初め、ソウル鍾路(チョンノ)3街で友人を待っていたキム氏(32)に警察官が身分証明書の提示を求めた。慌てたキム氏は身分証明書を渡しながら理由を尋ねた。警察は「周辺をうろうろしていたので、念のため訊いてみた」と答えた。身元照会を終えた警察は「感謝します」という言葉を残して立ち去った。キムさんは「思わず身分証明書を渡したけど、警察が去った後に『これが検問だな』と思った。所属も明かさず犯罪者扱いされたようで、気分が悪かった」と話した。
減少傾向にあった警察の検問が朴槿恵(パク・クネ)政権誕生後、毎年2倍ずつ増えている。 11日『ハンギョレ』が警察庁に情報公開を求めて入手した最近5年間の「携帯用身元照会機の使用状況」によると、携帯端末を通じて市民の身元や車両を照会した件数は、昨年2820万8383件に達した。李明博(イ・ミョンバク)政権の最後の年である2012年の1563万880件に比べ、倍近く増えた。
特に不特定の市民を対象とした不審検問の増加幅が大きい。携帯端末を利用した身元照会は、2012年323万8918件から2013年621万3650件に、昨年は再び1180万7970件で、毎年2倍近く増加した。成人4人のうち1人が不審検問を受けたことになる。携帯端末で車籍を照会した件数も2012年1239万1962件から昨年は1640万413件で増加傾向にある。
警察官職務執行法は不審検問を「挙動不審など、罪を犯したり、犯す可能性があると疑うべき相当な理由がある人を停止させ質問したり、所持品を検査」するものと規定している。市民は、不審検問を拒否することができる上に、任意同行要求も拒否できるが、警察の突然の要求に正当な権利を行使することは容易ではないのが現実だ。
2010年に携帯用身元照会機を使用した不審検問(1602万7707件)と車両照会(5599万7503件)はなんと7202万件に達した。これに反発した人権団体が不審検問反対キャンペーンを展開し、国家人権委員会も人権侵害の可能性を認めたことから、2012年5分の1の水準(1563万件)に急減した。 「実際の必要」より警察の利便性に応じて、検問件数が増減していたのである。
朴槿恵政権誕生後再び急激に不審検問が増加した理由について、専門家たちは「政権誕生後1〜2年目における集会の防止」を挙げた。イ・ホジュン西江大学法学専門大学院教授は「セウォル号沈没事件後、大統領府周辺で検問が集中的に行われた。特に大規模な集会の参加を防ごうとする目的で、「萎縮効果」を狙い不審検問を行う場合が多い。警察の言う犯罪予防効果は大きくないと思う」と述べた。実際携帯端末を利用し指名手配された起訴中止者を検挙した割合(照会数比)は、2012年に2.4%、2013年1.5%、昨年0.75%で毎年落ちている。
警察庁は、「照会統計は不審検問検索件数だけでなく、交通違反者、基礎秩序違反者、刑事事件の被疑者等に対する手配確認なども含まれている統計」と説明した。
韓国語原文入力:2015/01/11 20:39