「統合進歩党の一つ解散しても別にいいのでは」という世論もある。従北政党のような雰囲気、2012年の総選挙比例代表候補選定過程における不正選挙戦と暴力事態、イ・ソクキ議員の聞きなれない言葉と認識など、否定的なイメージがいくつも重ねられたせいだ。イ・ジョンヒ進歩党代表は11月25日、政党解散審判請求訴訟の最終弁論で大衆政党として進歩党の失敗を認めながらも、「しかし、失敗が強制的な解散の理由に成り得るのか」と反問した。
進歩党弁護団のイ・ジェファ弁護士(51)も「暴力事態などに失望して『あんな党は必要ない』と思われても仕方がない。しかし、それは進歩が反省し克服しなければならない。解散するかどうかは別の問題だ」と話した。イ弁護士は、法務部が昨年11月憲法裁判所に出した進歩党の政党解散審判請求訴訟を、「多様性と多元性が保障される民主主義へとつながるかどうかの分かれ道」に追い込んだ訴訟だと述べた。
80年代の時計で、2014年に裁断を下そうとする
進歩党は彼が「まったく見向きもしなかった」政党だった。新政治民主連合の党員である彼は、2012年の総選挙で民主党比例代表候補30番(21番まで当選)に入っていた。しかし、「あなたも従北の烙印を押されるかもしれない」と引き止められたにもかかわらず、彼は自ら進歩党の弁護を志願した。最近、ソウル瑞草洞(ソチョドン)の事務所で会った彼は「政府が(政党解散で)民主主義を守るといいながら、民主主義を攻撃している」と憂慮した。彼は最終弁論でも「思想と理念の領域に禁止区域を作ると、公論の場の片方が空欄のままでびっこをひくような社会になる。鳥が左右の翼に飛ぶよう民主主義は左から右まで、様々な思想と理念が共存するとき開花する」と述べ、憲法裁判所に棄却決定を求めた。憲法裁判所の最終的な判断は「イ・ソクキ議員内乱陰謀事件」に対する大法院(最高裁)の判決(来年2月ごろ)以降の来年上半期に行われるか、それより遅れる可能性もあるなど、(憲法裁判所の決定が下される時期についても)見通しが分かれている。
- 政府は(統合進歩党を)「1990年代の地下革命組織である民族民主革命党(民革党)の残存勢力が民主労働党を経て進歩党を掌握し、暴力革命で北朝鮮式の社会主義を追求する政党」だと主張する。ファン・キョアン法務部長官は、最後に、 「政党の仮面をかぶった癌のような存在」だと表現した。
=暴力革命を党から公式的に議論したか、実行した資料を出すように求めても、証拠が出てこない。少なくとも竹槍でも一本くらい出なければならないのではないか。 「イ・ソクキ事件」も2審で内乱陰謀については無罪判決が下された。政府は、1980年代に革命を目指していた人々(主体思想派)と国家保安法違反の前歴者たちが今でも全民抗争を夢見ると思っている。 80年代の時計で、2014年に裁断を下そうとしている。政党を作り選挙で政権を握ろうとうる人たちがなぜ(昔のまま何も)変わっていないと思うのか。頭を開けて思想検証でもしようというものだが、政府の今回の訴訟は、基本的なファクト(事実)のない3流小説のようだ。
- 政府によると、暴力革命という隠された目的があるというが。
=政府が政党解散の事例として挙げるドイツ社会主義帝国党(1952年解散)とドイツ共産党(1956年解散)もそれぞれナチス主義とマルクス・レーニン主義を標榜した。大衆政党は志すことを綱領の形として表明し活動する。 (金日成も使用される用語として)政府が問題視する「進歩的民主主義」の場合も、2003年から2011年までの党員との公開討論の末、綱領に入れた。何を隠すというのか。
- 政府は進歩党の前身である民主労働党の2009年執権戦略報告書に書かれた「抵抗権」という言葉が暴力革命の証だと言っている。
=報告書には「抵抗権と選挙闘争を正しく結合することによって政権を握る」と記載されている。抵抗権は暴力革命ではなく、大衆闘争のことをいう。どの政治勢力も力を得るために大衆組織と結合する。朴槿惠(パク・クネ)大統領もハンナラ党代表時代、私学法(無効化)闘争のために保守団体と結合して、大衆闘争を行ったのではないか。むしろ執権報告書は、ブラジルやベネズエラなどの「選挙」で政権を取った南米左派政権を、政権を握るためのモデルとしている。
「気に障る」「危険そうに見える」から解散しろ?
- 政府は、「今すぐマルクス・レーニン主義を実現しなくても、長期的に暴力革命を追求する恐れがある」とし、共産党を解散したドイツの事例を挙げて、進歩党も一応容共政府である自主的民主政府を立て大韓民国を破壊しようとする長期的な目的があるため、解散させるべきだと主張する。
=ドイツ共産党は解散された後、党を再建し活動を続けたが、ドイツ政府は再び解散審判請求をしなかった。民主主義という公論の場で(共産党が自然に)消えていくだろうという自信があったのだ。政府は今、自分の国を守る能力がないと自己卑下しているものであり、国民を不信しているのである。ファン長官は「アリの穴(進歩党)から大きな堤防が崩れる」と言ったが、今アリの穴を塞ごうとして、思想の多様性を栄養分に成長していく民主主義の土壌を荒廃化しようとするのではないか。
- こんな風に考える人もいるかもいれない。思想の自由も重要だが、北朝鮮式の社会主義を目指す隠された目的があるなら、頭を開けて確認し法の判断を受けなければならないと。
=思想と良心の自由は誰も制限することのできない無制限の権利だ。例えば、宗教的良心のため銃を執ることを拒否(徴集など兵役拒否)した場合、その部分は法律で制限することができるが、特定の宗教を信じること自体は誰にも止められないだろう。
- 「進歩党が解散されてもかまわない」と思う人も少なくない。今回の訴訟の意味をどう考えるのか。
=進歩党が違憲政党になると、進歩運動の歴史が否定されてしまう。民主労働党や進歩党出身の党員たちも違憲政党で活動したという烙印が押される。進歩政党と連帯した新政治連合にも影響があるだろう。民主労働党を支持した国民に対する冒涜でもある。憲法の精神である「自主・民主・統一」、臨時政府でも使っていた進歩的民主主義が、北朝鮮で使われているから違憲だという政府の主張は、私たちの祖先が培ってきた魂と解放後半世紀の間に形成されてきた歴史を踏みにじる反逆である。(これからは)民主、統一、進歩民主主義、民衆のような言葉を(堂々と)使えなくなるかもしれない。進歩政党は、既存の秩序の変化を目指しているため、主流の立場からすると常に危険に見え、使われている言葉も挑戦的に聞こえることもあるだろう。しかし、「気に障る」「危険そうに見える」という理由で解散させられりと、その社会は批判的政党のない全体主義になる。
「息子よ、やるべきことをやらないと歴史は作れない」
- 政党を解散させようとするのも問題だが、大衆政党として進歩党の問題を懸念する声もある。
= 「違憲ではない」という決定が出れば進歩党も自分たちの問題を告白して、改革に取り組まなければならない。以後、進歩再編過程に力を貸すつもりだ。
「従北弁護士」という烙印を押されるかもしれないと家族が心配する中、弁論を始めたこの1年を振り返って、最後に彼は息子の話を紹介した。 「息子に言いました。 『(従北烙印を恐れて弁論を)しなければ、自分が正しいと思うことはなに一つできない。短期的に損をしても、やるべきことをやらないと歴史は作れない』。息子が今年志願する大学に出した自己紹介書に私としたこの話を書いたみたいです」。