本文に移動

[ルポ]外部電力ゼロのパッシブハウスでエネルギー独立宣言

登録:2014-11-06 00:56 修正:2014-11-06 17:20
京畿道楊坪会賢里に建つエネルギー独立ハウス1号と2号。 左が1号、その前にある低層建物はエネルギー発電システムが設置された2つの家の温室だ。エネルギー独立研究所提供//ハンギョレ新聞社

太陽光エネルギーで冷暖房から調理・温水・照明まで
すべてのエネルギーを自給自足する楊坪エネルギー独立ハウス

 10月31日、冷たい雨が降り、京畿道楊平(ヤンピョン)郡 会賢(フェヒョン)里の昼の気温は10度まで下がったが、木で作られた家の中は暖かかった。 室内の温度計は24度を指していた。 同じく木で建てられたすぐ隣家では、二か月前に生まれた赤ん坊を抱いた母親のチェ・ミンギョンさん(38)が半袖で来客を迎えた。 この二軒の家は日光を受けて暖房と電気エネルギーを賄う太陽光住宅だ。 建築当初から化石燃料を使うボイラー施設を備えないのはもちろん、韓国電力のいかなる送電施設とも連結していない。 家主は韓国電力と契約していないこの家を「エネルギー独立ハウス」1号・2号と呼ぶ。

床に上水道管と熱線を敷き
夏は冷水が循環し熱を冷まし
冬は熱線が床を暖める
太陽光発電設置費用が安くなり
一般住宅建築でも現実化

 今まで建てられた多くの太陽光住宅は、韓国電力と電線で連結し、昼には太陽光発電を使い、夜に電気が不足すれば韓国電力の電気を使う方式だった。 ところがこのエネルギー独立ハウスは、暖房・冷房・調理・温水・換気・照明に必要なエネルギーをすべて自給自足している。 この住宅が建築的には熱をコントロールする密閉と断熱に優れたエネルギー住宅「パッシブハウス」として建てられたために可能になったことだ。 エネルギー独立ハウス1号と2号は、放送通信大学文化教養学科イ・ピルリョル教授が設計し、1号に住んでいるチェ・ウソク氏(43)はイ教授とともに自分でこの家を建てたエネルギー独立研究所の研究員だ。

 エネルギー独立ハウスの中にはボイラーや冷房調節装置の代わりに、換気と温度調節ができるスイッチが付いている。 日光を多く受けられる透明で大きな窓は、パッシブハウスであることが分かるようにする象徴のようなものだ。 チェ・ウソク氏の1号住宅の窓には新しい形のステッカーが貼られていた。 小鳥が透明で大きな窓に気づかずに度々ぶつかるため、窓ごとに‘バードセーバー’というステッカーを貼ったのだ。

 鷲が見守る窓の内側を覗いて見ると、温もりがある家の中は単純だ。 居間と台所、夫婦の作業空間を兼ねる66平方メートル(20坪)大の1階は、窓のない壁面は本で満たされている。 蔵書が多い夫婦は2階の寝室壁面も本で満たし、ベッドの下部と窓枠の下側も本箱にした。 家主は厚さ80ミリのどっしりした木が与える感じが好きで、家を建てる時に構造材として使う集成材で床を敷き詰めたが、そのため庭の石砂利を踏んで家に入り、1階の床を踏む感じが特別だ。

太陽光発電システムを備えるパッシブハウスとして建てられた家は、南東側に大きな窓を付けた。 窓はすべてドイツ産で、パッシブハウス建築規定に従い断熱材をいちいち手で合わせる方式で建てられた。エネルギー独立研究所提供//ハンギョレ新聞社

 チェ・ウソク氏の妹チェ・ミンギョン、ユ・ジュヒョン夫婦が暮す隣家の面積と構造も似ている。 妹夫婦は去年の春にこちらに引っ越してきて、二番目の子供を産んだ。 都心のアパートで暮していた時は、エアコンなしで過ごす夏など想像もできなかったが、暑い夏の真昼でも室内気温は26度を超えなかったと話した。 2号住宅は家主の好みで、やや高価格な壁材を使った。 床には上水道管と熱線が敷かれている。 夏は冷たい水が室内を循環して熱を冷まし、冬は電気を利用した熱線が床を暖める原理だ。

 庭の温室には両家の暖房と電力に責任を負う太陽エネルギー発電施設がある。 屋根に設置された太陽光を集める集光板が発電施設と連結されている。 冷蔵庫と洗濯機、テレビ、コンピュータ、そして電気暖炉まで普通家庭で使う電気製品はすべて備えたが、まだ不便を感じたことはない。 ただし梅雨時には洗濯をしないように、雨が降っている時には太陽光で作り出す電気も減ることを考え、水をじゃんじゃん使ったり洗濯機を回さないなど、自然に合わせて日常を調節する‘ひまわり生活’をする必要はあると話した。

 冬になれば電力必要量は急増するが、普通99平方メートル大の建物の暖房エネルギー需要は年間250キロワット時と計算するが、2つの住宅では12キロワット時を超えない。しっかり断熱し、熱を室内に戻す換気をするなど、パッシブハウスの建築原則をしっかり守っているためだ。 韓国でのパッシブハウス認証基準である年間暖房エネルギー需要量15キロワット時以下を充足する家は多くないと言う。

 エネルギー独立ハウスを設計したイ・ピルリョル教授は、ドイツのパッシブハウス(passivhausprojekte.de)ホームページに韓国のパッシブハウスとして登録された最初の建築物、慶尚北道栄養農村体験センターを設計した人だ。 彼は2011年には自身が暮すソウル鍾路(チョンノ)区 付岩(プアム)洞の住宅を改造して、エネルギー独立ハウス0号にした。 0号がエネルギー独立研究所の建物でありモデルハウスだとすれば、楊坪はエネルギー独立ハウスの実体であるわけだ。

 イ・ピルリョル教授は、エネルギー独立ハウスを作る際に設計費をまったく受け取らない代わりに、住宅のエネルギー使用量測定権といつでも誰にでも家を見せることができる見学権を持つ。楊坪の気温が10度だったある日の朝、彼は付岩洞で電力管理プログラムサイトであるbidgely.comを通じて2軒の家のエネルギー使用量を観察していた。市民団体エネルギー転換の代表を務めもしたイ教授は、2008年にオーストリアに渡りパッシブハウスのデザインを勉強し、現場経験をした。

「韓国に帰ってきた時、日本の福島原発事故が起きたのです。脱原発のための代案は何かを悩みました。 答は明らかだったんです。自分たちが韓国電力から抜け出せない限り、原発や密陽(ミリャン)送電塔からも抜け出すことはできないということでした」

 エネルギー独立ハウスは国家権力のように巨大な韓電権力や化石エネルギーから抜け出すために探した代案だ。 10年間で4分の1に下がった太陽光発電施設設置費やパッシブハウスの建築技術がエネルギー独立ハウスを現実化する元肥を与えた。 エネルギー独立ハウスは、このような家を多数、ひいては村共同体全体がエネルギーを生産する夢を見ている。

太陽光モジュールは屋根に斜めに設置するケースが多いが、この家は5度程度の傾きで垂直に近く設置した。 冬に雪が積もることに備えるためだ。エネルギー独立研究所提供//ハンギョレ新聞社

 密閉と喚起を重視するエネルギー独立ハウスは、基礎工事からして普通の住宅の二倍の厚さで作られる程なので建築費は高いが、エネルギー費用を減らす効果は大きいという。 1号と同等の面積の一戸建て住宅は、暖房、温水、電気費用を合わせて通常年間400万ウォン(約40万円)程度を払っていると推測される。 エネルギー独立ハウスが30年持つならば、ほとんど建築費に近いエネルギー費用を節減できる。40年ならエネルギーを節約した効果が建築費を越える。

 理想と現実が出会った地点でエネルギーハウスは長く持続する夢を見ている。黒く焦がした炭化木で作った1号で暮すチェ・ウソク氏は「炭化木は今は黒いが年月が経つほど銀色を帯びて遠くから見ればきらきら光るようになる。エネルギー独立ハウスもそうなるだろう」と話した。

楊坪/文・写真 ナム・ウンジュ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/specialsection/esc_section/663169.html 韓国語原文入力:2014/11/05 20:31
訳J.S(3363字)

関連記事