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現代自動車に新たな火種 正規職転換でなく新規採用で労使合意

登録:2014-08-20 21:31 修正:2014-08-21 07:40
社内下請けの不法派遣闘争に悪影響

会社側の不法派遣責任を追及できず
差別賃金など遡及分も受け取れなくなり
「現代自動車に免罪符与える内容で満ちている」
3の支部中、蔚山支部は合意に加わらず

 現代自動車社の会社側と社内下請け労働者である牙山(アサン)、全州(チョンジュ)の非正規職支部が18日に組合員の新規採用に合意したのに続き、19日には二つの非正規職支部が組合員総会を開いてこれを可決した。これにより11年続いてきた現代自動車不法派遣闘争が新しい転換点を迎えた。表面的には、不法派遣問題解決の糸口が用意されたように見える。

しかし中身を見れば、これまでの「不法派遣認定」及び「正規職転換」という社内下請け労働者たちの要求とは別物だ。現代自動車不法派遣闘争は、1997年の通貨危機以降に急速に拡大された不法派遣の解決策の試金石と見なされてきたという点で、今回の合意は労働界内部で論議を呼ぶとともに、後遺症を残さざるを得なくなった。

 今回の合意の性格を圧縮的に示しているのが「新規採用」だ。これは「正規職転換」とは本質的に違う。現代自動車社内下請け労働者たちの「正規職転換」要求は、現代自動車が自分たちを請負という形式を偽装して不法に派遣を受け入れたことを認定せよという意味が込められている。2003年に労組を作った人たちが、数百人の解雇と拘束にも屈せず11年間戦ってきた主要な理由の一つだ。正規職社員に転換されれば、雇用の安定性を得るだけでなく、これまで正規職労働者に比べて差別を受けてきた賃金差額などの返還も受け取ることになる。

 反面、「新規採用」であれば、元請である現代自動車が正規職労働者を新たに採用する際に、社内下請組合員に優先権を与えるという内容だ。したがって、不法派遣の責任所在を究明する根拠が消え、これまでの差別に対する補償も無効になってしまう。今回の合意に現代自動車の3つの工場のうち最大規模の蔚山(ウルサン)非正規職支部が加わらなかった一番の理由もここにある。

 とはいえ、現代自動車会社側と2か所の非正規職支部が合意したのは、双方の切羽詰った事情が作用したものとみられる。非正規職支部組合員1569人が現代車を相手に起こした勤労者地位確認訴訟の1審判決の予定日(21日または22日)が目前に迫っている点も圧迫要因だった。非正規職支部としては、判決で勝訴しても現代車が最高裁まで訴訟を引きずって行くことが明らかな状況で、今後さらに4~5年間闘争を続けることは容易でないと判断したものとみられる。それに、訴訟に参加した組合員のうち一部だけが勝って残りが敗訴した場合、労組内部に葛藤が生じる危険もある。

 現代自動車会社側も、判決で負けた場合に甘受しなければならない負担は相当なものだ。何よりも、裁判所の判決で大規模な不法派遣が確定すれば、現代自動車に社会的非難が殺到せざるを得ない。今回の合意で労使が互いに提起していた民事・刑事上の訴訟をすべて取り下げることにしたのも、このような荷を軽くするためのものだ。今回の合意には、新規採用に応じる組合員は1審判決後に訴訟を取り下げるという内容が盛り込まれている。

 しかし、現代自動車としては経済的負担を減らせる利点がある。勤労者地位確認訴訟が取り下げられれば、会社が支払わねばならない正規職との差別賃金など2800億ウォンあまりを節約できるというのが、蔚山非正規職支部の推算だ。

 今回の合意が現代自動車はもとより、不法派遣問題が浮き彫りになった他の事業場に及ぼす影響は小さくない。すでに、現代自動車の非正規職労組内部で葛藤が生じている。蔚山非正規職支部は声明を出して「今回の合意案は、現代自動車不法派遣に免罪符を与えようとする内容で満ちている。 蔚山支部はこれに対抗して闘争を継続する」と明らかにした。こんな理由から労働界内部では、窮迫した立場で止む無く合意案を受け入れた非正規職支部の選択に理解を示しながらも、土壇場で原則を無視して会社側と妥協したという批判の声が出ている。

 21・22日に予定された勤労者地位確認訴訟の1審判決公判が延期されるかもしれず、サムスン電子サービス協力会社の労働者1004人が昨年提起した同様の訴訟の結果に否定的な影響を及ぼしかねないという懸念も出ている。

 カトリック大学チョ・ドンムン教授は「憂慮していたことが現実になった」として「現代自動車の不法派遣問題は、韓国社会の不法派遣問題をどのように解くことができるかを占う風向計だった。今回の合意は正規職労組と会社側の談合に一部非正規職支部が投降した格好だ」と診断した。

 このような現実は、現代自動車の非正規職支部労働者に組合員資格を与えず、2000年代初めに社内下請け労働者を全雇用者の16%前後まで使用できるように会社側に同意するなど、非正規職問題に無関心な現代車支部に対する批判につながる。産別労組として交渉権を持っているにも関わらず今回の合意から抜けた金属労組はもちろん、労働組合の全国組織である全国民主労働組合総連盟(民主労総)も、このような批判から自由ではない。

 チョ教授は「間接雇用非正規職の問題と関連して、民主労総次元の戦略と方針がない。サムスン電子サービスの支部交渉に経総(韓国経営者総協会)が出てきたことからも分かるように、経営界は総資本の利益という観点で動いているのに、労働界は、個別事業場の不法派遣闘争に戦略がないという事実が明らかになった」と批判した。

チョン・ジョンフィ記者 symbio@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/society/labor/651918.html 韓国語原文入力:2014/08/19 21:24
訳A.K(2400字)

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