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「捜査権なき<真実和解委>は無力だった…セウォル号調査委がそうなってはならない」

登録:2014-07-18 17:26 修正:2014-07-19 06:16
法律専門家が見た“セウォル号調査委員会への捜査権付与問題”
「長官、こちらを見て下さい」 チョン・ジョンソプ新任安全行政部長官が17日午前、国会で開かれた制憲節慶祝式に出席するために、国会議事堂入口でセウォル号特別法制定要求のプラカードを持って示威を行っているセウォル号家族の前を通り過ぎるところ。 キム・ギョンホ記者 jijae@hani.co.kr

「特別検事も弁護士に検事資格を付与
セウォル号調査委でも
民間委員に捜査権を与えることは可能」

「国家全体の重大な問題には
別途の刑事手続きを設けることも可能」

 セウォル号惨事真相調査委員会(真相調査委)に捜査権・起訴権を付与する問題をめぐって、遺族と政界、与党と野党の対立が続いている。セヌリ党は「捜査権を付与すれば司法体系が毀損される」と主張するが、法律専門家たちの間からは、委員会に捜査権を付与しても憲法・法律に反することはないという反論が出ている。

■捜査権を与えることは許されないのか?

 「セウォル号特別法」立法タスクフォースのセヌリ党幹事であるホン・イルピョ議員は17日<ハンギョレ>との通話で「捜査では被疑者の人権を侵害する可能性もあるため、逮捕や家宅捜索など強制捜査の権限を持つ者の資格要件を法に定めている。それなのに民間調査委員に検事の地位を与えよというのは、法体系を揺さぶることであり法的に許されないことだ」と述べた。与党が真相調査委への捜査権・起訴権付与に反対する名分は“司法体系毀損”だ。

 しかし、イ・ホジュン西江(ソガン)大学法学専門大学院教授は「民間委員に捜査権を付与してはならないというのは憲法の原則ではない。 前例がなかっただけであって、法的に不可能ではない。特別検事(特検)制度も法律で弁護士に検事資格を付与するのだから、セウォル号特別法でも実質的に検事の地位を有する人が独立的な捜査をできるよう保障すればよい」と述べた。

 ソウル地域の裁判所のある部長判事は「立法者には特別法の形で別途の刑事手続きを設ける権限がある。刑事訴訟法違反という主張は話にならない。“この事件だけに特別な刑事手続きを設けて良いのか”という衡平上の問題を提起することはできようが、セウォル号惨事が全国家的問題だという国民的共感の中で、この問題を特別に処理するのは正当だと考える」と述べた。委員会に捜査権を与えても、令状審査などを通して結局は裁判官の統制を受けるのだから、法体系を壊すという主張は過度な主張だという指摘もある。

 被疑者に対する人権侵害の憂慮と関連してイ教授は「被疑者の人権保障は、捜査の主体が検事かどうかではなく刑事訴訟法の規定を守るか否かの問題だ。捜査手続きをきちんと守れば良いことだ」と述べた。ホン・ソンス淑明(スンミョン)女子大法学部教授も「セウォル号惨事は海洋警察など政府機関の過ちが捜査対象だが、公的役割をした人たちに対する捜査なのだから、一般市民を対象とする人権侵害問題をここで取り上げるのは適切でない」と指摘した。

 <セウォル号国民対策委>が作った「4・16特別法案」は真相調査委に捜査権・起訴権をともに付与することを決めた。ただ、法案に「検察総長に起訴を依頼することができる」として、起訴権を検察に付託できるよう余地を残した。

 しかし、与党案は遺族や市民団体などの案とは相当な距離がある。 セヌリ党は真相調査委の活動とは別に、既に議論されていた常設特別検事制を導入して捜査を任せるか、あるいは現職検事の中から特任検事を指名する案を提示している。

 新政治民主連合は、真相調査委が司法警察官を採用して海運法や船員法等の違反事件を調査させるべきだという立場だ。捜査権を与えると見ることはできるが、この場合、特別検事のように検事と同一の地位を付与するものではないので、真相調査委の立場と独立性は弱まらざるを得ない。捜査・起訴は特別検事が担当することにして、特別検事を遺族の推薦する人に任命するか、あるいは真相調査委員のうち弁護士資格のある人に特別検事の地位を付与する案なども、国会内外で議論されている。

■捜査権がなかった<真実和解委員会>の事例

 遺族と野党が捜査権付与を固守する理由は、真相調査委員会と同じような性格を持つ金大中(キム・デジュン)・盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府時代のいろいろな真実和解委員会の前轍を踏んではならないということだ。 当時、委員会の設立過程で捜査権付与の必要性が議論されたが、ハンナラ党(セヌリ党の前身)の反対で実現しなかった。

 <真実・和解のための過去事整理委員会>のキム・ヨンジン元調査官は、「警察庁などの機関が資料提出要請を拒否した場合、強制的に見る権限がなかった。国家情報院職員の中には、告訴すると言って脅迫した人もいた。機務司(国軍機務司令部)は非公式的に“人権侵害だ。ただではおかない”と言った」として、「捜査権があったなら、供述を拒否し、またはきちんと答えない人々に対して、効果的な対応ができたはずだ」と語った。

 委員会に付与した同行命令権も、実際には無用の長物だった。<疑問死真相究明委員会>のアン・ギョンホ元調査官は、BBK特検法の同行命令制について憲法裁判所が違憲決定をした事例を挙げ、「強制召喚するには結局、裁判所の令状が必要だ」と指摘した。ホン・ソンス教授は「例外的臨時機構に捜査権を付与するのは一般的に望ましいことではない」と述べながらも、「これまで調査対象機関が協力しないために調査が無力化された事例があまりにも多いので、窮余の策として、捜査権付与が必要なわけだ」と指摘した。

イ・ギョンミ、キム・ソンシク、イ・ユ・ジュヒョン記者 kmlee@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/647474.html 韓国語原文入力:2014/07/17 22:24
訳A.K(2512字)

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