2012年12月大統領選挙の直前、キム・ヨンパン(56)当時ソウル警察庁長官は真夜中に国家情報院職員キム・ハヨン氏のコメント選挙運動疑惑に関する中間捜査結果を発表させた。 キム前庁長は公職選挙法違反容疑で起訴されたが、1審に続き5日の控訴審でも無罪を宣告された。 検察が上告することはできるが、最高裁での審理は法律適用の誤りを調べる法律審なので、事実を巡り争う裁判は終わったわけだ。
当時に時間を戻してみよう。 ソウル警察庁はキム氏のノートパソコンから犯罪の端緒が出てきたにもかかわらず、捜査を進展させずに大統領候補テレビ討論の直後の夜11時、‘捜査したが疑いはなかった’と発表した。 必須であるサーバー調査も行わずにノートパソコンのハードディスクだけを調べて‘無嫌疑’を宣言した。 選挙に影響を与えようとする意図ではなければ説明のつかない行為だ。
だが、裁判所はこのような意図を読み出すことに無関心だった。 1審裁判所(裁判長 イ・ポムギュン)は、警察の主張を受け入れて次のように話した。 「政治介入の余地がある文は(キム氏が閲覧・作成・削除した) 2万件の内2~3件に過ぎなかった」、「サーバー押収捜索の必要性は感じられなかった。」端緒が一つでも捕えられれば捜査を継続するのが常識なのに、これを無視してサーバー押収捜索をしなかった理由には知らぬフリをした。
控訴審(裁判長 キム・ヨンビン)は「捜査結果の発表は朴槿恵(パク・クネ)候補に有利に作用した」としつつも「能動的・計画的行為はなく、選挙運動の意図は立証されなかった」と話した。 また、単純に国家情報院の選挙介入疑惑に関し発表した行為では、朴候補支持の意図が客観的に認定されないと話した。 ‘疑惑なし’の一言がどれほど大きな波紋を起こしたかは無視して、当時の状況と脈絡に目を瞑った論理だ。
虚しい結論が出てきた背景には検察の果たした役割も大きい。 1審は「公訴事実が粗雑で種々の矛盾がある」と指摘した。 控訴審も、1審が証拠を歪曲して解釈したと検察が主張したが、それが何なのかについて立証責任を果たさなかったと明らかにした。 検察と裁判所がお互いを恨む間にこういう結論が出てきたのでは、今後国家機関と公務員の政治的中立をどのように強制できるだろうか。
裁判所と検察の合同作品である‘キム・ヨンパン無罪’は、国家機関が特定候補を助けるために誤った発表をしても、候補を直接名指ししなければ処罰はできないという‘教訓’だけを残した。
イ・ギョンミ記者 kmlee@hani.co.kr