[訳注:4月27日に大統領府ホームページの自由掲示板に掲載されて大きな反響を読んだ文で、一日で40万件を超えるアクセスによ り一時ダウン、この文に共感するネチズンたちの書き込みも1000件あまり殺到した]
今まで多くの社会運動を支持してきたが、正直言って、大統領を批判したことはほとんどない。
しかし、初めて、そして今回だけは、その過ちを一つ一つ、明々白々に、突き詰めて問いたい。
今の大統領がこれ以上大統領であってはならない確かな理由を。
大統領という職責、難しいことは分かっている。誰も、大統領やれと言われたら容易にはできない。それで、大統領を簡単に批判できないという理由もあった。また、大統領辞任せよというスローガンは、あまりに安易で空虚でもあったからだ。
また、政府がいくら無能でも、市民たちがしっかりしてさえいれば、その社会を変えることができると信じたからだ。
しかし、今回、大統領は大統領として任務を遂行しなければならない極めて重要ないくつかを逃した。
第一に、大統領は自分が何をしなければならないかも分かっていなかった。
大統領が救助方法について頭を悩ます必要はない。
リーダーの役割は、適切な場所に責任を分配して、下にいる人たちがその中で最大限の力量を発揮できるようにし、下で問題が生じた場合、その責任を負うのが基本である。特に、下の人同士が調整がうまくいかず混乱が生じた場合、なによりも先ず、何としてでもこれに秩序を与える役割を果たさなければならない。
安全行政部の責任の下で問題が生じたら安全行政部が責任を負えばいい。 海洋水産部の責任下で問題が起きたら海洋水産部が責任を負えばよい。しかし、各省庁、軍、警察が集まっている状況で、責任の所管を問うことができずに混乱状態に陥ったとしたら、それはリーダーが自らの役目を果たせなかったということだ。私は、軍の最高統帥権者であり同時に全ての行政部を統率する権限のある人と言ったら、大韓民国でたった一人しか知らない。大統領だ。
大統領がやらねばならなかった事は、現場に駆けつけて傷ついた生存者を慰めるとか言って直接会うといった、そんなことではない。そんなことは一般人でもできることだ。
「救助が何故できないのか。最善を尽くして救助しなさい」 そんなことは誰でも言える。
「ちゃんとできなければ責任者は厳罰に処す」 そう叱り付けることは誰でもできる。大統領がすべきことはそれではない。
「中国人がわが国でどうしてショッピングが出来ないと言ってますか?」 大統領はそんなことを言うための職ではない。公認認証書は廃棄しなさいとか、現場にCCTV設置しなさいとか、そんなことを言うための職ではない。
一般人には行使できない莫大な権限を、大統領は行使することができた。だから大統領に責任があるのだ。
大統領? 細かいことはする必要ない。大統領は大統領しか出来ない事をするのだ。
うまくいかない問題の核心を把握して解決点を見出すこと、何が必要か尋ねること、普通にやってもいい事と最善を尽くさなければならない事とを区別し、最善を尽くしても駄目な場合に放棄する対象と、駄目でもできるようにしなければならない対象とを区別して提示し、最優先は何であるかを設定して、下の者が他のことにエネルギーを注がなくてもいいように自由にしてやること、費用の心配をしないように諸般の責任を引き受けてくれること。
映画現場のスタッフたちは、監督やPDの明確な要請さえあれば、どんなに困難なことも無理なことも、可能にする。 ただし、条件がある。困難なことを可能にするには当然コストがオーバーする。 このオーバーした諸費用に対する責任、それさえ誰かが責任をもってくれるならば、スタッフたちは、やる。
リーダーならば、困難なことを 無理であっても可能にしようとする時 下の者が費用のために躊躇する可能性があることぐらいは分かっている。
それが救助作業であれ何であれ、手段と方法を選ばずにやらなければならないとしたら、無条件に金がかかる。途方もない金が。
もし人々が費用のために躊躇する可能性があるという事実すら“知らなかったとすれば”
それは大統領が本当に誰かの末端職員だったこともなく、費用のために悩んで悩んで考えたこともないという話だ。大概の中小企業の社長でも知っていることだ。
もしリーダーが、お前、これは死ぬ覚悟でやれ。やり遂げられなければ厳罰に処すると脅迫するばかりで費用に責任ももってくれず、駄目だった場合に自分は責任を避けようとするならば、いったい誰がそれをやれますか?
人を救助するのに金が問題かと言うけれども、実際にその行動者になれば話は違ってくる。流速を弱めるためにタンカーを引っ張って来る? やりたくても、一介の管理者がその費用に責任を負うことができようか? しかし、誰かがそうした問題を引き受けてくれるならば、状況は変わってくる。
「費用問題は後で考える。もしも本当に費用が多く発生した場合は私が責任を持つ。」
これは、どんな民間人も管理者も国務総理でも、容易にできないことだ。
力のない市民たちすら罪責感を感じた。できるのに、やらなかったこと、そして、まったく他人事のような人たちでさえ、小さなことでも何ができただろうかと悩んだ。
しかし、その多くの人たちを指揮し動かすことのできたはずの、問題点を把握して直接是正できたはずの、海外に援助要請をするなり、人材を集めるなり、海洋関連の財閥会長らに何か要請するなり、一般人にはできない、その多くのことができたはずの大統領は、救助のためにどんな事を悩んだのか?
第二に、人を救うために全く何の役にも立たない政府は要らない。
大統領ははっきりと「救助に最善を尽くせ」と指示した。
しかしなぜ指揮者たちは、“救助に最善を尽く”さなかったのだろう?
そういうことが、1度や2度の命令で成るだろうか?
天気のよかった一日目にガイドライン三本しか設置できなかったなら、これでは子どもたちがみんな死んでしまう、絶対に救出できないと判断して、思い切って方法を変えることを夜通し悩む人が、このリーダーの下にはなぜ一人もいなかったのか? 命懸けで水中で作業していた潜水士、直接飛び込んだ末端の海洋警察官らの他に、この指揮部にはなぜ、救助に懸命になる人がそんなにもいなかったのか?
下の人たちは、平素リーダーがもっている価値観に影響を受ける。緊迫した状況では、普段リーダーが良しとしていた性向に沿って行動するようになっている。それは普段リーダーが、どんな時に誉め、どんな時に怒鳴りつけ、どんな時に機嫌が悪かったかによって異なる。
もしリーダーが平素から人の命を最優先の価値としていた人だったなら、
下の人たちは、どんな状況であっても、何も言わなくても、それを最優先に置いて行動する。
双龍(サンヨン)車事態の犠牲者たちが焼香所を作った時、朴槿惠(パク・クネ)に忠誠を尽くすと言った中区(チュング)区長は、彼らを一気に追い出し、大学生が授業料のために死んでいっても、誰もそれを、緊急なことと感じたこともなく、みんなが生きるよりは一部だけが生きる方が効率がよく、自殺者が増えても、福祉はポピュリズムに過ぎず、 三母娘の死を招いた制度を廃止するのに、いまだに大統領の率いる党はあんなにもためらっている。
死を経験した人たちを、“むずかっている”くらいに扱い、死にそうだ、一緒に生きようと言う人たちには放水車を動員した。
ここでは一度も、人が、人の命が、優先だったことはなかった。
まだ彼らには、人が死ぬことより重要なことが多く、大義の方が多かった。
「人はぞんざいに扱ってもかまわない」は、このシステムの暗黙的了解だった。
普段、システムがこのような方向に動いていた状況で、こんな時に大統領が「救助に最善を尽くせ」と指示を下せば、
下の人たちは、大統領が本気で子供たちの命が心配でそんな指示を下したのか、それとも「救助に最善を尽くせ」と指示したという事実を国民に見せなさいという意味なのか、 政府の成果を見せるために救助をせよという意味なのか、 世論が悪くならないようによく救助をせよという話なのか、
分からなくなってしまう。
「大統領が、深刻に心配しておられます」対策本部室で誰かが長官に伝えた。 すると、この言葉が「子供たちの安否と遺族たちの痛みを案じているという」ことなのか、「民心が相当悪くなっているため、その座が危うくなることを案じているという」ことなのか、下の人たちはこんがらかってしまう。
代わりに、指示がなくてもてきぱきと動いたのは 救助活動を止めて儀典に最善を尽くした人たちいち早く大統領が子供を励ます場面をセットした人たち大統領はよくやった。他の人たちが問題だという社説を書くことを知っていた人たち。
いち早く不利なニュースを流言飛語だとして統制することを知っていた人たち。
救助に最善を尽くしていると見られるよう骨を折った人たち。
船長と企業にすべての責任を転嫁する方向で世論誘導をした人たちと呼ぶが早いか、一斉に並んで行進を阻んだ鎮圧警察だ。
それは、彼らの平素のマニュアルだったからだ。彼らは平素、リーダーが何を重要視するかを知っていて、それに向けて動いただけだ。そして、そこにエネルギーを注ごうとして本当に重要なことを逃した。
私が選挙の時、朴槿惠に投票しなかった理由ははっきりしている。
彼女が親日派だからでも、保守党だからでも、独裁者の娘だからでもなかった。
彼女がナムイルタン事態の時に(訳注:人民革命党事件が問題になった時に、ではないかと思われる)見せた反応、自分の父親のために8人の人が無念に死んだのだが、そのことに対して一抹の罪責感も気の毒に思う気持ちも持っていない姿を見たからだ。
人の命について、それほどまでに軽く考える人ならば、 大統領に選んではいけないという、その理由一つのためだった。
リーダーの過ちはここにある。
下の人たちに 平素から人の命が最優先ではないという 誤った議題を設定した責任。
第三に、責任を負わない大統領は要らない。
大統領という地位がそれほどに難しい理由は、責任が重いからだ。莫大な権限と高い給料、高級な食事と自家用飛行機と警護員と、そのすべての待遇はそれが[責任に対する対価]だからだ。
誰も責任を負わない組織では、どんな仕事もうまくいきはしない。
リーダーが責任を負わない所で、誰がどうやって責任の負い方を知ろうか?
しなければならないことを 一つ一つ教えてあげなければならない大統領は要らない。
人を救うのに何の役にも立たない大統領は要らない。
決定的に、 責任を負うことを知らない大統領は必要ない。
付け足し:
セウォル号の船長と船員たちが持っているという宗教の特徴はただ一度の悔い改めで既に救いを受けたために “いくら過ちを犯しても罪責感を感じないこと”だという。
これは極めて危険なことだ。
罪悪感を感じることもできない大統領、彼らと決して違わない。
人について心を痛めることもできない大統領は、いっそう必要ない。
心から大統領の下野を望む。
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‘あなたが大統領であってはいけない理由’大統領府掲示板に再び上げる
‘あなたが大統領であってはいけない理由’というタイトルの文で、オンラインで大きな話題を集めたパク・ソンミ(35)さんが大統領府自由掲示板に直接文を載せた。
28日午後6時23分頃‘‘あなたが大統領であってはいけない理由’を再び上げます’というタイトルの文が大統領府自由掲示板に上がってきた。 文の原作者パク氏が直接上げたものだ。
パク氏は「元々の作者です」と明らかにした後、「フェイスブックの友人のどなたかが苦々しい気持ちで大統領に見るようにとこの文を大統領府掲示板に転載されたようです。 文は私が書きましたが、勇気はその方が出して下さったようです」と書いた。 パク氏は続けて「負担に感じたのか、その方が自主的に削除をしたので、大統領府で文が削除されたことに対して他意や誤解は持たれないようお願いします」と述べた。
パク氏は去る27日に大統領府掲示板に上げられた該当の文に市民がつけたコメント212個も共に上げた。 コメントの量が多くて、分割して‘あなたが大統領であってはいけない理由コメント目録2’という別途の掲示文をもう一つ上げた。 パク氏はこの日午後<ハンギョレ>との電話インタビューで「市民が書いたコメントの中に珠玉のような文が多かった。 事実、大統領は(仕事をきちんとできなかった人々を)みな厳罰に処すと言ったが、大統領の上には国民しかいない。 国民がこのように大統領府に自身の要求を明らかにするのは当然のことなのに、皆用心深くなっている。 それで(掲示板に)堂々と言うべき事は言う人々に一層感謝する」と明らかにしたことがある。
キム・ヒョシル記者 trans@hani.co.kr