ピョ・チャンウォン「責任ある者をはたくだけはたいてから、国民募金をしよう」
「義援金に先立って政府相手の訴訟費用から集めよう」との提案も
セウォル号犠牲者のための義援金が殺到している中、義援金より「救助と責任糾明が先だ」という反対の声も出ている。厳然たる人災であるだけに、国民の募金ですかしなだめるのでなく、責任者に徹底的に賠償を請求しなければならないという主張だ。
ピョ・チャンウォン元警察大教授は28日ツイッターを通して、旅客船セウォル号沈没事故と関連した放送局などの寄付・募金の推進について「責任を負うべき者をはたくだけはたいてから、募金しよう。募金は、負うべき責任を軽減する恐れがある」と憂慮を明らかにした。ピョ元教授は特に、惨事の責任者を対象に賠償を要求し、「道義的な補償と、責任を問う“賠償”とは次元が違う。清海鎮(チョン・ヘジン)海運のユ・ビョンオン一家、韓国船級と海運組合の安全管理士、国家などの責任を必ず突き詰めて徹底的に“賠償”させなければならない。国民の税金で全てを償うわけには行かない」と主張した。国や機関が賠償をすることになれば、賠償原因である清海鎮海運などに“求償権”を行使することになるが、そうすれば、職務上の過失がある責任者らが償うことになるということだ。
国民の義援金を受取ったという理由で政府が補償しなかった前例も挙論されている。 2010年の天安(チョナン)艦沈没事件の時に、救助作業を手伝って沈没したクムヤン号の場合、船員2人が死亡し7人が行方不明になったが、政府はすでに“義死者”に準ずる礼遇を受けたとして、補償金を支給しなかった。社会福祉共同募金会から遺族に船員1人当り国民募金2億5000万ウォンを先に伝達したことが問題になったのだ。
過度に早い募金時期も問題として指摘されている。まだ救助作業が進行中である上に、官主導の募金運動が「ここらで事故については終わりにして、世論を転換しようとしているのではないか」という疑惑に包まれる可能性がある。
去る24日、遺族たちがチョン・ホンウォン国務総理による募金指示に対して、「私たちは募金を望んでいるのではない。子供たちの手足がまだまともな状態の時に引き上げてやることが先だ」と抗議したのも同じ脈絡だ。
韓国PD連合会も26日、「韓国放送(KBS)が今週末からセウォル号募金放送をする準備をしている」として「災害・事故募金は、当該災害の1次的な収拾が完了した後に初めて可能なことだ。(…)事態の収拾過程で明らかになった政府の無能と一部政治家の非常識的言動で与党と大統領府に対する批判が日増しに強まっている時期に、募金放送が政治的に悪用される素地さえある」と指摘している。
ネチズンたちの間から、「寄付金は私たちが自分で集めるから、政府は仕事をちゃんとやるように」(ID @todo****)、「国民が自発的に出した義援金さえも、政府の主導下で推進されているかのように手柄顔をする厚顔無恥な政府」(IDタビン**)といった皮肉が出てくるのも同じ理由だ。
かつて大災害が起きる度に、官主導で集められた“義援金”の運営が透明になされず、遺族らに直接伝達されていないという批判も改めて提起されている。ハイチ大地震当時、義援金をすぐに送らず貯金しておいた事例、天安艦寄付金の内、2/3だけが遺族たちに渡された事例、軍が会食費に使用した事例などが取り上げられている。 「大韓民国は国民の募金すら透明に管理する能力がない」(ID 梅雨**)という皮肉が出る所以である。
全般的に“募金反対運動”がオンライン上で好評を博しているのは、無能な政府に対する怒りと不信が累積された結果と見られる。義援金を出さないというのではなく、「今は、真実糾明が先だ」という主張と「義援金の代わりに海運会社や政府を相手取った訴訟団を構成する訴訟費用を集めよう」とか「遺族に直接渡さなければならない」という意見が支持を受けている。歴史学者チョン・ウヨン氏も「義援金を出したあとは、無意識のうちに“もう私がすべきことは全部した”という考えを持つようになります。 義援金は、犠牲者たちを“記憶”するためにではなく“忘れる”ために出すのです。あとで、忘れてもいい時に、その時出しましょう」と話した。
チョン・ユギョン記者 edge@hani.co.kr