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「オバマ、アメリカの経済利益に重点を置く筈」

登録:2014-04-23 11:48 修正:2014-09-05 14:34
孫崎 享 元日本外務省局長インタビュー
孫崎 享(70)元日本外務省国際情報局長

集団的自衛権・尖閣葛藤など
"米国、日本のために戦ってくれはしない"

孫崎 享 元日本外務省国際情報局長(70)は韓国でも良く知られた日本の外交.安保専門家だ。 彼の著書<日本の国境問題――尖閣・竹島・北方領土>(2011年)と<戦後史の正体 1945-2012>(2012年)は、領土と歴史葛藤で緊張が高まっている東アジアを‘アメリカ’というプリズムを通して分析したもので、韓国でも大きな反響を呼び起こした。 彼は23日から始まるバラク・オバマ アメリカ大統領のアジア歴訪に対して 「アメリカの国益を最大化するために経済問題に重点を置いて、日本が関心を持つ集団的自衛権行使などの安保問題は中国の反発を憂慮してさほど強調しないだろう」と展望した。 また「アメリカが(尖閣列島のような事態が発生した場合)日本のために戦ってくれはしないだろう」と言い切った。

-オバマ大統領が23日から2泊3日の日程で日本を訪問する。 アメリカが念頭に置く今回の歴訪の最大目標は何か?

"核心懸案は環太平洋経済パートナー協定(TPP)等の経済問題だ。 オバマ大統領は圧倒的に中国を重視する政策を行っている。 集団的自衛権など安保イシューは中国を刺激しかねず中心議題にはならないだろう。 ただ、米国国務部と国防部などでオバマ大統領の意志とは関係なくこの問題を一定程度強調する可能性はある。"

-現在、米-日間の核心的な外交懸案は対中政策の差異だ。 特に尖閣列島(中国名 釣魚島)問題が敏感だが。

"現実的な問題としてアメリカは尖閣紛争に介入する能力がない。 今、中国の戦力の大部分は台湾に向けられている。 そこに配置された中国の戦闘機は300機以上で、その内30~40%はF-15クラスだ。 中国が台湾と尖閣列島に対して動員できるF-15クラスの戦闘機は120機程度という計算が出てくる。 これに対抗する自衛隊の戦闘機は10余機で、アメリカもそれほど多くない。 それに加えて、中国の中・短距離弾道ミサイルが少なくとも80基、巡航ミサイルは300基以上だ。 従って戦闘が発生すれば、中国が駐日米軍の滑走路を簡単に破壊できる。 そのため現実的にアメリカが尖閣に出てくる態勢になっていない。現在、米-中は新型大国関係を議論している。 これは政治や文化、経済で互いに対立があればそれは仕方ないが、軍事紛争はしないように管理するシステムだ。 だから米-中は絶対に軍事的に衝突しない。"

-それでも米-日間には米-日安保条約があるが。

"尖閣列島が安保条約の範囲内にあるということと、アメリカが軍事的に実際に介入することとは違う。 米日安保条約5条は‘日本の施政権下にある領域に対して武力攻撃がある場合、自国の憲法上の手続きに従って共通の危険に対処する’と規定されている。 すなわち、米国憲法により議会の承認があって初めて対応するということだ。 アメリカ議会が承認しなければ何の行動も取らなくて良い。 これと較べて、北太平洋条約機構(NATO)憲章5条を見れば、攻撃を受ければすぐに行動を取るとなっている。"

-日本国内では米-日が対中国政策の差異を一致させなければならないという意見もある。 特に田中 均 日本総合研究所国際戦略研究所理事長がそのような主張をして印象的だった。

"それはアメリカに対して日本のために中国と戦う準備をしろということだ。 だが、アメリカの国家利益はすでに中国に移った。 不可能なことを可能だと言ったり、不可能なことを国家の目標にしてはならない。"

-韓国にも紹介されたあなたの著書を見れば、反米的な情緒が目につく。 外務部のエリート官僚がそのような考えを持っているということが印象的だった。

"1972年に‘ニクソンショック’というものがあった。 戦後日本外交の最も大きな特徴の一つは、保守と革新の両方が共に中国との外交関係を回復しようとしたことだ。 すべての日本人が、自国にに近い大国と関係を持たないことはおかしいと考えた。 しかし、アメリカが台湾を支持していたので日本は中国との外交関係を回復できなかった。 それだけでなく、中国が国連(UN)に加入する問題でも日本は前面に立たされて、これに反対しなければならなかった。そんなある日、ニクソン 米国大統領が何の通知もなしに中国を訪問した。当時の衝撃のせいで日本は、アメリカという国は全てのものを自己を中心に思考するという考えを固めることになった。 そのために1972年から1980年代まで日本ではアメリカを中心に外交を思考する人々が大きく減ることになった。 1982年、鈴木善幸 元総理が米-日同盟を初めて軍事同盟と表現してアメリカ一辺倒の外交政策が始まったが、それ以前の日本外交はアメリカ一辺倒ではなかった。 むしろアメリカ依存ではない自主外交をしなければならないという思いが、私が課長として勤めた時期の日本外務省の主流だった。 それで私のような人間も生まれることになった。 これについて同意する人はかなりいると考える。"

-日本の集団的自衛権問題はどうなのか。 韓国でも関心が高い。

"安倍政権は、中国の威嚇に対処するために米-日同盟を強化しなければならないと言う。 しかし現実的には集団的自衛権の目標は東アジアではなくイラクやアフガニスタンなど中東だ。 すなわち、アメリカの世界戦略の中で日本の自衛隊を利用できるようにする‘制度作り’だ。 現在、日本の施政権下にある領域に対する武力攻撃には米日安保条約で対処できる。 集団的自衛権はこれを日本の管轄地以外の地域にまで適用させて、先制攻撃を受けなくとも攻撃するということだ。 韓国に関連した部分は北朝鮮の有事事態だ。 2008年に出された集団的自衛権に関する1次報告書を見れば、北朝鮮がアメリカ本土に弾道ミサイルを撃てば日本がこれを迎撃するという事例が含まれている。 この論理を更に推し進めれば、北朝鮮がミサイル攻撃をしようとする兆候があれば日本が北朝鮮に先制攻撃するという話になる。"

-韓-日間には歴史問題など多様な問題がある。

"歴代駐韓日本大使の中で、外務省事務次官を歴任した須之部 量三(1918~2006)という人物がいた。 彼が独島(ドクト)問題について "解決しないことをもって解決とする" という言葉を残した。 独島に対する両国の意見は異なるが、この問題で両国関係を悪化させないという意味だ。 そのような精神が韓日協定が締結された1965年にはあった。 それを忘れて両国の指導者が自身の政治的な利害を追求することになったことが最も大きな問題だ。"

-オバマ大統領は今回の歴訪で韓-米-日3角軍事協力を強化するものと見られる。

"基本的に北朝鮮を狙った軍事協定には反対だ。 最も重要なことは周辺国が軍事力で北朝鮮の体制を押し倒さないという明確なメッセージを北朝鮮に伝達することだ。 軍事協力を推進すれば北朝鮮の反発がさらに強まるだけだ。"

-最後にミサイル防御(MD)体制をどのように見るか。 アメリカは韓国のMD参加を強く要求している。

"MDは軍事的に全く効果がないと見る。二つに分けてみよう。 一つは、軍事施設に対する攻撃がある。 アメリカやロシアのように敵の攻撃に備えて核基地を防御しなければならない場合には理論的にMDが可能かもしれない。 相手の弾道ミサイルがどこに落ちるのか、弾着点が決まっているためだ。 しかし一般国民を相手に攻撃がなされる時には意味がない。 たとえば日本本土を相手に弾道ミサイル攻撃がなされる場合、どの都市を攻撃するかは分からない。 この場合にMDは事実上無用の長物だ。 悪く言えば、アメリカの武器商人が日本に武器を買えという程度の意味だと考える。"

東京/文・写真 キル・ユンヒョン記者 charisma@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/international/japan/634101.html 韓国語原文入力:2014/04/22 21:37
訳J.S(3419字)

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