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[感情労働] お客様に足蹴にされても…卑屈に、もっと卑屈に

登録:2013-11-28 19:36 修正:2013-11-29 00:00
非正規職など‘悪い働き口’拡散
‘層層侍下(訳注:かしずく相手が多いこと)’監視を受ける労働者
自尊感 低下し自己卑下に陥る
"毎日移って消耗品のように働く"
イラスト ユ・アヨン

 イ・某氏は衣類売場の販売職員として仕事をした3年前のことが忘れられない。 ズボンを試着した男性のお客さんに近付いて、うずくまるように座って長さが合うようにズボンの裾を折っていると、その彼が 「どこを触っているんだ」として、イ氏を足で蹴った。 倒れたイ氏は顔を真っ赤にして周辺にいる同僚を眺めたが、誰も助けてくれなかった。 イ氏は「おかしなお客さん会ったとしてやり過ごそうと努めたが、あまりにも無関心な同僚、反対に自分を咎めるマネジャーの姿を見れば、私が間違ったような気分になって恥ずかしかった」と話した。 「私が非正規職だから皆が私を余計に無視したのではないか…」彼女が仕事をしたところは有名海外ブランドの売場だった。 販売職員は本社所属ではなく売場所属だったが、サービスと実績などは本社の監視を受けなければならなかった。 イ氏は 「実績を合わせるために売上が少ない日は、職員が自分のクレジットカードを使って金額を満たし、売上の多い日には現金を抜く行為を繰り返すほどに本社の顔色を伺った」と話した。 彼女は一日12時間働いて、1ヶ月に4日の休みで最低賃金にも至らない120万ウォンを受け取った。

 自ら直接貧困労働を体験した後にルポを書いた米国言論人バーバラ・エーレンライクは、彼女の本<貧困の経済>で "数多くの低賃金労働者に強要する侮辱的な行為(薬物検査、絶え間ない監視、管理者の厳しい叱責)が低賃金を維持する要因" とし "もし自身が別に使い道のない人だと信じるようになれば、自分が受け取っている賃金が実際に自身の価値だと考えることになりうる" と述べた。 キム・ジョンジン韓国労働社会研究所研究室長は 「販売職労働者は、直営・賃貸、正規・非正規・派遣など非常に複雑な雇用関係の中で多くの主体の顔色を見ながら仕事をすることになる" として "コールセンターの場合、非正規職・派遣労働者が自分からひそひそと話すなどの萎縮した行動を見せもする」と話した。

専門家 "韓国、感情労働 最も深刻
非民主・反人権的経営組織体系が原因"

 ‘感情労働’は現代資本主義社会のどこにでもある。 それでも韓国社会で‘感情労働’の弊害が最も深刻だという指摘が出ている。 これについて専門家たちは 「韓国の異常なアウトソーシング・非正規職の拡散」が労働者にますます一層強力な‘卑屈’を強要していると語る。 卑屈を強要する構造の中で、多くの労働者たちは自己尊重感を低下させ、自己卑下の奈落に落ち込みやすい。 非正規職労働者が相当数含まれるサービス労働者83人の<自分の心報告書>分析結果を見れば、‘自己卑下’(注意・警告水準 24.5%)指向が特に目立った。

 去る9月、統計庁が発表した経済活動人口調査を見れば、用役・派遣労働者は2002年42万6000人から10年間に89万6000人へ2倍以上に急増した。‘下請け業者の正規職’であるため非正規職には区分されない社内下請け労働者も、2010年現在300人以上の事業場だけで32万6000人が働いている。 元請と下請の‘甲乙関係’下で、顧客に接するサービス職労働者は‘層層侍下’監視の中で一層深刻な感情労働をせざるを得ない。

 去る15日、ソウル市人権委員会が発足1周年を迎え‘120茶山コールセンター感情労働および雇用実態’討論会を開いた。 パク・ウォンスン市長の就任後に発足した人権委員会が最初に関心を傾けた分野が‘感情労働’だということだ。 この日討論会場では茶山コールセンター事務室に24時間ついている‘作業量現況モニター’が公開された。 画面にはリアルタイム相談コール数,待機コール数,応対率などの数値がぎっしりと詰まっていた。 討論者として出てきたイ・ソンヒ相談員は 「去る4年間、事務室に小さな引出し一つ持てずに、毎日席を移動して消耗品のように働いてきた」として涙まじりに話した。

 ‘ソウル市代表番号’として知られている‘120’茶山コールセンターに電話をすれば、下請け業者に所属した相談員が電話を受ける。 3階にそれぞれ3ヶの民間下請け業者から派遣されてきた労働者たちは、一日平均2万8000件の電話を分担して受ける。 365日24時間3交代で回り、各民間業者から出ている6~7人のチーム長が相談員150~160人を管理する。 下請け企業等は2年ごとに再契約しなければならないため、ソウル市に顧客が民願をすることに極度に鋭敏に反応する。 イ・ソンヒ氏は「下請け業者は相談員に対して、無礼で非常識な請願人にも無条件に親切に対応するよう強要し、請願人が間違っていても相談員に対して謝れと言う」と話した。 キム・ジョンジン韓国労働社会研究所研究室長は「現在茶山コールセンターの相談員は女性労働、感情労働、間接雇用非正規労働、低賃金労働という4重苦を受けている」と診断した。

 同じ会社の中でも顧客サービスを専門担当する部署を下位職と見なすケースは多い。 国内のある化粧品会社の顧客相談室で仕事をする職員は、マインドプリズムにEメールを送って 「本当に笑顔を失わないようにするなら、会社が相談室を冷遇する雰囲気に対抗して、常に戦い続けなければならない」と打ち明けた。 英国の言論人ポリー トインビーは<去勢された希望>で "テレマーケターが電話をかけた時、人々はすぐにとんでもない話を耳の中に浴びせるテレマーケターの行動を分不相応な私生活侵害だとして怒る" と話した。 誰もがしたくない仕事を下請け職員や末端部署が抱え込む。 あるコールセンター相談員は 「実績を上げてこそ他の部署に行けるから熱心に営業する。 同僚は今後営業をしないために売ってはいけない商品まで売って深刻な感情労働を甘受する」と話した。

 イム・サンヒョク労働環境健康研究所長は「我が国において世界で最も感情労働が深刻な社会問題になったのは最少の人員で最大の効率を得るための企業の過度な業務量賦課と非民主的、反人権的経営組織体系、生産体系のため」と指摘した。

 <自己卑下>人は自身が大なり小なり価値ある存在だという確信で生きる。 しかし自分の尊重感を守れずに卑屈な態度で生きなければならない状態が持続すれば、自身に対する否定的な考えに捕われることになる。 自己卑下的状況になれば失敗に耐えられなくなり自身の短所にばかり集中して劣等感と憂鬱、無気力を振り切り難くなる。

イム・ジソン記者 sun21@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/culture/culture_general/613071.html 韓国語原文入力:2013/11/28 15:17
訳J.S(2887字)

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